120. ホテル・セントレオン
「あなた!!」
「エリス!!」
目の前には、白地に青の装飾が入った神官服を着たエリスが立っていた。
エリスのもとへ走り寄ろう、と、したが、左腕にアユミが全力でしがみついていた、、
「む~、」とか言いながら涙目になっている。
「アユミ、大丈夫、、」
何が大丈夫かは知らないが、アユミを撫でて手をつないだままゆっくり歩き、ゼンの神殿の祭壇を下りる。
「あなた、どうして?」
「ああ、セントレオンに会ってな、転送の石板の使い方を教えてもらった。さっきまでアルパウト山脈の反対側にいたんだよ、俺もアユミも。」
「セントレオン様に!! 会ったのですか?!」
「ああ、『腕っぷし試してやる』とか言いやがってな、あのヤロウ、
結局、物凄い「どつきあい」になって、良いの一発もらっちまったよ。マジで体がバラバラになるかと思った。
まったくとんでもない脳筋ヤロウだったよ。ありゃ間違いなく、魔法じゃなくって拳で魔族をぶっ飛ばしていたな。」
「あきれた、、ホント楽しそうに戦いの話をするのね、、あなたも十分脳筋よ。セントレオン様と戦うなんて、
まったく、、ふふ、、」
そう言ってエリスが俺の頬を撫でる。
「ああ、まったくだよ。はやくテリクスに帰りたいよ。」
「うふふ、という事は、もうちょっとかかるのでしょ、良いわよ、しっかり働いてきてね、あなた。」
「ああ、エリス、」
「ヤ、ヤマナ様、、セントレオン様と会って、戦ったとは、、」
お、白いひげに白い髪、セントレオンと違ってお手本のような老神官、ロドニーだ。
「おう! ロドニー、久しぶりだな! ああ、殴り合って、分かり合ったよ、はっはっは!」
「な、なんと、、セントレオン様と、、」
「ああ、それでな、祭壇の石板だが、大陸各地に転移できるそうだ、俺しか使えんがな。これからちょくちょく使わせてもらうからよろしく。」
「は、はあ、、、」
「あ、、、りょーしゅさま、、」
お! シェリーの弟のロイスだ、神殿の広間の入り口で俺を見て固まっている。
「おお! ロイス! 元気だったか?!」
「……おねーちゃんは?
ねぇ!! おねーちゃんは?!
う、ぐすっ、う、ううう、、」
やばい!! この前兆は!
「う”う”う”う”う”あ”あ”~~~~~~~~~~~~~~~ん!!!!
あ”~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!! あ”~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!! あ”~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!! あ”~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!! あ”~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!! あ”~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!! あ”~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!! あ”~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!」
ひぇぇぇえ、神殿が崩れそうな勢いで泣くロイス、これはやヴぁい!
こいつ! 泣き声に魔力乗せてやがる!!
とんでもない魔力量だ、魔道士の素質あるぞ!!
「ふ! ふみおさま!」
「え? なんだって? アユミ! よく聞こえん!」
「ふ! み! お! さ! ま! すぐ! シェリーちゃん! を! 連れて! 来て!!」
「わかった!! ロイスを頼む!」
「はい!」
急いで祭壇に戻りセントレオンの大神殿に飛ぶ!!
「はあっ、はあっ!」
「「師匠!」」「ダーリン☆」「フミオ様!」
「お、どうした、すぐ帰って来て。なんかあったか? ヤマナ。」
「ああ、セントレオン、ちょっとな、、」
ふう、と一息つく。 魔力は、、よし、まだまだある。
「シェリー! お前はゼノラウトに帰すぞ! みんなに挨拶しろ!」
「え?! わたし、、まだみんなと、、」
「ロイスが待ってる! 弟を泣かすな!」
「!! ロイス、、ああ、ロイス!」
「なんだ、嬢ちゃん、弟を置いて来たのか?」
「……はい、すみません、セントレオン様、、私は、」
「ああ、早く会いに行ってやんな。大事なことだ。また遊びに来いよ。」
「はい! ありがとうございました、セントレオン様! 皆さん、ありがとうございました!」
「ああ、またな、シェリー」
「うむ、ヤマナと一緒に帝国にも遊びに来い!」
「あとでゼノラウトで会うニャ!」
「よし、シェリー、いくぞ!」
「はい!」
シェリーと共にゼンの神殿に飛ぶ。
光が収まり、目を開くと、、
「お”ね”え”ぢゃーーーーんん!!」
涙と鼻水にまみれたロイスが祭壇に飛び込んでくる!
う、、思わず後ずさった。
シェリーは膝をつき、両手を広げてロイスを受け止め、抱きしめる。
「ああ、ロイス、ロイス、ゴメンね、ずっと一人にして。」
「おねぇちゃん、おねぇちゃぁぁん、、」
うんうん、感動の再会だ。
「ぐしゅぐしゅ、ずるっ、ずるっ、、」
あ、、、精霊のアームカバーが鼻水まみれに、、、
哀れ、弓精霊のビリディエット、、
「シェリー、命令だ、俺が帰ってくるまで、ここでエリスとロイスを守れ。」
「はい! フミオ様!」
「アユミは、」
「フミオさまと一緒です!」
「わかった、、じゃあセントレオンのところに戻るか。」
「はい!」
「あなた、ちょっと待って。これを」
エリスがバスケットを持ってくる。
「ん? エリス、これは?」
「セントレオン様への贈り物よ、ワインとクッキー、干し肉、果物よ。」
「あいつ、メシ食ってる様子はないんだが、、」
「大丈夫、この神殿でのセントレオン様への捧げ物よ。クッキーは私が焼いたの、持って行って。」
「ああ、ありがとう。セントレオンがいらないと言ったら俺が食うよ。」
「ええ、それでもいいわ。」
「ああ、じゃあ行ってくる。」
「行ってらっしゃい、あなた。」
エリスが俺の頬にキスをしてくれる。
エリスが離れると、俺とアユミは光に包まれ、セントレオンの大神殿へと飛んだ。
「ふう、結構疲れるな、、」
「ああ、気を付けろよ、転送は危険な事には変わりないからな。ん? なんかいい匂いがするな。」
「ああ、俺の妻がこれを持たせてくれた。セントレオンへの捧げものだってさ。」
そう言ってバスケットを差し出す。
「おおお! 酒だ! つまみもある!!」
「……セントレオン、お前、思念体なのに飲めるのか?」
「何言ってんだお前、殴れるからには飲めるに決まってんだろ! うひひ、久しぶりの酒だ!」
無茶苦茶な理論だがこいつが言うと納得してしまう、、
「わかったよ、たまに酒持ってくるよ。」
「おお! 助かる! お酌してくれるおねーちゃんもよろしく!」
こいつ、ほんとに聖人か?
「おう、飲むぞ、兄弟!」
「……グラスはあるのか?」
「グラスか、、」
ヒュッ!
セントレオンはワインボトルを空中に投げ、
ピッ!!
空中に人差し指を走らせ、ワインボトルを真っ二つにするセントレオン。
パシパシッ!
ボトルの首の部分を逆さまに右手で、底の部分を左手でキャッチする。
ワインは一滴もこぼれていない。
なみなみとワインの入った、ボトルの片割れを俺に差し出すセントレオン。
「「カンパーイ!!」」
ゴッ、ゴッ!
喉を鳴らして飲むセントレオン。
ゴクン、
一口飲む俺、
「なんだ、フミオ、飲みが悪いな。」
「いきなり、こんなに飲めるか! まったく、、」
「あ、注意することが1つある。」
「なんだ?」
「酔っぱらったまま転送使うなよ、この神殿の門の出入りもだ。どこ行くかわからんぞ、二度と返ってこれなくなるかもしれん。」
「それを先に言え――――!! 飲んじまっただろーーが!!」
「まったく、、あ、、」
ヒナコが俺の手からグラスを取った。
ゴキュ、ゴキュ、
「おいしーーー☆ ぷはー!」
もういーや、今日は飲んで寝るか、、
「おう、鼻たれ勇者のアルバートの子孫と、現世勇者! お前たちは俺の杯をのめ、ん?」
そういって自分の持っていたグラス(?)をフリード殿下に差し出すセントレオン、、
「はっ!! いただきます!」
フリード殿下が震える手でボトルの下半分を受け取り、ワインを口にする。
グラスをセントレオンに返すと、セントレオンは一口飲み、ユウキに差し出す。
「いただきます!!」
ユウキも一口飲む。
「うむ、うむ、」
満足そうなセントレオン。
「お、このクッキー、うまいな、、」
「ん? どれどれ、おおうまいな、ゼンのクッキーはこんなにうまいのか?」
「ゼンの、というより、私の妻のエリスが焼いたクッキーです。」
「おお! 今度エリスを連れて来なさい!」
「だが断る!!」
「うう、、そんな、、」
また落ち込むセントレオン、人妻も守備範囲かよ。
「まあ、ワインとクッキーは持ってきますから。」
「はあ、、飲んでしまいましたし、酔いを醒ますまで少し横にならせてもらいますよ。」
「ああ、フミオ、ちょっと待て。」
そう言って壁に近づき、手を当てるセントレオン、 壁が光ったと思ったら、、扉が現れた。
「寝室を作ったぞ、やり方はまた教える、今日は休みな。」
「ああ、すまん、ありがとう。」
と言ってドアを開くと、、キングサイズのベッドが一つある、なぜかここだけピンクの照明の部屋だった、、
「おい、、、セントレオン。」
「あ、中古じゃないぞ、今作った新品だ。ただ俺の寝室しかイメージできなくってな、そこでみんなで寝ろ。」
ニヤリと笑うセントレオン。
「……まったく、、俺は寝る! おやすみ!」
そう言って布団の中心でおやすみを叫ぶ俺、
「……チャンス! だーいぶ☆」「あ、ずるい!」「ししょー!」「とつげきニャ―――!」
もう知らん、周りが騒がしいけど、俺は疲れた! 呑んだしもう寝るぞ!!
おやすみ、Z Z Z Z Z ・・・




