123. 雪渓
「ぐぁっ!!」
ゴロゴロゴロ、ドガッッ
「 …… 」
朝一番で今日もまた吹っ飛ばされた、、
「だいぶ持つようになってきたな、最初のころは1分と持たず吹っ飛んでいたのに、10分ほどは持つようになって来たな。 よし、今日は集中力の持続時間が1時間以上続くまで続けるぞ!」
「いっ、1時間?!」
「それぐらいでないと、上位の魔族とは戦えんぞ。全盛期の俺でも半日以上戦ったことがあるからな。一瞬でも気を抜くと灰にされるところだったよ。」
上には上がいるらしい、、それも敵方に、、
「もう一本、お願いします!!」
「おう! かかってこい! フミオ!!」
ドガガ! ガッ! ガッ! ヒュン、 ガガガ!
走る! 打つ! ステップ! かわす! 打つ! 捌く! 打つ!
激しい動きの中でも、一つ一つの動作に呼吸を乗せる、が、相手には呼吸は見せないようにする。
特殊な呼吸法で動きながら酸素を取り込む。
よし! 中心とった! 踏み込んで、、
「はっ!!」
腹で練り上げた気を打ち込む!
「おお!」
セントレオンが驚く。
ぶわっ、とセントレオンの体がぶれた! よし!
ドゴン!
「ぐわっ!」
……またぶっ飛ばされた、、
「ちょっとちょっと、、打ち込まれた後、ノーダメージで打ち込んでくるってずるく無いっスか?」
「そんなことないぞ、6回殺さんと殺しきれんかった奴もいるからな、殺ったと思って油断するんじゃない!」
「ぐ、、残身ですね、、精進します。」
くそ、、油断した、、
「よし! 続けるぞ。」
「はい!」
ドガガガガ……
「よし、朝の稽古はこれまでにするか。」
「はい、ありがとうございました!!」
汗だくでセントレオンに礼をする。
「フミオ様お疲れ様です!」
「ダーリン☆ お疲れー!」
アユミとヒナコが走り寄ってきて、タオルで俺の汗を拭いてくれる。
「あのーー、おれは?」
「セントレオン様は汗かかないのでは?」
「ひ、ひどいわ、、、」
落ち込むセントレオン、お前たち、もっと英雄を大事にしようよ、、
「あ、セントレオン、ウィスキー持ってきたぞ。」
そう言ってウィスキーの樽を見せると、
「おおおお! ウィスキー! フミオ、でかした!!」
感激するセントレオン、
キュポッ! と樽のコルク栓を抜き、匂いを嗅ぐ。
「うう~ん、、いい香り、、うまそうだ。
そうだ! 氷とってきてくれ! フミオ!」
「氷? 水魔法で作ればいいですか?」
「あほ! そんなん旨くねぇだろ! アルパウト山脈の氷河の氷で飲むのが一番旨いんだよ!!」
「は?」
「だーかーら、神殿の門から出て、氷とってきてくれって、俺はこの神殿から出れないからな。これも修行だ。」
「……ホントに?」
「ああ、本当だ! 氷河まで行くのがお前の運命だ! さあ行ってこい!」
「わかった、ちょっと行ってくる! アユミとヒナコはちょっと待ってろ。」
ズリズリズリ、、
俺の腰と腕にしがみつくアユミとヒナコ。
「ちょっとひとっ走り行ってくるからここで待ってな。」
「「や、です!(だ☆)」」
「はあ、、じゃあ一緒に行くか?」
「「うん!!」」
「あー、気をつけてな、今感じたんだが、、色々と危ないからな、たぶん、、」
「「「 ?? 」」」
大神殿の門から外に出て、アルパウト山脈を見上げる。 この辺も随分と標高が高そうだが、白い氷河ははるか上の方だ。こりゃ氷を取ってくるのは一日がかりだな。
「よし! あの氷河まで行くぞ!!」
「「お~(☆)!!」」
そうして俺とアユミ、ヒナコは山を登り始めた。
「我が眷属よ、、、」
ヤマナ達が登山をする数日前の夜、大陸軍と魔族たちが戦闘を行った平原で、黒いマントを羽織った痩せた長身の男が立っていた。男が呼びかけると、蝙蝠の群れが彼を取り囲むように集まってきた。その数は数百、数千であろうか。
「我らが同胞と、人族の戦いの様子を聞かせろ、、、」
蝙蝠たちは、口々にキィキィと鳴く。
「そうか、人族の戦士たちが同胞を破ったのだな。その中で、『指』を倒したものについて教えてくれ、、、」
またキィキィと鳴く蝙蝠たち。
「うむ、、そいつは、、どこへ向かった?」
キィキィ鳴きながら東へと羽ばたく蝙蝠たち、
それに続き、男は自分の体を覆っていた黒い大きな翼を広げて東へと飛び立った。
「ふぅ、酸素が薄いねー☆」
「ああ、そうだな。」
ヒナコが息をつくなんて、相当酸素が薄い証拠だな。
ちなみにアユミは早々にギブアップして俺がおぶっている。
「おお、雪渓が見えてきたぞ!」
「うん! もう少しだね☆!」
「ふぁいと~! フミオさま~」
いや、アユミ、俺の背中で『ふぁいと』って、、、
「ふう、やっとついたーー☆!!」
「うわーー真っ白!! 冷たーい!」
雪渓の上で雪に触れて嬉しそうなアユミ、雪をニギニギして、、え?
「えい!」
雪玉投げてきた!
「うわ!」
まさかアユミが俺に雪玉投げるとは!
びっくりして固まっていたら見事顔面に命中した!
「 …… 」
顔を真っ白にしながら、立ち尽くす俺、、
「えい!」
「えい☆ ダーリン☆えい!」
雪玉をどんどん投げてくるアユミとヒナコ、
「…… お、ま、え、らーーー!」
「「キャー、キャー!」」
雪渓の上を走って逃げる二人、
に~が~さ~ん~
すぐに追いついて、二人を捕まえて抱えたまま雪渓の斜面をゴロゴロ転がる。
「「キャー、キャー!」」
「はっはっは! 逃がさんぞー!」
「「キャー! キャハハ!」」
見ると、アユミが大粒の涙を流して泣き笑いながら転げまわっている。
「アユミ?」
「ご、ごめんなさい、、私、また夢が叶っちゃいました。雪の上で遊ぶことも夢だったんです。」
こっちの世界に来る前は、病気で寝たきりだったアユミには叶わない夢だったんだな、、
「そうか、良かったな。」
そう言って頭を撫でてやる。
「はい! フミオさまに会ってから、私は本当に幸せです!」
「アユミちゃん、いっぱい遊ぼう☆」
「はい! ヒナコさん!」
二人は雪だるまを作ったり、雪の上に絵を描いたり、好きなだけ雪遊びをしていた。
「フミオ様!!」
遊んでいたアユミが、突然叫んだ!
「魔族です! それも、、上位の! 西から来ます!」
俺とヒナコはまだ敵をとらえていないが臨戦態勢をとる。
やがて西の空に黒い点々が見えたあと、、
数千匹の蝙蝠と、その中に大きな翼を広げた魔族が現れた。
「ヒナコ、アユミを頼む。」
「了解、ダーリン☆」
大きな翼の魔族は俺たちから50mほど離れた所に降り立ち、口を開く。
「私は『堕ちた翼』、魔族だ、貴方の名前をお聞かせいただきたい、、」
やたら丁寧な奴だな、、
さて、どうしたものか、、




