10. 稲妻
「ふがいねぇ、
ふがいねぇよ、俺たち、、」
猫系の獣人の兵士がジョッキを握り締めながら、ポロポロと涙を流して語る。
ここはテリクスにある酒場のひとつ、
周りの者はじっと話を聞いていた。
「しょうがねぇよ、ドット、
とんでもない魔獣だったんだろ?」
別の兵士が、涙を流す兵士をなぐさめる。
「3mはある魔獣に、
俺たち、、、
すくんで、まったく動けなかったんだ、、
弓持ってるやつが、矢を射ってたけど、、
効かないんだよ、全然刺さらないんだよ、、」
「でも領主様は、
あの方は、、、
村の人と俺たちをかばうように、
ずっと、ずっと、
一番前で、
たった一人で、、
魔獣の爪に切り裂かれて血だらけになって、、
槍もなかなか刺さらなくって、、
体当たりで何度も吹き飛ばされて、、
何度も何度も倒されて、、、
でも下がらないんだよ! あの人は!!
ボロボロなのに!
血だらけなのに!
一歩もひかないんだよ!
俺たちが後ろにいるから、、
ううっうっうっ、、」
兵士が目頭を押さえる。
「また吹っ飛ばされて、、
倒れた領主様に覆いかぶさるように魔獣が襲いかかって、
もうダメだと思った。
でもその時、領主様が叫んだんだ!
なんて言ったかはわからねぇ、
だけど立ち上がりざまに抜いた剣は、
輝いてたんだ!
襲いかかる魔獣の腕を切りとばし、そのあと、こう、縦に魔獣を切り裂いたんだ!
切った時、雷が鳴って、物凄い光と音で、夜の山の中が真昼のように一瞬明るくなったんだ!
後には、まっぷたつになって、焼けこげた魔獣の死体があった、、」
「へぇー、領主様は雷の魔法剣でも持ってるのかい?」
「いや、剣は俺たちのと同じ、支給用の剣を使ってた、
あれは領主様の、、
技だと思う。
剣もボロボロになってもう使えなくなっていたし、、
ああ、強くなりてぇ、強くなりてぇよ!
せめてあの方の足手まといにならず、一緒に戦えるぐらいに!」
「まぁ、飲めよ」
仲間の兵士がもう一杯勧める。
「いや、やめとくよ、、
明日から早起きして、自主稽古する事にしたんだ。
いつかあの方の役に立ってみせるよ。」
そう言って兵士は帰って行った。
「きゃぁっ!」
ヴィエラ村の外から小さな悲鳴が聞こえた!
俺は山側の柵にとび登り、見回すと、、
「ぃゃ、やだぁ、、いたぃよぉ、、」
いた!!
少女が柵を背に倒れており、3匹の大型犬ほどの黒い魔獣に襲われ、手足を噛まれていた! 魔獣はずんぐりとした熊のような体型で、歯と耳は狼のように尖っていた。2mほどの柵から飛び降りて少女のところへ走る!
「ギャン!!」「ギャガルゥウウ!」「ギャギャンッ!!」
即座に槍で魔獣の尻、喉、脇を素早く刺し、3匹とも仕留める!
途端、背後から凄まじい怒気を感じた!
振り返ると、
ばかでかい魔獣が吠えて突っ込んでくる!
しまった、さっきの魔獣の親か?!
構える間もなく、魔獣の突進で吹き飛ばされる、
ぐぅ!
倒れこんでいる暇はない!
すぐ立ち槍で迎え撃つ、
2、3発槍をしならせて魔獣を叩く!
が、ぶ厚い皮に阻まれてきかない!!
素早く2連突き!
「りゃ、りゃっ!」
げっ、硬い!
早い突きじゃ軽くて、穂先がまったく入らない!
また一撃が来る!
吹っ飛ばされる、
「ぐぅぅっ!」
というか半分自分で飛ぶ! 『飛び受け身』でダメージを最小限にする。
兵士達も集まってきた、が、魔獣を見て固まる。
横なぎの一撃がまた来る! 皮鎧に爪が引っかかる! そのまま引っ張られ、吹っ飛ばされる。
バンバン飛び受け身している姿に、さぞや派手にやられているように見えるんだろうなぁ。爪で引っかかれて結構流血してるし。
今度は一撃をかわしてから腰を据えてドン! と槍を突く!
「りゃぁぁ!」
よし、刺さった! ってあれ、抜けない!
しまった、槍を持ってかれた!
体当たりでまた吹っ飛ぶ。
ごろごろ転がり、起き上がりざま、右膝を立てて座る形の『立膝』で座り、迎撃態勢をとる。
魔獣が突進してくる!
俺の前でガバッと大きく立ち上がり、右腕を振りかぶって打ち下ろしてくる!
そういやこの態勢から敵を迎撃する居合いの技、あったな。腰の剣に手を回し、思わず技名を叫んだ。
『稲妻あぁっ!!』
立膝から立ち上がりつつ、抜刀! 下から上へ切り上げる!
バヂンッ!!
うお! 剣から雷が出た!
魔獣の腕を切り飛ばし、そしてそのまま縦に切る!
ドガガァァン!!
雷光が魔獣を切り裂く!
やった、か?
うん、やった、
よし、フラグはたっていない。
口から腹を経て股下まで切り裂いて、内側焼かれてちゃんと死んでる、
リンと父親は?!
見回すと父親が、リンを抱えながら名を叫んでいる。
リンの手足は何度も魔獣にかまれ、ひどい状態になっていた
すぐに手当てしなければ!
止血、添え木の応急処置はしたが、衰弱が酷い。
魔獣は父親を踏みつけて抑え、その間に、子魔獣にリンを襲わせていたそうだ。
狩りを教え込んでいたのか?
すぐにエリスのところに行って手当てしてもらわねば!
しかしここからテリクスまでは10km弱ほどある、
応急手当てをしたリンを布で包み、背負う。
試してみたいことがあった。
居合いの『稲妻』を叫んで技を振るった時、稲妻が出た。
これが俺に与えられた召喚戦士としてのスキルなのだとしたら、
ならば他の技も、、
腰を少し落としてタメをつくり、技を振るう気でつぶやく。
『追い風……』
本来は、距離のある敵に、風を受けた帆船のようにスーーっと近づいて、切り付ける技だ。
背中の後ろからそよそよと風を感じたかと思うと、、
次の瞬間、ゴッと吹いてきた!!
よし!
リンを背負って走る!
風に包まれて運んでもらい、
走る! 走る! 走る!
なにがなんでも、、
ぜってーー、助けてやるからな!




