118. 大神官 VS 大神官
「よお! 待ってたぜ、『次期大神官』、まずはお前の腕っぷしを見せてもらおうか?」
ボサボサの白髪に長い白いひげのその男はニヤリと笑い、白いガウンを投げ捨てて立ち上がる。身長は俺と同じぐらい170cmほどか? ボクサーの様に引き締まった体だ。
男は分厚い皮のバンテージを巻いた両の拳を、胸の前で打ち合わせた。
ガィイイイイイイイイインンン!!
凄まじい音と衝撃波が、広い空間内に響き渡る!!
耳のいいレオルやルル、レパーラが両手で耳を抑えてる。
「全員、ユウキとトモナリの後ろに下がれ。 ユウキ、トモナリ、、死ぬ気でみんなを守れ!!」
「了解、フミオさん。」
「わかった、おじちゃん!」
「『初代大神官』ってのは随分と脳筋なんだな。」
男に向かってスタスタ歩きながら話しかける。
「ん? この世界で、誰かを守ろうとするなら優しさの前にまずは強さだろ? 日本とは違うんだよ、ここは。『力無き正義は、、』何だっけ?」
両拳を腰に当てて答える男。
「『無能』もしくは『無力』だろ。そうだな、、実感しまくってるよ。
ところでゴングはどうする? 誰かに金貨でも投げてもらうか?」
一足で打ち合える間合いまで近づく。
「そうそう、そうだったな。
初手はやるよ。それがゴングだ。」
「そりゃどーも」
4mほど離れて立つ2人、互いに構えることなく、緩やかに自然体で立って居る。こうして前に立っているだけで、この男の異常な強さが伝わってくる。魔力が多いわけではない、ただ、その体から発する気の質が異常なのだ。極限まで質が高められたその男の気は、触れただけで消しとばされそうな暴力性と、それは裏腹に神々しさも感じられる。
ズバン!
稲妻をまとった抜刀!!
右腕の前腕だけで受け止められた。
おいおい、斬撃を腕だけで防ぐってマジかよ。しかも気に遮られ、皮のバンテージにすら到達していない。
男はニヤリと笑い、
「いくぜ!!」
と叫んで拳を振るい始めた!
ガガ! キィン! カカッ!
離れているにもかかわらず次々に襲いくる拳をフィオナで迎撃する!
ドガ! ガシュッ!! ガギギギン! ガガン!!
白髪の男と俺が打ちあった際に生じた衝撃波が室内を飛び交う!
ユウキは左手のカイトシールドで、トモナリは大剣で荒れ狂う衝撃波からみんなを守っている。
ヒュバババ! ガン! ドガガガ!!
くっ! 1発1発が鋭い! 精密射撃の銃弾のようだ!
大ハンマーのようだったケンタの拳とは全く質が違う。拳のくせに、日本刀の俺より射程が長い!
「そらそら、どうした? 守るだけか?」
連打に押され、ジリジリ後退する俺、
「フィオナ!」
-- はい! あるじさま!
「『剣体一致!!』」
俺と刀精霊フィオナのパスを全開で繋ぎ、互いの気を循環させ、出力を上げる!
ヒヒュッ!! シュバッ! ビッ! ビシ!
気のガードを切り裂き、届いた!
男の上腕や胸に、引っ掻き傷程度だが、傷がつき始める。
走りながら打ち合い、斬りあう!
「ほう、俺のバトルオーラを突破するか!」
「何だそりゃ! 厨二かよ!」
こいつ、300年前の人間じゃ無いのか?
何でこんな厨二語が出てくるんだ?
welcomeのスペルも間違っていたし、、
ドゴン!
「ぐわっ!!」
しまった! 考え事してたら1発良いのもらった。ゴロゴロ転がる俺、、
痛ってー!!
マジで痛ってー!!
ただの打撃じゃねー
打撃に何入れてやがる!
身体がバラバラになりそうだ!
「ごはっ、、ぐ、ごはっ、はっ!!」
むせながらもなんとか立ち上がる。
「おい、おまえ良い度胸してんなぁ? ああん??
この俺が相手なのに考え事かよ。
そうだ、お前が負けたら、お前と男どもは叩き出して、女の子たちはここでメイドな。」
「「「「「!!」」」」」
「絶対嫌ーー!! 好みじゃ無いです! フミオ様! 『棋士回生』!! アズリちゃん全開でいくよ『飛成龍王』!!」
「ダーリン☆がんばれー! マッチョジジイをぶっとばせー!」
「嫌です! 筋肉ダルマはお断りです!」
「ししょーがんばれー!!」
「引っ込むニャ! キモオヤジ!」
ひでぇな、こいつら。
あ、、女の子の罵声浴びて落ち込んでる。おいおい、バトルオーラとやらまで薄くなってるぞ。
俺よりダメージ受けてるじゃねーか。
こっちはアユミが勝手にかけた『棋士回生』で全回復して、全開の『飛成龍王』で異常な量の龍王気に包まれたが、、このまま戦って良いのか?
「はぁー、久しぶりに女の子に会えたと思ったのに、、」
「おい、、」
「ん?」
「そろそろ行くぞ」
「ああ、、、来な、」
ヒュカカカ!
数合打ち合うと、男のバンテージはバラバラと切れて落ちた。
「はいはい、合格ぅー、
この神殿を使う事をセントレオンこと、レイ・オンダが許可しますぅー、
はぁー、、」
やっぱり元日本人だったか、ていうか、本当に良いのか? こんなんで?
「セントレオン、俺は『フミオ・ゼン・ヤマナ』、2年ほど前にゼノラウトで召喚された。」
俺は白いガウンを着たセントレオンと並んで石段に座り、自己紹介をした。
「ん、2年前? すごいなフミオ、この短期間で『大神官』になったのか。お前、俺と一緒でゲームキャラじゃないだろ、最初戦えず苦労しただろうに、一体どんなレベルアップしたんだ?」
「やはりあんたもか、まあそこそこ苦労したさ。 アユミ、おいで、」
俺のそばに走り寄って来て、すぐに背中に隠れるアユミ。
「この子はアユミ、同じくキャラなしで召喚されている。」
「そうかぁ、おいで、アユミちゃん。」
「ゃ! です」
俺の後ろから出てこようとしないアユミ、メイド発言ですっかり警戒されてしまったようだ。
「あちゃー、嫌われちゃったなぁ。」
「ちなみにアユミは『軍師』だ、『力読み』も持っている、が戦闘力は子供以下だな。」
「そうかぁ、『軍師』とは凄いな。俺の『軍師』も紙装甲だったよ。ちゃんと守ってやれよ。」
「ああ、もちろんだ、で、こちらはヒナコ、戦闘機キャラだ。」
「ダーリンの愛人のヒナコです☆」
「……凄まじい戦闘力だな、、だが、、、」
「ああ、気を付けるよ。本人にも言ってある。」
「そうか、ならいい。」
セントレオンは、ヒナコのあまりの強さが本人の魂を削りかねないことを分かっているようだった。
「こちらはアルカナ帝国の皇太子、フリード殿下だ。」
「セントレオン様、フリードと申します! お目にかかれて光栄です!」
おお、あのフリード殿下が緊張している。
「お、あの鼻たれアルバードの子孫か。そういや面影があるな。」
「はっ、ありがとうございます!」
「どうだ? この大陸をしっかり治めているか?」
「お恥ずかしながら、、ヤマナが大陸東部と南部の争いを収めるまでは、人同士の戦乱に明け暮れている状態でした。」
「そうか、、全大陸が団結しないと、魔族軍とは戦えんぞ?」
「はい、わかりました。」
こんな素直でおとなしい殿下は初めて見たよ。
「こちらはユウキ、見た目通りの勇者だ。」
「初めまして、セントレオン様。」
「ほお、なかなかバランスがよさそうだな。」
「ああ、それに真面目で、戦うたびに成長している。勇者と呼ぶにふさわしいよ。」
「そんな、フミオさん、俺がそう変われたのはフミオさんに会えたからだよ。」
熱い目で俺を見るユウキ、あ、アユミが俺の背中からユウキを睨んでる、、
「こちらは、トモナリ、こんなゴツイなりだが、召喚されたときはまだ小学生でな、現在成長中だ。」
「よろしくお願いします! ええと、セントレオさん」
「いやいや、それじゃどっかの空港だから。セ・ン・ト・レ・オ・ン! 頑張れよ、トモナリ。」
「はい! セントレオンさん!」
「で、こちらはレパーラ、ベアダインで民を守って国と戦っていた勇敢な戦士だ。」
「おじいさん、よろしくニャ!」
「おお、レパーラさん美しい、どうです? この神殿で私と、、」
「いやニャ!」
うわ、そっこーでフラれたよ。
「セントレオン、あんた、実体ないだろ?」
「ああ、フミオにはわかっていたか、、そうだ、肉体はとっくに朽ち果てていてな、ここにいるのは私の思念体と気の残りかすの集まりさ。この神殿内でしか活動できんよ。」
……残りかすであの強さかよ。
「で、こちらが、ケビン、レオル、ルル、シェリー、みんな俺の弟子だ。」
「「「「よろしくお願いします! セントレオン様!」」」」
「うん、よろしく。ん? そっちの子はエルフか?」
「ああ、シェリーはエルフだ。エルフの島は魔族軍の侵攻で落ちた。シェリーは幼い弟と共にこの大陸に避難してきたんだ。」
「そうか、、シェリー、」
「はい、セントレオン様。」
「君はなぜ戦う?」
「故郷を、故郷を取り戻すために!」
「……それは想像を絶するほど辛い戦いになるよ、分かっているのかい?」
「!! 私一人になっても!!」
「おい、セントレオン、」
「ああ、意地悪な問いかけだったな、ごめん。だが理由があるんだ。シェリー、ついて来なさい。フミオ達もだ。」
そう言ってセントレオンは立ち上がり、入り口とは反対方向にある扉へと歩き始めた。




