133. 罠
「フミオ、ちょっと待て」
いままで姿を現さなかったセントレオンが現れ、声をかけてきた。
「今、少し急いでいるんだが、、
テイヤマが北の島国からの侵攻を受けた。
領土ではなく人を襲うことを目的にしている。」
「ああ、ビスラだな。」
「…わかっていたのか?」
セントレオンを目で問い詰める。
「いや、先ほど、ビスラの神殿の石板を通して、強い魔力を感じただけだ。
魔族が絡んでいるなら、たぶん罠だぞ。
もちろんビスラには飛ぶなよ。」
セントレオンが一枚の石板を指さす。
嫌な感じがする、あれがビスラの石板だろう。
「で、どうしろというんだ。」
「……罠ならば行くのは極めて危険だ。敵の目的が判明するまで大神官が出るべきじゃない。」
「その間に、テイヤマの人々が殺されるぞ、、」
「大陸軍として考えると、敵を引き込み、時間がたって勢いがなくなったところを有利な体勢で討つべきだな。」
俺たちを諫めるように言うセントレオン、
「……それは一般的な軍事論だろ?
じゃあ聞くが、、
あんたは人々が襲われていた時、どうした?」
「イの一番に突っ込んでいったな。」
だろうな、
脳筋大神官が待てるわけないだろ。
「ぷっ、、」
「くっくっく、」
「「あっはっはっは!!」」
顔を見合わせて爆笑する俺とセントレオン、
「まあ俺も良く軍師に怒られたよ。アユミちゃんには言ったのか?」
「いや、アユミやシェリー、レオル、ルルたちは学校だ。今回の事は伝えてない。
できれば子供たちは戦場に出したくなくってな。」
「知らねーぞ、後で絶対怒られるぞ。 ヒナコはどうした?」
「テレシア王妃と騎士団の船の護衛をするよう命令書を出しておいた。」
「あーあ、可哀そうな奴ら、、で、今回のお供はその3人か?」
「ケビンとレパーラは俺のお供だが、こちらはテイヤマのイシュナ王女、護衛対象だ。」
そう言ってイシュナ王女を紹介する。
「おお! イシュナさん! 美しい、私とこの神殿で過ごしませんか?!」
「あ、あの、貴方は?」
「私のことはレイとお呼びください!」
「レイ、さんですね、よ、よろしくお願いします。」
「ちっちっち、レイ、と呼び捨てでお呼びください。」
おいおい、、イシュナを口説き始めたよ、、
「ゼノラウトのいいお酒があるんですよ、こちらにバーが、、」
「あ、あの、レイ、私はテイヤマに行かなければ、、」
「大丈夫ですよ、私の弟子のフミオがちょちょいと片付けますから。」
「オイッ!」
まったくこの御仁は、、、
「あ、あの、ヤマナ様、この方は??」
「セントレオンだよ」
「はひ?」
「だから、コイツの名前はセント、レイ、オンダ、で、略してセントレオン。」
あ、イシュナ王女が固まった。
「し、失礼しました!!!! セントレオン様、ははぁーー!!」
あ、飛び上がって、ひざまずいて、頭下げた、
いわゆるジャンピング・ドゲザってやつか、、
「い、いや、一緒に飲んでくれれば、、」
「そ、そんな、恐れ多いですぅ!」
俺の後ろに隠れるイシュナ王女、、
「まあ、、時間もない事だし、テイヤマに飛ぶがいいか?」
「まてまて、フミオ、ちょっとそいつら連れてついてこい。」
「「「「??」」」」
そうして連れていかれた先は、シェリーがあの『ビリディエット』を渡された倉庫だった。
「ええと、おい、ケビン。」
「はっ! セントレオン様!!」
「まあそうかしこまるな、おまえ、この鎧を着ていけ。」
そう言ってセントレオンが出した鎧は、前立てのないシンプルな黒を基調とした和風の鎧だった。
「え? わ、私がこの鎧を、、」
「ああ、日本刀と同じく、俺やフミオの故郷の日本という国の鎧だ。
この鎧の銘は『斉城』
その名の通り、一城に匹敵する防御力を誇る。
フミオのそばに控えるなら、防御力高くないと辛かろう、持っていけ。」
「先生の国の!
ははっ!
ありがとうございます!!」
「それから、レパーラ。」
「はいニャ!」
「この長靴と二本の剣をやる。」
「にゃ、にゃがぐつ?!」
「ああ、レパーラは機動力を生かした戦闘が得意だろ?
この長靴はネコ科の獣人の機動力をアップさせる効果がある。長時間高速で動いて、なお疲れにくい、そんな効果だ。
そしてこの剣は二本で一対、銘は『阿刀』と『吽刀』だ。
どちらも強力な退魔の力を持っている。
聖騎士のレパーラには相性がいいだろう。
過激で力が解放されるような方が『阿刀』で静かでギュッと力を締める様な方が『吽刀』だ。
あとは使って理解しろ。」
「ありがとうニャ!!」
「そして、イシュナさん。」
「は、はい!」
「ちょっと剣を振ってみてもらえるかな?」
「はい!」
イシュナが腰の細剣を抜き、突きを打つ構えで構える。
ヒュッヒュヒュヒュ!
ほお、見事な突きだ。
「おお、素晴らしい。この腕ならこれかな?」
そう言って一振りの細剣を取り出す。
濃紺の刀身を持った剣だ。
「あの、、振ってみても?」
「どうぞ、どうぞ」
イシュナが細剣を振ると、、
伸ばした剣先から濃紺の刀身から星の様な光が、澄んだ音を立ててこぼれる!
「え? この剣は??」
「銘は『星河』刺さった先に聖属性の光を放って、魔族や魔獣に大ダメージを与える剣だね。強力だけど、魔力の消費に気をつけてね。」
「あ、ありがとうございます! セントレオン様!!」
サービス良すぎないか? セントレオン、、
「フミオ、お前はこれを持っていけ。」
そう言って、セントレオンが革ひもを投げる。
「バンテージか、、」
「ああ、俺の拳の汗と闘気をたっぷり吸った奴だ、その辺の籠手なんぞよりはるかに防御力が高いし、聖属性の気を増幅させて放つことが出来る。」
うっ、確かにやたらと汚れて、、塩まで吹いている。
「ありがとう、ところで洗濯したらダメか?」
「ダメだ、闘気も落ちるぞ。」
「おう、テイヤマ行ったら酒持って帰ってこいよ。あそこのコメの酒、旨いんだ。」
「なに? コメだと? コメがあるのか?」
「? おまえまさかこっちに来てまだコメ食ってないのか?」
「ああ!」
「そうか、テイヤマとシンガットはコメどころだ。たっぷり食ってこい。」
「コメかぁ、久しぶりだなぁ、」
う、口の中がつばで一杯になりそうだ。
「イシュナ王女、よろしいですか、手を離さないでくださいね。」
俺たちはテイヤマ行きの転移の石板に乗っていた。
「は、はい! 離しません!!」
しかしこの手をつながないと一緒に飛べない転移システム、何とかならんのか、
そしてテイヤマの神殿へと飛び、テイヤマ城の城壁の上に駆け上がって見たものは、、
美しく黄金色に実った稲でおおわれた広大な平野と、遠くに見えるいくつかの町や村が煙を上げる姿だった。




