122. 帝都の親子
『セントレオンの大聖堂』に入った翌朝、大聖堂の前ではフリード殿下と兵達が出発の時を迎えて整列していた。
「では殿下、15日後に帝都の神殿にお伺いいたします。」
「頼んだぞ、ヤマナ、それまでに皇帝陛下に上奏し、準備を整えておくゆえ。」
「はい、帝都まで、お気をつけて。」
「大丈夫だ、ユウキもついているからな。」
フリード殿下はそう言ってヤマナに別れを告げ、兵達と共に帝都への帰路へとついた。
一行は帝国と東方諸国の間にあるアルパウト山脈の西側に沿って北上し、デルハルトと帝都を東西に結ぶ街道に出て西へと向かい、1週間ほどかけて帝都へと帰還した。
「そうか、フリードよ、、ヤマナは、いやヤマナ様はやはり『大神官』であったのだな。」
「はい、皇帝陛下、まごうことなく『大神官』の職業を持っておりました。そしてその配下には『軍師』も。」
フリード殿下は壮麗な会議室の円卓で、父である皇帝陛下の正面に座り報告を行っていた。
円卓には帝国を支える十数名の重臣たちも座っている。
「ほう、『軍師』と。」
「はい、小さな少女でしたが『軍師』のスキルを使ってヤマナやユウキ達を援護し、魔族の襲来を退けました。他にもヒナコやトモナリを始め、単独で魔族を倒せるほどの戦士たちがヤマナの元に集いつつあります。また、ヤマナ自身に至っては、『名前持ち』の高レベルな魔族を撃破いたしました。」
「そうか、まさに、過去『人魔大戦』の折、『大神官セントレオン』様の元に英雄たちが集った時の再現だな。
で、『セントレオンの大神殿』はどうであった?」
「はい、ヤマナとつながりの深い人間だけがヤマナと共に入ることが出来ました。私も共に中へと。」
「ほう、其方も大神殿に入ったのか!」
「はい、、そして中には、、セントレオン様が待ってらっしゃいました。」
「なんと! セントレオン様は生きてらっしゃるのか!!」
「いえ、本人がおっしゃるには、神殿内に残っているセントレオン様の思念体と気の集合体だそうです。それでもヤマナを圧倒するほどの強さでしたが。」
「セントレオン様とヤマナ様が戦ったのか!!」
「はい、神殿に入るなり、ヤマナに『腕っぷし見せて見ろ、』と。」
「それで?! それでヤマナ様は勝ったのか?」
「はい、勝つには勝ちましたが、まあ、勝たせてもらったようなもので、、セントレオン様も生きてた頃よりずっと力は落ちているようでした。
それでも凄まじい戦いで、神殿内は打ちあう二人の衝撃波が飛び交い、我々は生きた心地がしませんでした。」
「そうか、『大神官』同士の戦いが見れるとはうらやましい限りだ、、ヤマナ様の友となったお前が本当にうらやましい。」
「はい、ヤマナという友を得て、本当に幸せ者ですよ、私は。」
「フリードよ、」
「はい、陛下。」
「帝国をあげてヤマナ様を助けよ、そのために其方が行動するのであれば、皇帝である余の命より優先すべき事案であるとしよう。」
「「「陛下!!」」」
重臣たちが慌てる。
「かつてセントレオン様がこの大陸の人々を魔族から解放したからこそ、帝国も、またほかの国もあるのだ。今、エルフの島が侵攻され、この大陸も再び魔族の脅威にさらされているとなれば、皇帝ごときの命よりも優先されてしかるべきではないか?」
「「「……」」」
「フリードよ、良いな。」
「は、陛下の仰せのままに。ただご心配なく、帝国にとって不利益となることはありませんので。」
「そうだな、最大の不利益は、この帝国が滅ぼされ、人々がまた魔族の奴隷となることだからな。」
「では、まず陛下にお願いがございます。」
「何だ、フリードよ。」
「7日後、帝国の神殿にヤマナが現れますので、会談の場を設けます。そこに出席いただきたく。」
「なんと! それはいったいどうやって?」
「はい、召喚の儀式に使う石板です。あれはもともと、セントレオン様がこの大陸の各地を移動するために使っていた、転移の石板であるとのことです。ヤマナはすでにこの石板を使えるようになっております。」
「おお、あの石板にはそのような役目があったのか。」
「はい、これを利用して、ヤマナは各地を巡り、この大陸の戦力を整えるとともに魔族への対応を行う予定です。」
「そうか、」
「私も共に各国を巡り、その手助けをしたいと思っております。」
「ううむ、しかし危険ではないか? 皇太子である其方の身に何かあれば、、」
「各国への影響を及ぼすにあたり、陛下の外には私以上のものはいないでしょう。そしてこれに私の命を懸ける価値は十分にあります。」
「そうか、そこまで決意しておるか。では止めはせぬ、だが十分に気をつけよ。」
「はい、陛下、ありがとうございます。」
同じころ、 大陸の西にあるエルフの島では、
「『魔の源泉たる角』よ、邪魔するぞ、、」
「おおォ、『堕ちた翼』ではないか、久しいのォ!」
真っ暗な洞窟の中で二人の魔族が出会っていた。
一人は、痩せた黒いマントのような物でミノムシのように全身を包んだ男
一人は、牛の様な頭を持ち、3対6本の角を生やしている大柄な男。 男の頭には、左右に2本の巻角、額から前に突き出した2本の鋭い角、頭頂から後頭部へと後ろへ流れる2本の太い角がある。
「ああ、『枯れた指』がアルストア大陸でやられたらしい、『深淵の中の瞳』様の命を受け、『指』を倒した者の調査に赴くところだ、、」
「そォうか、嬉しいぞォ! 『翼』! おォれのとこォによってくれて、我が友ォよォ!」
「ありがとう、『角』よ、同胞の中でもっとも弱い私にここまで良く接してくれることに感謝する、、」
「はぁ? なにォ言ってるんだ? 『翼』よォ? あたりまえだろォ、おォれ達は人にない、『翼』や『角』とォいう魔族だけの特徴をヲ、色ォ濃ォく持ォった友ォだろォ?」
「それがな、、、」
『堕ちた翼』は『牙』との不和の話をした。
「『牙』ぁあ!! なに図に乗ォってやがんだあ! あんのォ野郎ォ!!」
「まあ、仕方ないさ、俺みたいな貧弱は『牙』に噛み砕かれる訳にはいかんからな、、、」
「あのォ野郎ォ、、いつか俺のォ魔力で焼き殺ォしてやる!!」
「いいさ、それより目的のものは見つかりそうか? 友よ」
「ああ、大分絞ォりこォめたが、、潜ォんでいるエルフ共ォの抵抗ォが今だ強くてな、、」
「そうか、、、」
「いいさ、俺にしか出来ん仕事ォだ。」
『魔の源泉たる角』は、その強大な魔力と探査能力を生かし、エルフの島にて何かを探しているようであった。
「ああ、友の顔を見れて良かった、そろそろアルストアへと飛ぶとしよう。」
「おォ、気ォ付けろよォ、友ォよォ!!」
「ああ、ありがとう、友よ。」
そして『堕ちた翼』は大きな黒い羽根を広げ、東へ向けてと飛び立っていった。




