144. 大陸軍 vs ビスラ軍
「味方の軍だ! どこから引いてきた軍だ?」
「おーい! 無事かあ? おーい!!」
コウガ城の守備兵達が城門を開き、退いてきた味方の軍を迎える。
ここ、コウガ城は海の近くにあり、深く巨大な堀と、堅牢な石垣で守られた大規模な城だ。
テイヤマ王国の行政や首都機能は、今でこそテイヤマ城で行われていたが、古くはコウガ城こそがアルストア大陸北部地方の中心であり、軍事の最大拠点であった。
そして現在はイルア王子の率いるテイヤマ軍1千に加え、急行したフリード殿下率いるアルストア大陸軍1万が駐屯していた。
「どうした、城門が騒がしいな。」
「殿下、気になるなら俺がちょっと見て来ましょうか?」
「ああ、ユウキ、そうだな、頼む。」
数分後、コウガ城内にある大陸軍本陣にユウキが走りこんできた。
「殿下! 大変です! フミオさんが敗れました!!」
「なんだと!! ヤマナが?!!
どういうことだ! 説明しろ!
ユウキ!!」
「俺も詳しくは、、
テイヤマ城より退いてきた部隊を率いていた、イシュナ王女とケビンから聞きました。
すぐにこちらに来るはずです!!」
「……何という事だ、、それで行方不明のヤマナを置いて退いて来たのか、、」
「申し訳ありません、殿下、
味方の兵を退かせるので手いっぱいで、」
「いや、ケビン、お前を責めているわけではない。
ヤマナはレパーラに任せるとしよう。
敵陣の中で複数の人員で動けば見つかりやすいであろうし、森の中であれば夜目も効き、鼻も良い獣人のレパーラに任せるのがよいであろう。」
「はい、、」
「問題はそのヤマナが敗れた相手の魔族だ、
イシュナ王女、『アシ』と呼ばれていたのだな、その魔族は。」
「はい、フリード殿下、
敵兵は『アシ様』とその魔族を呼んでおりました。
人の身長の、倍以上の長さの足を持ち、一歩踏み込むだけで地を割り、城壁を破壊する凄まじい力を持っておりました。
敵陣の中で繰り広げられたヤマナ様との戦闘もすさまじく、敵の魔人や大型魔獣が巻き込まれて塵の様に吹き飛んでいました。
ヤマナ様は、、
アシにより森へ蹴りこまれた後、森の中で大爆発が起き、
その後、、『アシ』だけが森から出てきました、、、」
「そうか、、」
フリードは右手で額を抑える、、
「イシュナ王女、敵はどれほどでこのコウガ城に来るか予想できるか?」
「はい殿下、3日以上はかかるかと、
ビスラ軍もヤマナ様と『アシ』の戦いに巻き込まれ、かなりの損害を出しておりますので、軍の再編成にはかなりの時間を要すと考えられます。」
「そうか、魔人と魔獣で構成されたビスラ軍は大陸軍で抑えよう。
問題は、、
『名前持ち』の魔族、『アシ』か。
テレシア騎士団の戦士達を待ちたいところだがあと数日はかかるか、、
それまでの間はユウキ、いけるか?」
「ああ、殿下! やってみせますよ!」
「ユウキ殿、微力ながら私にも手伝わせてください。
セントレオン様からいただいたこの鎧でサポートします。」
「ああ! ケビンさん、
俺たちでやろう!」
「北の石垣の修理はどうなっている?!」
「敵は東から攻めてくる! 東へ物見を走らせろ!」
テイヤマ城が落ちたと聞き、コウガ城内はにわかに騒がしくなった。
そしてイシュナ王女の予想より遅れて1週間後、コウガ城の前には万を超えるであろう魔獣を連れたビスラ軍が現れた。
コウガ城は幅100mはある堀に囲まれており、東側に大きな石橋が1つだけある。
敵の攻撃をここに集め、正面の城門とその左右にある出島から橋の上を攻撃して迎撃する形になっている、
フリード皇太子、ユウキ、イシュナ王女、イルア王子、そしてケビンは城門の後方にある塔の上から、現れたビスラ軍を見つめていた。
「これは、、
フリード殿下、テイヤマの時よりも明らかに敵の数が増えています!」
森の中から黒いインクが滲み出るように出てきた魔獣の軍勢を見てイシュナが叫ぶ。
「そうか、この数、、
当初の報告をはるかに超えているな。
1週間もかかっていたのは、ビスラ国からの後詰を待っていたのか。
だがこちらの兵力も負けてはおらんはずだ。」
「フリード殿下、
作戦、というわけではありませんが、、
ユウキ殿は待機していただけませんか?」
「なぜだ! あれだけの数の強力な魔獣、俺も前線で戦うぞ!」
イシュナの発言にユウキが憤慨する。
「敵の狙いはおそらく、魔族に対抗しうる人物を引っ張り出すことです。
ユウキ殿が戦い、派手に魔獣を蹴散らせば、すぐに『アシ』が出てきます。
それよりも、民にとっての脅威である魔獣とそれを率いるビスラ軍を少しでも討つ事が大事かと思われます。
『アシ』自身は強力な戦士にしか興味が無いようですので。」
「イシュナさん、だったら先に敵将を討った方が良いんじゃないか?」
「ユウキ殿、、ビスラ軍は狂信的に魔族崇拝をしております。敵将を討ったとしても、敵兵達は散り散りになり、この大陸の人々を襲いかねません。
厳しい戦いである事は承知の上、
ここでビスラ軍を迎え撃って殲滅した上で『アシ』を討つ!
大陸の人々の為に必要なことなのです。」
「わかったよ、イシュナさん、
俺は君たちを信じて待機することにするよ。」
「ありがとうございます、ユウキ殿、
それに、、
耐えていれば、、」
「耐えていれば?」
「必ず、必ずお姉様が援軍に来てくれます!」
「姉君がいらっしゃるのですか?」
「いいえ! テレシアお姉様です!
自ら騎士団を率いて駆けつけると約束してくださいました!」
「そ、そうですか、」
イシュナの熱意に、若干引き気味になるユウキ、
「イシュナよ、わかった、
では劣勢になるか、『アシ』が出てくるまでユウキは待機だ。
いいな、ユウキ。」
「了解しました、殿下。」
やがて森から出てきてコウガ城の堀の周りをたむろっていた、多種大量の魔獣たちは、
ブゥオオオオーーーー!!
大音量の角笛が鳴り響くと、
ギャオッ! ギャオッ!
ゴォアアア!
モ"ア"ア"!
一斉に吠え始めて、コウガ城正面の石橋へと殺到した!!
狼のような魔獣、熊のような魔獣、巨大なネズミのような魔獣、猿のような魔獣、多種多用な魔獣がいたが、、
いずれにも共通することは、真っ黒な体に赤く脈打つ筋を浮かべた魔獣たちは、迎え撃つ大陸軍の兵士たちへ殺意を向けて、飛び出んばかりに真っ赤な目を開き、狂ったように突撃を開始していた!!
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