130. 大陸会議初日
その日、帝都アルバードは活気に包まれていた。
各国の代表を招いて行われる『第一回 アルストア大陸会議』が開催される、その初日だからだ。
この半年間、フリード殿下と俺は、この会議のために準備してきた。
会議はこの大陸で起きている様々な問題に関する議題を、1週間かけて話し合われる。各国からは全権を持った代表が一名、そして議題ごとに専門家が付いても良いことになっていた。
「ヤマナ議長、お久しぶりです! テイヤマのイシュナです!」
護衛のレパーラとケビンを連れて会議場の廊下を歩いていると、ベ○ばらに出てくるような、男装の美しい女性に声をかけられた。テイヤマのイシュナ王女だ。かつてショートカットで男性と間違えてしまったが、今は髪を伸ばしているようで、肩まで伸ばしたセミロングになっていた。
「おお、お久しぶりです、イシュナ王女。テイヤマは貴女が大使を務められるのですか?」
「はい! よろしくお願いします!」
「こちらこそ、よろしくお願いしますよ。」
そう言ってお辞儀をし、歩き去ろうとする。
……う、イシュナ王女、その場を去らずに俺の背中を見ているな、、見つめられた背中が熱く感じる、
振り返るのが怖い。
「綺麗な人だったニャ、間違いなくご主人様に惚れてるニャ。」
レパーラが、ニマっと笑って呟く。
「イシュナ王女は帝国武闘大会の時から、先生のファンらしいですよ。」
ケビンまでいらん事を、、
「変な噂とかが立たなきゃ良いんだが、、」
「むりニャ、もうたっているニャ。」
「は?」
「『週間帝都』に載ってたニャ、
『議長に XXを質問したいレディ達 美女10選、本命はだれだ?』
もちろんイシュナ王女も熱い思いを込めたインタビュー付きで載ってたニャ。」
「なんだそりゃ! この世界に週刊誌があるのか?!」
「『セントレオン出版』から出ているニャ。」
セ、セントレオン、、いらん文化を持ち込みやがって、、
「まあ、、立場が立場だからな、これ以上変な噂が立たないよう気をつけよう。」
うーん帝都ではもう平穏な日々を送ることは無理なようだ、
会議の準備期間中に、帝国武闘大会で泊まった『らんぷ亭』に泊まろうとしたら、ケビンに
「止めて下さい! 押し寄せる民衆で宿が潰されます!」
と本気で止められた、、
[ ごめんなさい、泊まりに行く約束してたのに無理です。おかみさんのシチュー楽しみだったのですが。]
と、宿のおかみさんに手紙を送ったら、
[ いいさね、おかげで十分繁盛しとるでな。ありがとう。]
と、シチューの鍋と一緒に返信が来た。
久々のらんぷ亭のシチューはうまかった。
そして会議が開催される。
会議場の本会議室で、100名程の各国の代表達が扇型の段になった席に座っている中、俺は正面の議長席で立ち上がり開会宣言を行う。
「各国の代表の皆様、お集まりいただき誠にありがとうございます。ここに『第一回 アルストア大陸会議』の開催を宣言いたします。
私が議長を務めさせて頂きます、フミオ ゼン ヤマナです。
それではこの会議の提唱者である、アルカナ帝国皇太子、フリード殿下より、ご挨拶と、この会議についてお言葉を頂きます。」
扇型の代表席の一番前に座っていたフリード殿下が立ち、正面の演台に上がる。
「アルカナ帝国の代表であるフリードだ。この度は本会議の参加に応じて頂き、誠に感謝する。
この会議の議題は多々あるが、その根本にある目的はただ1つ、この大陸の人々が幸せに暮らす為にある。
戦争はもちろん、圧政、飢饉、災害、魔族、そういった脅威に対して各国が解決のために力を合わせて行こうではないか。そして人々のより良い暮らしの為に模索して行こうではないか。
会議期間は1週間、長いように思えるが、議題は多く、非常に多岐にわたっているため、始まってみると時間は足りないように思えるだろう。
1週間みっちり詰め込まれているので、体調には十分気をつけてくれたまえ。
それではこれより、第1の議題である、アルストア大陸で現在起きている紛争3件についての議論を始めたい。担当事務官、説明を。」
「はっ、紛争関連の担当事務官であります、カルバオーレです。現在、アルストア大陸では、、、」
こうして会議の初日が始まった。
…8時間後、
「これで本日予定していた4つの案件の会議を終了いたします。皆さんお疲れ様でした。明日は9時からですので遅れないようお願いします。それでは解散して下さい。」
ふう、やっと今日の分が終わった。外はとっぷり日が暮れている。
「づ、が、れ、た~」
机に突っ伏すゼノラウト代表、テレシア王妃。
「テレシアさま、ゼノラウトの代表なのでもう少しシャンとして下さいな。」
「ちょっと~、お店もう閉まっちゃっている時間じゃない~!
帝都でお買い物できると思って代表になったのにー!」
ゼノラウトに来た頃は大人しかったテレシア王妃も、最近では随分と本音で話をするようになっていた。
「明日も朝から晩まで会議なので、宿舎に帰ってしっかり休んで下さいね。サボったら陛下に言いつけますよ。」
「ヤマナの鬼~!」
「はっはっは、テレシア王妃は名実共に我々東部諸国の盟主なのですぞ、ビシッとしていただかないと。」
リカードが声をかける。ヒューレは王であるリカード自ら代表として来ている。
「そうですよ、お父上のデルハルト陛下も期待されておりましたよ。」
と、デルハルト代表のセルンド。デルハルト陛下は最近腰を悪くしていると聞いた。
「世間は鬼ばかりだ~!」
テレシア王妃が駄々をこねだした、、
しょうがない、そろそろ飴を出すか、、
「実はですね、、こんなこともあろうかとテレシアさまお気に入りのブランドのお店をこの後、特別に貸切で開けていただくようお願いしてあります。」
「ホントに?!」
「ええ、ケビンを護衛に付けますので、行って来てください。お金はこの範囲でお願いしますよ。」
と、金貨の詰まった袋を渡す。ゼノラウト8世から預かっていたテレシア様用のお小遣いだ。まあ、お店を貸切にしたのは警備の為と言うのが正直なところだ。
「さっすが私の騎士ヤマナ! できる奴!」
「くれぐれも時間をかけすぎて、明日の朝起きられないなんてのは止めて下さいね。」
「わかってる、わかってる!」
喜び勇んで会議場を後にするテレシア様。
次の日の朝、会議10分前、
誰も座っていないゼノラウト代表者席を見て、
「…おい、ケビン。」
「はっ!」
「テレシア様は昨日、何時まで店にいた?」
「…す、すみません、内緒と言われたのですが、昨日ではなく今日の2時までいらっしゃいました、、」
「レパーラ、、」
「はいニャ!」
「テレシア王妃の部屋に入って叩き起こしてこい。髪セットする時間なぞないから、丸めて帽子にぶち込んで会議場に連れてこい!」
「了解ニャ!!」
30分後、、会議中に帽子を目深に被ってコソコソと入ってきて席に座るゼノラウト代表のテレシア王妃、、
まったく、頼むよホント、




