124. 値踏み
「私は『堕ちた翼』、魔族だ、貴方の名前をお聞かせいただきたい、、」
「いえ、名乗るほどの者ではございません。ただの旅をしている者ですよ。」
平静を装ってとぼけるが、内心冷や汗をかいていた。
こいつ、、、明らかに『枯れた指』よりも上位だ、
どストレートな自己紹介も相当な自信があっての事だろう。
言葉もやたら流暢に話してやがる。
(旅の一家で、わたしが奥さん役☆アユミちゃん娘ね。)
(いえ! わたしが奥さんでヒナコさんがおばあちゃん役です!)
(なぁ〜!)
後ろの図々しいコソコソ話は無視しよう、、
「先ずはご安心を、私は戦いに来たわけでは有りません。先日、我が同胞、と言っても小物が打ち取られましてな、、
打ち取った者について調べに来ただけなのですよ。
私の眷属は情報を集めるのが得意でしてね、
追って来た先に貴方がいたのですよ、、、」
そう言って左手を横に広げると、一際大きなコウモリが、逆さまにぶら下がる。コウモリと言っても、人の子供より大きく、その目は真っ赤に血走り、体の表面には赤黒い筋が浮かび上がり、明らかに魔獣と呼ばれる部類のものになっている。
「はぁ、それで魔族の方がこの私にどの様なご用件で?」
「ふっ、くっくっ、ずいぶんとぼけた方だ、、、
その気配、隠せてると思っているのか!!
試させてもらうぞ!
『大神官』!!」
げ、ばれてーら。
『堕ちた翼』から一気に噴き出す威圧感!!
てか、『戦いに来たのではない』じゃねーのかよ!
「我が眷属よ!」
そう言って右手を振ると、それに合わせて数百匹のコウモリが弧を描いて大きな牙のような形となって俺に襲いかかる!
[フミオ様!]
アユミが以心伝心で声をかけてきた、
[お前たちは襲われん限りは手出しをするな! さがってろ!]
そう答え二人を下がらせる。
バザザザザザ!
左上から襲い来るコウモリの群れ!
ヒヒュヒュッ!!
空を十字に切り斬撃を飛ばす!
斬撃はコウモリを切り裂いて飛んでいき、血と肉が山肌に落ちて行く!
襲ってきたうちの3分の1は落ちたか?
残りのコウモリたちが離脱し、『堕ちた翼』の側面から後ろへまわっていく。
「ほう、、では、」
バババッ!
控えていたコウモリたちに『堕ちた翼』が両手を振って合図を送ると、今度はさらに大きな3つの集団が上、右、左から襲いかかって来る!
「フィオナ!」
ーーはい! あるじ様!!
刀精霊のフィオナと気を練り上げる!
バヂッ! バヂヂヂヂヂッ!!
「「いいっけぇーー!!」」
ありったけの雷を纏ったフィオナで横一文字を放つ!
ズガガガガガガガァァァーーン!!
空中を埋め尽くす無数の雷と吹き荒れる暴風! 晴天のアルパウト山脈に、突如雷鳴が轟き空気が震える!
数千匹のコウモリが、焼かれ、吹き飛ばされ、散って行った。
「ほお、、流石です、、、もっと語り会いたいところですが、今日のところはここまでで、、、」
「ふんっ!!」
風の横一文字を『堕ちた翼』に向けて放つと、
バサバサバサ、、、
奴は黒い小さなコウモリになって散り散りになり、消えていった。
「、、、この程度では我々と戦うにはまだまだ、、
もっともっと強くなってくださいね、、
では御機嫌よう、、」
奴の気配が急速に遠ざかり、そして消えた。
「アユミ、、」
「はい、、もう、周りには居ないようです。」
そうか、アユミの索敵にかかる範囲にも居ないか。
「クックッ、なかなか楽しそうな方じゃ無いですか! まだまだですが、期待できそうです。」
真っ暗な森の中を笑いながら楽しそうに飛ぶ『堕ちた翼』
「強くなってくださいよ、、『牙』を殺せるぐらいには!
さて、彼を育てるにはまず誰をぶつけましょうか?
『脚』あたりが適当ですかねぇ、
どの様に報告しましょうかねぇ、
クックッ、、」
『深い黒の大陸』へ帰還すべく、嬉々として飛び続ける『堕ちた翼』だった。




