104. 義賊
「義賊?」
「そうニャ! あたい達は、おまいら共和国軍の輸送部隊を襲って、ハラ空かしたみんなにゴハンを分け与えているニャ! 村々から麦一粒残さず持って行ったこの人でなしどもめ! くっ、コロせニャ!」
日が暮れかかったころ、俺は夜営のために張った陣で、レパーラの取り調べを行なっていた。レパーラは「くっコロ」宣言をして、後ろ手に縛られたまま草の上に仰向けになった。
「では、、」
俺は刀に手をかける。
「ちょちょ、待つニャ!」
慌ててガバと起き上がるレパーラ、、
「……斬られたくなかったらお前達の話を続けろ。」
「……おまい達、共和国軍は、軍備のために村々からありとあらゆる食べ物を持っていこうとしたニャ。あたい達は、わずかな食料を持って逃げてきた人々を保護しているニャ。中には、食料どころか何も持たずに逃げてきた人もたくさんいるニャ。そんな人たちを匿って、何が悪いニャ!」
「おい、今の話、何か知っているか?」
ベアダインの将校に聞いてみる。
「は、はい、確かに土地を捨てて逃げ出した村民を多数匿っている連中と、それを率いる双剣使いの女戦士の報告があり、賞金もかかっています。特徴も一致しております。
この国では、決められた土地を離れると、、死刑なのです。」
「そうか……」
再びレパーラに向き直る。
「その人達はどこにいる?」
「絶対に言えにゃいニャ! 殺されても言わにゃいニャ! おまい達、共和国軍はきっとゼノラウトに倒されるニャ! その時まで守り切るニャ!」
「では、、」
俺がナイフを手にし、近づくのを見て焦るレパーラ、
「ニャ! い、いやニャ!」
「暴れるな、手元が狂うだろ、、」
ザクッ、
「ギニャーーー! ……あれ?」
後ろ手に縛っていた縄を切ってやる。
「トウセ ジウマは死んだぞ、俺たちが倒した。」
「!! 信じられんニャ! おまい達、一体何者ニャ?!」
「俺たちは共和国軍じゃない、ゼノラウト軍だ。そんでもって俺の名前はフミオ ゼン ヤマナだ。」
「!! ひっ人喰い竜殺しのヤマニャ!! あ、あたいは食べても美味しくないニャ!!」
スザザと後ずさりするレパーラ。
「……美味そうだな、お前、特に太ももとか、ジュルッ、」
「ニャ! 食べるのは止すニャ!!
ベッドで食べるって意味にゃら良いニャ!
ほら、ピチピチの17才なのニャ!
初物なのニャ!
胸だってほら!
うっふんニャ!」
草の上に足を崩して座り、手を頭の後ろに組んで上半身をひねり、グラビアアイドルのようなポーズを必死でとるレパーラ。
あ、、後ろからドス黒い強大な殺気を感じる、それも2人ぶん、、
「ひぃっ、何ニャこいつら!」
「ダーリン★ 撃っていい?」
「フミオ様に色仕掛けとは、、
ヒナコさん、殺っちゃいましょう。『飛成龍王』かけますよ。今ならヒナコさんの戦闘力、百万まで上げられそうです。」
「良いね★ 跡形もなく消しちゃいましょ★」
「ひいい! 何ニャ! おまいらそのドス黒い気は! 常人に出せる殺気を遥かに超えてるニャ!」
「あーー、お前達、その辺にして置いてくれないか? 話が進まん。」
「はい、フミオ様!」「了解☆ ダーリン」
「で、だ、ゼノラウト軍はトウセ ジウマを討ち取り、ベアディアは落とした。ベアダイン共和国も無条件降伏し、今はゼノラウト軍管理のもと、ベアダイン国民に食料を配っている。だから、どこに何人困っている人がいるか知る必要が有るんだ。協力してくれないか? レパーラ。」
その目を、急にウルウルさせ始めるレパーラ、今にも涙がこぼれそうだ。
「本当に、本当にトウセ ジウマは倒れたのニャ、、」
「ああ、倒した、誓って嘘じゃ無い。国民をさばくバカな法律の数々も凍結させてある。」
「…長かったニャ、、本当に長かったニャ! 苦しかったニャ! 仲間もいっぱい死んだニャ! あたいらの力が無くって助けられなくって、ゴハン足りなくって死んだ人もいっぱいいたニャ!」
レパーラは正座を崩したような割り座で座ったまま、ポロポロ涙をこぼし始めた。
「ああ、お前達はよく頑張った。遅くなってすまん。」
そう言って膝をつき、涙を流しているレパーラの頭を撫でてやる。
「ずっと、、ずっと待っていたニャ!
う、う、ううぅにゃあああああん! にゃぁぁぁぁん!」
レパーラは俺の胸にしがみついてきて、そして子猫のような鳴き声で泣き続けた。
「よしよし、よく頑張ったな、レパーラ。まだ俺たちが信用出来ないのならいい、昼に交戦した場所で食料を引き渡すように計らってやるから。」
「うっグスッ、判ったニャ、ご主人様。」
「ご、ご主人様?」
「……あたいは奴隷出身ニャ、元のご主人様はとっくに死んでしまったニャ。だからあたいのご主人様になって欲しいニャ、ご主人様こそあたいのご主人様に相応しいニャ」
「うーむ、、ついてきてもいいが、奴隷はいらん、優秀な戦士は欲しいがな。」
「ついて行くニャ! ご主人様!」
「う、だから、『ご主人様』は何とかならんのか?」
「じゃあ、にゃんとお呼びすれば?」
「アユミ、何と呼ばせればいい? 自分事だとわからんのだ。」
「ご主人様でよろしいんじゃないでしょうか? フミオ様。」
「そこは『フミオ様』じゃないのな、、」
「本人が呼びたがっているので十分です。それにフミオ様のお名前を口にさせるなど恐れ多いです。」
……黒い、黒いぞアユミ、、まあいいか、、
「レパーラ、お前の好きなように呼べ、ただしお前はもう奴隷ではない、俺の部下で一人の戦士だ、いいな。」
「了解ニャ! ご主人様!」
こうしてヒョウ獣人のレパーラが、俺の部下になった。
「ちょっと待っててほしいニャ、ご主人様。」
レパーラが小さな笛を出す。
ふぅぅーーーーーー、、
笛を吹いたようだが、俺には聞こえない。
見ると、レオルとルルが耳を塞いでいる。
「お前たちは何か聞こえたか?」
「甲高い笛の音が聞こえたよ。師匠は聞こえなかったのか?」
「ああ、そうか、獣人の音が聞こえる範囲は広いからな。」
犬笛みたいなものか。
やがて、、
「来たか。」
あたりの茂みに10名ほどの気配を感じる。
「おーい、みんにゃ、トウセ ジウマはくたばったそうニャ。」
「「「!!」」」
「この人はゼノラウトのフミオ ゼン ヤマニャ、あの『大陸最強の戦士』で『竜殺し』のヤマニャにゃ。
白い剣を持っていて、あたいを倒したのがその証拠ニャ。トウセ ジウマのクソヤローを倒し、ベアディアを落としたニャ、あたい達が長い間待ち続けた救世主ニャ。
そしてあたいのご主人様になったニャ、だからみんなとはここでお別れニャ。」
「あねさん!」「そんな!」
「ご主人様はみんなに食料をくれる約束をしたニャ、明日の昼、今日交戦した場所に荷車で届けてくれるそうニャ。だから明日の荷車は襲わずに、ちゃんと受け取って欲しいニャ。
そして国が平和になったことが確認できたら、、、匿っているみんなを村に返してあげて欲しいニャ。」
「あねさん、、、」
「みんな、今日まで、ありがとうニャ、、元気でニャ、、」
ポロポロ涙を流すレパーラ。獣人たちも茂みの中から姿を現す。
「あねさん、いままでお疲れさまでした、、」「うう、あねさん、、」「あねさん、、」
「みんな、、達者でニャァ、、、」
「いい面構えの連中だったな。」
「ご主人様、、自慢の連中ニャ、」
「ほとぼりが冷めたら、テリクスに呼んでもいいぞ。仕事は山ほどある。頑張れば金も稼げる。」
「ありがとうニャ、でもあいつらは、、きっとこの国を離れにゃいニャ。」
「そうか、、」
レパーラの頑張りに報いるためにも、ベアダインをよくしてやろう。そのためにも、フリード皇太子殿下と早く会わねば、、
---
不真面目そうに見えたレパーラさん、実はこんな裏がありました。
そのうちレパーラの奮闘記を書きたいなぁ。




