117. Welcom!!
「これが、『セントレオンの大神殿』???」
俺は切り立った岩壁に設けられている小さな門を前に、首をかしげていた。
門は左右の柱がギリシャ調の白い円柱となっていて、半分岩肌に埋まっている。
上部と下部は長方形の石が埋まっているだけだ。
そして真ん中の空間は、白く光る壁でおおわれていた。
「この遺跡は、帝国の捜索隊により、2年ほど前に発見されたのだ。」
フリード殿下が説明し始めた。
「セントレオンは大神殿を作り、そこを拠点に魔族軍と戦っていたらしい。セントレオンがこの大陸から魔族軍を駆逐したのが300年前、その頃は『深い黒の大陸』との間にある『エルフの島』も健在でな、一旦はこの大陸に平穏が訪れたのだが、そこからは人間同士の戦争が絶えなくなってしまった。そうしているうちに7年前、エルフの島は魔族軍の大規模侵攻を受けほぼ壊滅、この大陸もまた魔族の脅威にさらされることになったのだ。」
殿下の話を聞き、悔しそうに唇を噛みしめるシェリー、そっと手をまわしてやると、俺の脇にしがみついて来て、嗚咽するように泣き始めた。
「それで、これがセントレオンの神殿だという根拠は?」
「うむ、先ずは位置、これは伝承通りアルパウト山脈にあるというだけなのだが、、
次にこの不思議な光の壁、どうやら次元魔法を中心とした複数の魔法で構築されているらしい。
このような魔法、セントレオン以外には作れまい。」
うーん、確かに見れば見るほど不思議な魔法だな、、
「ダーリン☆ あれ!」
ヒナコが門の上部を指さす。よく見てみると、
『 Welcom!! St.LeiOn 』
と彫ってあった。
「……間違っているけど、間違いなさそうだな、、ひょっとして気さくな人なのか? 『レイオン』さんは。」
「うーん☆ 『Welcom!!』って怪しいね~、eが一文字足りないし。」
「読めるのか! ヤマナ達は!」
「ええ、私たちの世界の言葉ですね、違う国の言葉ですが簡単な言葉です。間違ってますけど。」
「で、何と書いてあるのだ!」
「『歓迎、セントレオンより』と書いてありますね、、、」
「おお! 『歓迎』とな!」
「それで、、誰も入れない、とのことでしたが、誰かこの光の壁に触ってみたものはいるのでしょうか?」
「う、、うむ、触ると吹っ飛ばされるのだ。」
「は?」
「触った者はみんな何かに殴られたように吹っ飛ばされるのだ。」
「……殿下、そういう説明は一番最初に、 危うく触るところでしたよ。」
「ヤマナならもしかしてスルッと通れるかもと思ってな、、」
「 …… 」
「いや、ほら大神官のヤマナならいける、、、ハズ? かも? と思ってな。」
この殿下、何も言わずに人の事を実験台にしようとしやがった、、
「はあ、、しょうがないですね、、、
アユミ、シェリーを頼む。
みんな下がっていてください。」
そう言って泣いているシェリーをアユミに託し、皆を下がらせ門の前に立つ。
左手をそおっと伸ばし、光の壁に触れると、、
攻撃の意思を感じた瞬間、光の壁から拳が飛び出してきた!!
ボディーブローを右手ではじく!
2発目は来ない、壁が『ニヤッ』と笑った気がした、いや間違いない、笑いやがった。
「……ンのやろう、、」
そのまま左手から光の壁に入っていくとするりと抜け、白い10m四方ほどの部屋に出た。
白い部屋の先にはドアがあり、その先に通じているようだ。
光の壁を抜けるとき、通るための情報がわかった。頭の中に流れ込んできたというべきか。
一旦、みんなの元へと戻ることにする。
「おお! ヤマナ! やはり通れたのだな! 先ほどの攻撃をさばけば入れるのか?」
殿下が興奮している。
「いえ、、私とその仲間が入れるようです。
必要ないはずなのですが、私を試そうとしてなのか、からかおうとしてなのか、一度目は殴り掛かってきました。 いい性格してますよ、まったく、、」
「そ、そうか、で、中にはなにがあった?」
「まだ一つ目の部屋だけなので、何もありませんでしたよ。その先に通じる扉が一つだけで。」
「おお! そうか! そ、それで、私も連れて行ってもらえるのか?」
殿下は興奮が最高潮のようだ。
「この先、なにが起きるかわからないところに、殿下を連れては行けませんよ。」
「そ、そこを何とか頼む! 万一の事があっても大丈夫だ! 継承権第2位の弟がいるし、私の後を継ぐ子供たちもいる!」
「いや、ますます危ない目には会わせられないような、、」
「そこを何とか―!」
……弱ったなぁ、、
この壁は、俺と共に戦った者、俺を信望する者、など、俺とつながりが強い者なら俺と一緒に通れるみたいなんだけど、、
殿下行けそうなんだよなぁ、、
殿下、そんなに俺の事を思ってくれているのか、、
「仕方ないですね、、では呼ばれた順に手をつないでください、アユミ」
そう言ってアユミに右手を伸ばす。
「はい!」
アユミが俺の手を握る。
「ヒナコ」
「やった☆」
ヒナコがアユミと手を握る。
「シェリー、ルル、レオル」
「「「はい! 師匠!」」」
「レパーラ」
「はいニャ!」
「トモナリ、ユウキ、」
「うん!」「おう!」
「フリード殿下」
「おお! ありがたい!」
「最後にケビン」
「はい! 先生!」
「あとの者は防衛の陣を構築して待っていろ。今のところ、神殿に入れそうなメンバーはこれだけだ。手を放すなよ。」
「「「「はい!!」」」」
「絶対に放しません!」
いや、アユミ、気合入り過ぎだから。
「よし、ゆっくり付いてこいよ。」
「「「「はい!!」」」」
11名で手をつないだまま数珠つなぎになって神殿の門をくぐる。まずは最初の白い部屋にたどり着いた。
「もう手を放してもいいぞ。」
みんな、ふう、とか言いながら手を放す。
相当緊張しているみたいだ。
「?? アユミ?」
「放しません!」
そう言って手どころか、俺の腕にしがみついてくるアユミ。
「……次の扉を開ける、シェリー、アユミを頼めるか?」
「はい、フミオ様!」
今度はアユミがシェリーに託される。
扉をギィィイイと開くと、、
大き目な体育館ぐらいの広い空間に出た。
真ん中には段状に高くなっている祭壇のようなものがあり、階段の一番下には白髪、白ひげ、白い服の男が座っていた。
「よお! 待ってたぜ、『次期大神官』、まずはお前の腕っぷしを見せてもらおうか?」
そう言って白いガウンを脱ぎ捨てる男、
男の上半身は見事な筋肉におおわれており、下は普通の生成りのズボンに編み上げのブーツ、そして両手には皮のバンテージがぶ厚く巻かれていた。




