129. アルストア大陸会議
『アルストア大陸会議』
アルカナ帝国皇太子フリードが提唱した、各国間の戦争を防止し、人々の生活の安寧を目的として開催される国際会議だ。
アルストア大陸にある、大小様々な国に呼びかけ、参加を促している。
この世界は人に優しくない、
この世界の国家は、王政や独裁政治がほとんどな為、一部の人間の野望により簡単に戦争が勃発し、天災や飢饉が起きても人々を救済する術は弱く、さらに魔族という明らかに人間を標的とした天敵とも言える脅威が存在する。
この状況を憂いている人はいない訳ではない。しかしながら、国家と国家という大きな枠組みの中では、心あるもの達の声が届くことはなかった。
しかし、ここに人々の安寧を願い、それを国家間レベルで実行に移せる人物が現れる。
後に第19代アルカナ帝国皇帝となるフリードである。
彼は18歳で皇太子となってから、近隣諸国で数々の人道的支援を行なって来た。
その才覚で帝国の経済を立て直し、そこから予算を確保し、他国で飢饉や天災が起これば物資、食料、人的な面で援助を行なって来た。
一方で国民を大いに苦しめる国家には、文字通り大ナタを振るい、時には自らの軍を進行させてその国の支配者を打ち倒す事も行なっている。
そして、大陸の人々を思う彼が最も頭を悩ませていたのが、『深い黒の大陸』からの魔族の侵攻である。
アルストア大陸の西にある、『エルフの島』はすでに魔族の手に落ち、大陸西部では、時折海を越えて上陸し人を襲う魔族と人間達との戦闘が発生していた。
体も魔力も強い魔族は、個々の戦闘力の高さに加え、魔獣を使役する者もおり、これに対して人はあまりにも脆弱で、大陸西部の各国は魔族が現れると、それが少数であっても大軍を派遣して対応せざるを得なかった。
フリードは魔族と戦える人材を求め、探していたが、今までは勇者ユウキしか見出せていなかった。
その勇者ユウキも、自意識が強く己の強さに執着し、他人と共に脅威に当たることが出来るとは思えなかった。
この大陸から魔族を駆逐し、人々を解放した大神官セントレオンや勇者アルバードをはじめとした幾人もの英雄達がいた『英雄の時代』に比べれば、魔族の群勢に対抗できるとは思えなかった。
だが、ここでフリードはようやく求めていた人物と巡り合うことになる。
その者は、大陸東部の小国で召喚され、武術の技量もさることながら、何よりも義に厚く、人々を守る為に己の体を張る男であった。
そしてその男の周りには、導かれるように戦士達が集まり、気がつけばフリードや勇者ユウキもその輪の中に入っていた。
「よく来た! 我が友ヤマナよ!」
私は帝国の神殿で、転移の石板の上に現れたヤマナに声をかけた。
「こんにちは、フリード殿下、お待たせしていたようですみません。」
「いや、こちらの都合で待たせてもらったのだ、気にしないでくれ。
さっそくだが、大陸会議の準備について打ち合わせよう。先ずはこちらへ来てくれ、神殿の横に会議場を作った。大会議室が2つに、数十の中会議室と小会議室がある。
この大陸で起きている、紛争、飢饉や災害、魔族の被害などの状況とその対応など、各施策のための執務室もある。
是非ともヤマナに見て欲しいんだ。」
そうして大会議室へとヤマナを案内する。ここは100名あまりが座れる、扇型の部屋であった。
「おお、ここで大陸の人々の為の会議が行われるのですね。さすがフリード殿下。」
「ああ、そしてヤマナにはこのアルストア大陸会議場の初代議長になって欲しいんだ。」
「え? いや、議長はフリード殿下こそ相応しいのでは?」
「うむ、恥ずかしながらそれも考えたのだが、やはり最初は大神官であるヤマナに議長をやって欲しいのだよ。
任期は短くして私が継がせてもらってもいい、だけどこの会議を何十年、何百年も続くようにして、この大陸の平和を維持する為に、創始者にはこの大陸を解放したセントレオンと同じ『大神官』であるヤマナの名を借りたいのだよ。
頼む、我が友ヤマナよ。」
「……分かりました、アルストア大陸会議を発足する為の神輿になりましょう。軌道に乗れば直ぐに引き継ぎますからね。
頼みますよ、我が友フリード。」
「ああ、その時は任せてくれ!」
皇太子として生まれ、対等に付き合える友などおらず、常に孤独を感じていた私にとって、ヤマナという友を得ることが出来たのは何と有難いことか。
「先ずは第一回会議のスケジュールと参加国について報告したい、会議運営の為の執務室はこっちだ。」
ヤマナを執務室へ案内し、
「今の所、代表を送ると参加を表明してくれた国は22ヶ国、これからもっと増える予定だ。
これが国名と代表者のリストで、、、」
やっと始める事が出来た私の夢に、年甲斐も無くワクワクしてしまう。我が友はにこやかに笑いながらそれに付き合ってくれていた。




