107. 大神官
「アユミ、気づいているか?」
フリード殿下との昼食を終え、本陣の丘を下りて自分達の陣に戻ってから、アユミに話しかける。
「……これが、この兵士のふりして紛れているこいつらがフミオ様やフリード殿下の敵ですか?」
さすがはアユミだ、能力を使わなくても、ある程度わかるみたいだ。
この大陸軍にかすかに漂う、魔族達の気、偵察か、それとも戦いに来たか、いずれにせよ、今は兵士に化けるなりして潜んで居るようだ。
「ああ、そしてこの大陸に住む人々の共通の敵でもある。あまり露骨に索敵はするなよ。見つけても知らんぷりしろ。戦闘開始までは『盤面把握』や『盤面掌握』は使うなよ。」
「……はい、、」
俺たちはフリード殿下の本陣1万の脇に設営されていた大きめのテントを割り当てられ、その中に入っていった。
ゼノラウトのテリクス兵80名余りと、俺の弟子たち20名はその周りの警備に当たる。
俺は子供達とレパーラを集める。
「全員、武器を出して確認しろ。」
「「はい!」」
「ルル、ちょっとその小太刀見せてみろ。」
「はい、ししょー」
ルルの小太刀を確認する。小さいながらも、なかなかに多くの敵と戦ってきたルルだ、案の定、目釘が痛んでいたので取り替えてやる。
「ルル、褒美で貰った宝剣はどうした?」
「えーと、、あった、」
ルルが自分の道具袋からゴソゴソ探し出して宝剣を出す。
宝剣を確かめてみる。この材質は、、若干フィオナに似ているな。
気を流してみると、、ピタッと刀身に宿ることがわかる。普通の剣では直ぐに拡散してしまうが、 この剣はしばらくの間、魔力を込められるようだ。
よし、ルルの宝剣を鞘に収め両手ではさむように持ち、祈りを込める。
鞘の装飾に使われている宝玉にも流れて行くことを感じたため、そちらにも祈りの気を込めて行く。数十秒の祈りの後、
「ふう、ルル、抜いてごらん。」
「はい、ししょー!」
ルルが抜いた宝剣の、30cmほどの刀身は白くキラキラと輝いていた。
「きれー! ししょー! これは?」
「ああ、今日必要になるかもしれないから祈りを込めておいた。ルルが使うことにならなければいいが、、ルルが使うべきと判断したら迷わず使え。」
「はい! ししょー!」
「レオルは、うん、よく手入れしてるな、この太刀は。」
「師匠、そんなにやばい奴と戦うのか?」
「ああ、やばいな、、お前の宝剣も見せてくれるか?」
「これだよ、師匠、」
レオルの貰った宝剣は、普通の剣だった。
「お前は守る事に徹しろ、場合によっては、、ルルを連れて逃げるんだ。いいな、」
「師匠、、」
「シェリー、お前もだ、レオル、ルルと一緒にいろ、やばいと思ったら逃げる事を考えろ、いいな、お前たち!」
「「「はい!」」」
「トモナリ、お前、『角成竜馬』の気は自分で使えるようになったか?」
「うーん、まだ自分ではうまく出来ないや、アユミちゃんがかけてくれないと無理かなぁ。」
「そうか、、弟子どもも自分で『歩成金』は無理だろうなぁ、、そうなるとやはりキーはアユミか、本当はこんなところからは避難させたいんだが、、」
「フミオ様! 私は大丈夫です! 私は、、フミオ様と一緒に戦います!」
「ありがとう、アユミ、、 ヒナコ、アユミから離れず守ってやってくれないか? アユミが能力を使うと必ず狙われる。」
「うん、いーよ☆ダーリン!」
「レパーラ、」
「わかってるニャ、ご主人様、この陣の中にかすかに漂う、鼻をつく水が腐ったような匂い、、思い出したニャ、村を襲ったあいつと一緒だニャ。」
「そうか、流石だ、レパーラ、俺の短刀を一本持っていけ。」
「え! こんな高そうにゃの、良いのかニャ?」
「ああ、これにも祈りが込めてある。魔族には有効なはずだ。使え。」
「分かったニャ、ありがたく使わせて頂くニャ、ご主人様。」
「すまんな、、みんなを危険にさらす事になって、、」
俺はみんなに頭を下げて謝った。
「フミオ様! いくら私達でも怒りますよ! もっと信用してください! 私達は、、フミオ様と共に戦うためにここに居るんです!!」
「……ああ、そうだな、ありがとう、シェリー。分かった一緒に戦おう! だが無理だけは絶対にするな。」
「「「はい!」」」
次に、アルカナ帝国とガルスト王国から預かった20名の弟子どもを呼ぶ。
「全員、聞け、この10万の軍の中に魔族が紛れて居る。十中八九、邪魔者の排除に来て居る。」
「ついに!」「奴らと戦えるのですね!」
「お前達、すまんな、まだお前達に魔族と戦える力はない。闘技大会に出た魔族と同等、もしくはそれより上の連中が来て居る。だからお前達に命令だ、まずは生き残れ!
直接的な交戦は俺とヒナコ、トモナリ、ユウキの4人、サポートはアユミだ。それで手が足りなければ、レパーラにも手を借りる。」
「ご主人様、レパーラの手も借りたいのニャ! 喜んで貸すのニャ!」
肉球を見せて、どやぁ、 とニンマリするレパーラ、、
猫の手とかけて、うまいこと言ったと思っているのだろうか?
「……まあ、、その時が来たら、お前達はレパーラのサポートと、子供達の守りに回ってくれ。ただし、絶対に生き残れ! まだまだ伝えたいことがたくさんある!」
「「「はい!先生!!」」」
「よし、じゃあ順番に刀を持って構えて見ろ、ちょっと早いが、、聖の気の流れを伝える。」
「「「!!! 先生、お願いします!!」」」
一人一人、剣を構えさせ、その手に触れ、聖の気を流してやる。ぽうっと白い光を放つ刃、、
俺が手を放すと、光は徐々に消えていく。中には長時間、維持することができる者もいた。
「この感覚を忘れるな。今日できなくてもいい、明日できなくてもいい、だがいつか、いつかお前たちはこれを使えると信じている!」
「「「先生! ありがとうございました!!」」」
「おい、ジョバス!」
「はっ、領主様!!」
「日が落ちるまであとどれくらいだ?」
「はっ 3時間ほどです。」
「そうか、、じゃあ後は、寝るか!」
「「「えっ?」」」
「夜間戦闘前に寝るぞ、おいジョバス、2時間経つか、何かあったら起こせ。」
「はっ、お任せください!!」
「じゃあ、おやすみなさーい。」
草の上にマットを敷いただけの上にごろんと転がる。
唖然とする皆。
「……ルル、おいで、お昼寝だ。」
「はい、ししょー!」
ルルが俺の胸の上に腹ばいで乗っかり、お昼寝モードになる。
うん、モフモフであったかい。
「「「!! ずるい! 私たちも!!」」」
大の字になった俺にくっつくように、みんなわらわらと横になって昼寝を始めた。
2時間後、、、
「ふぁ、、ちょっとは魔力回復したか?」
「フミオ様、、大丈夫です、満タンになってます。」
「そうか、アユミが言うなら間違いないな。 殿下に呼ばれる前に軽食を取るか。」
「ダーリンのサンドイッチがいい!☆」
「よし、わかった、作ってやる。おいジョバス、お湯を持ってきてくれ、シェリー、お茶の準備を頼む。」
「ははっ!」「はい、フミオ様!!」
軽食を食べ終わったころ、、
「ヤマナ様、皇太子殿下が本陣でお待ちです。」
「わかった、今行く。」
ふう、昼寝したし、軽食もとったし、さて、、行くか!!
外は夕日も沈み、深い紺色の空に星が煌めき始めたところだ。
俺はトモナリ、ヒナコ、アユミ、レオル、ルル、シェリー、レパーラ、そしてその後にケビンを筆頭とする20名の弟子たちを連れて丘を上る。
丘の上には、フリード殿下が、勇者ユウキを横に控えさせて待っていた。
周りには帝国の重鎮や、各国の王族や武官が控えている。
「ヤマナよ! 待っておったぞ! ここに『力読みの石』を用意した! さあ、そなたが『大神官』であることを証明してはくれぬか!」
「……殿下、私は自分のレベルやスキルを衆目にさらすのは好まないのですが、、」
「すまぬ、だが数値や細かい内容までは伝えさせぬゆえ、頼めぬか?」
「……仕方ありませんな、、では、、」
石板の上に手をかざし、龍王の気を纏って集中する。
<フミオ・ゼン・ヤマナ>
種:人(男)
戦闘力合計:75923(←25835)
職業:
戦士Lv- 侍Lv- 格闘家Lv-
将Lv135(←85) 統治者Lv98 (←62)
聖騎士Lv32(←25) 精霊使いLv128(←35) 大神官Lv12 (←5)
龍王Lv25 New
スキル:
高度情報処理
剣術(剣術 居合 魔法剣 )
槍術(槍術)
体術(柔術 打撃 魔法拳 New)
魔法(回復 風 雷 闇 聖 空間 次元)
飛成龍王 New
へーー、龍王って職業なんだ、使いまくっているからか、レベル上がってるなー
「ヤマナよ! 本当に『大神官』なのだな!!」
「おお! まさしく『大神官』!!」
フリード殿下と確認役の帝国の文官が、喜ぶ。
「うわーーー、フミオさん、なにこの戦闘力、、てか以前の3倍って、以前はいつよ?」
ユウキがドン引きしている、、
「よし! 『大神官』が誠であった合図の合図のかがり火を焚け!」
フリード殿下の合図で、本陣の丘をぐるりと囲む数百のかがり火に火がつけられる。
オオオオオオーーー!
全軍で大歓声が上がる。
そして、、
ドゴォォォオオオオン!!
ゴバァァァアア!
ドガァァァアアアン!
10万の軍の数か所で爆発音がし、黒い瘴気の柱が幾筋も昇った。




