119. ビリディエット
「シェリー、ついて来なさい。」
セントレオンはシェリーを連れて、様々な物が置いてある倉庫に入っていった。
倉庫と言っても、この神殿の部屋は天井や壁全体がぼやっと光っていてどこも暗いところはない白い部屋ばかりだ。
「うん、これだ。」
一つの木箱を手にとってシェリーに手渡す。
「シェリー、開けてごらん。」
「は、はい、、」
シェリーはそばにあった机に箱を置き、蓋を開けると中には指輪のついたアームカバーが入っていた。
「それは私に戦い方を教えてくれた先生が使っていた物だ。先生はエルフだったのだよ。
指輪のついている方が左手用、手袋になっている方が右手用だ。つけてごらん。」
「セントレオン様の先生が! 私がつけてもよろしいのでしょうか?」
「大丈夫、フミオに連れられてとはいえ、君がここに来たのも運命の巡り合わせなのだろう。それに付けても良いかは、そのアームカバーとシェリーが話して決めることだからね。」
「話?」
「あるじさま、あのアームカバー、」
いつの間にか顕現した刀精霊のフィオナが、アームカバーを見つめながら口を開いた。
「ああ、俺も精霊の気配を感じた。」
「アズリちゃんも反応しています。」
アユミのもつ精霊の杖、アズリも青い光を揺らめかせていた。
恐る恐るアームカバーに手を伸ばすシェリー、指先が触れた瞬間、アームカバーはうっすらと緑色の光を発し始めた。左手をアームカバーに通し、その先にある指輪を中指に通す。右手をアームカバーに通し、その先の手袋に指を通す。
「弓よ、」
キンッ!
シェリーがつぶやくと左手の指輪から弓が展開された!
「矢よ、」
ヒュッ!
今度は右手の手袋の内側から矢が現れる!
「うん、『精霊の弓と矢』が使えるみたいだね。」
満足そうなセントレオン。
「フィオナ、この子の名前、わかる?」
「うーんとね、『ビリディエット』ちゃんだって。」
「ありがとうフィオナ、 よろしくね『ビリディエット』」
キンッ!!
緑色の強い光が一瞬輝く!
「あ、、これが、パス?」
「ん? つながりを感じたか、そうだよ、大事にしな。」
「はい、フミオ様、 ありがとう『ビリディエット』」
「ふむ、先生のアームカバーを、使える人に渡すことが出来て良かった。
私の先生は、いつも言っていたよ。
『一人になってはいけない、一人にしてはいけない、一人で戦おうとしてはいけない』
だから私はたくさんの仲間を集め、たくさんの弟子を育てたんだよ。
わかるかい? シェリー」
「はい、ありがとうございます、セントレオン様!」
「さて、じゃあこの神殿の使い方を教えようか、フミオ。」
「ああ、よろしく頼む、セントレオン。」
「まず一番使う転送機能から、これで各地の神殿に飛んだり、神殿から飛んできたり出来る。」
「なにぃ!! 早く案内しろ!!」
「こっちだ。」
そう言ってまた別の部屋へと移動した。
「この部屋だ。」
そう言って案内された部屋には、模様のある石板が等間隔で埋まっていた。
「あ☆ この石板、、」
ヒナコがつぶやく。
「見たことがあるのか? ヒナコ。」
「え? ダーリン☆ 見たことないの? 神殿で召喚されたときに足元になかった?」
「そ、そうなのか!」
「ああ、これは神殿で戦士を召喚するときのキーになる石板だな。」
フリード殿下も石板を見てうなずく。
そ、そうだったのか、、気が付かなかった。
「そのとおり、この石板は、次元魔法を使う時に座標とするのに使われるものだ。
戦士の召喚の際、こちらの場所を特定させるのに使われているが、それはオプション的な使い方だ。
本来は私がこの大陸の各地を移動するために神殿を建設して、設置したものなのだよ。
いくつかは神殿側が破壊されているらしく、使えなくなってしまったが、なあに、まだ使っていない石板もあるので、現地まで運んで設置すればまた使えるようになる。」
あ、神殿の破壊のところでヒナコの目が泳いだ、、
「そ、それは新しい場所への設置も可能なのか?」
「ああ、可能だ。」
「やったーー! これで普段はテリクスでゴロゴロできる!!」
「ただし、起動できるのは大神官だけだ。定期的に見回るとなると、フミオ本人が動くしかないな。」
「う、、」
「はっはっは! ヤマナよ、後ほど巡回の場所とスケジュールについて話をしようか!」
うわー、フリード殿下、連れてこなきゃよかった、、
俺のゴロゴロライフが、、
「ところで一度に何人運べるんだ? セントレオン。」
「うむ、魔力次第だが、大体10人ほどにしておいたほうが良いな。大神官が石板の上に立った状態で、この神殿に入った時の様に手をつなげば複数人移動できる。あと、転送には本人の魔力が必要だからな。
たくさん運ぼうとして、魔力が足りなかったら、体の一部しか運べなかったりして大変なことになるから気を付けろよ。」
う、、なんかグロいの想像しちゃった、、
「お、おう、気をつける、向こうに人がいた場合はどうなるんだ? 融合しちゃったりしないか?」
「そこは大丈夫だ。石板から空間が膨れ上がり、まず周りを押しのけてから転送するからな。どこの神殿も、掃除するとき以外は祭壇は立ち入り禁止だろうし、光ったら退避するようになっている。規則が受け継がれているならば、だが。」
「ほお、そういやゼンの神殿は祭壇は立ち入り禁止にしていたな。」
「行ってみるかい? ゼンの神殿の石板はそこにあるぞ。」
ニヤリと笑うセントレオン。
「おう! 行くとも! 帰りも使い方は同じか?」
「ああ、一緒だ。乗って足元に魔力を集中したら後は分かる。」
石板に乗り、足元に集中する。
「よし! じゃあまず一人で、、」
「私も行きます!!」
アユミがしがみつく。
「ちょ、ちょっと、もう魔力送り始めて、、」
「はっはっは、2人で行ってこいフミオ。他の者はもうダメだぞ、危ないから離れろ。」
そう言って俺に飛び掛かろうとしていた、ヒナコ、シェリー、ルルを押しとどめるセントレオン。ルルなんかは跳躍したところを、片手で背中を掴まれてプラーンとぶら下がってるし、、
石版から光が溢れ、俺とアユミは足元から光に包まれていく。
周りがすべて白く光で塗りつぶされ、まぶしさに目を瞑る。
やがて光が薄れ、目を開けるようになると、そこはゼンの神殿で、
「あなた!!」
目の前にエリスが立っていた。




