102. 師弟
アルストア大陸軍とやらを見るために騎馬と馬車で北の帝国領を目指す。
ベアディアを出発して半日、一行は熱帯の鬱蒼とした森を進んでいた。
先頭をベアダインの将校と、ケビン達帝国親衛隊出身者に任せ、俺は集団の中ほどにいた。すぐ後ろにはアユミ達を乗せた馬車がついて来ている。
「暑いな、、大丈夫か?お前達。」
「大丈夫だ、師匠!」
「だいじょうぶ~」
「森の中ならお任せください! フミオ師匠!」
「大丈夫です、フミオさま!」
レオルとルルは獣人でモフモフだけど大丈夫そう、エルフのシェリーは森の中ではやたらと元気だ、アユミは汗を流しながらも、まあ大丈夫か、
「う~~、、」
ヒナコだ、うなりながら馬車の中で横になって、額に濡れタオルを乗せている。タオルから湯気が立ってそうだ。 高出力な分、熱には弱いのか、、
「風~、風~、、、」
レオルが板でパタパタ扇いでやっている。
「ひなこ、だいじょうぶ~?」
ルルが額の濡れタオルを交換する。
「うう、いつもいつも済まないねぇ、おまい達、、」
……時代劇の『お父っつあん』に成り切っとるな、、
やがて川にたどり着き、一行は橋のたもとで休憩を取ることにした。
「暑い~風~、風~、、」
ヒナコがまだうだっている。
「しようがないなぁ、ヒナコ、水かぶってから俺の後ろに乗れ。」
騎馬で近づき、後ろに乗るように言う。
「え? マジで☆! ダーリンとタンデム?!」
がば、と起き上がるヒナコ。
「あんまり動くな、ほら、水かぶってから乗れ。」
「うん! わかった!」
ざばっ! と水をかぶって、ヒナコが後ろに乗る。
「しっかりつかまってろよ。」
「うん!!」
「はっ!!」馬に鞭を入れ、走り出す。
ドカカッ、ドカカッ!
背中にヒナコの熱を感じる、本当に熱いな、こいつ、、
「風、気持ちい~☆」
「どうだ? 少しは楽になったか?」
「うん! ありがとう、ダーリン☆!」
風を受けて、水が蒸発する気化熱で冷えてだいぶ楽になったみたいだ。
休憩しているみんなのところへ戻ると、、
う、、アユミがジト目で見てくる。
「メシ食ったら、順番で乗せてやるから、 ほら、しっかり食え。」
「「「はいっ!!」」」
現金なやつらだ、、
メシを食ってから順番に1人ずつ馬に乗せてやる、最後はレオルの番だ。
「え? 俺も? いいのか師匠?」
「ああもちろんだ、レオル、遠慮すんな。」
レオルを後ろに乗せて駆け出す。少し走ったところで、
「師匠、、あの、、乗馬、教えて、下さい。」
レオルが俺の背中でやけにおとなしくしていると思ったら、乗馬を教えて欲しいとお願いする機会を伺っていたようだ。
「おう、もちろんいいぞ! よっと、」
馬を止め、上半身を右へひねって後ろを向き、レオルの両脇に手を入れ、抱き上げてそのまま前に戻る、レオルをくるっと回して前を向かせて俺の前に座らせる。
「ほら、手綱だ、握ってみろ。無闇に扱うなよ、馬の気持ちを感じるつもりで持つんだ」
「う、うん、、」
「いいぞ、うまいうまい、楽にして、馬に任せるんだ。」
「なあ、師匠、、」
「何だ?」
「師匠は何で俺たちにこんなに優しくしてくれるんだ? 俺たちの親父は呑んだくれで、酔っ払ってはお袋や俺やルルを蹴っていたし、俺の知っている大人は俺たちに辛く当たる人たちばっかりだったのに、、
師匠は俺の親戚でもないし、獣人でもないのに、、」
「ふっ、 はっはっは、何だ、そんな事で悩んでたのか?」
「何だよ、、そんなに笑うことかよ、、」
馬に乗ったまま、後ろからレオルを抱きしめてやる。
「ばか、お前らが可愛いからに決まってんだろ。」
「か、かわいい? おれが?」
「ああ、可愛いさ、可愛いに決まってる!
俺が守ってやんなきゃ生きていけなかった子供達が、俺のことを師匠、師匠って慕って付いてきてくれて、教えたことぐんぐん吸収して、どんどん成長していく、こんな可愛い奴らが他にいるか!」
「師匠、、、、」
「レオル、お前なぁ、、、
お兄ちゃんらしくあろうとするのは立派だが、俺の前ではあんまり我慢するな。みんなみたいに、もっとわがまま言っていいんだぞ。」
「う、うん。わかったよ。」
「よし、わかったら、、ほらもっと笑え!」
後ろからレオルをくすぐる。
「うひゃ、ひゃはは、ちょ、ししょ! うひゃはは!」
「はっはっは!」
久しぶりにレオルの楽しそうな顔を見れて満足だ、まだ我慢なんかする年じゃ無いのだからな。
「よし、みんなのところまで行こうか!」
「はい! 師匠!」
手綱を操ってみんなのところへ戻るレオル、俺は後ろでのんびり座っているだけ。
「!! レ、レオルあんたいつの間に乗馬を!」
「へへー、師匠に教えてもらった。いいだろシェリー、」
「フ、フミオ様、ズルイですぅー、私もー」
「はっはっは、今日のところはレオルの勝ちだ。シェリーはまた今度な。」
「ううー、、」
お昼休憩が終わって一行は北へ向けて出発した。
レオルには予備として連れて来ていた馬を与え、馬車の後ろを俺と一緒に並んで進む。ルルはレオルの馬に乗ったり、俺の方に飛び移ったりして遊んでいる。
ルルが俺の背中にしがみついていた時に、ピク、と小さく反応し急に大人しくなった。
「ししょー、、」
「ああ、総員警戒!!」
俺より先に気づくとは、ルルもなかなかだ、
敵は隠蔽系のスキルを持っているのか、アユミや俺の網にも引っかからなかったが、、殺気は誤魔化せんぞ!!
「ちぃ! バレちゃしょうがないね!」
右の木の上から、数人の盗賊たちが襲いかかって来た! ほとんど獣人ばかりの盗賊だ。
ガギン! ギン! ギギン!
木々の間を剣戟の音が鳴り響く!
「ちぃ、硬い! 手練れの集団か?!」
女の獣人が叫ぶ、ヒョウ柄の若い獣人だ。
「あねさん! こいつら手強い!」
「しっかりおし!! 引くんじゃないよ!」
「そんなこと言っても、グァ!!」
俺の弟子に切られる盗賊、なめるなよ、俺の弟子どもが盗賊ふぜいに負けるかよ。
「ちぃ! 引け、引け! あたいが殿やる!」
「逃すか! あっ、くっ!」
何?! 弟子の1人が切られた? 深くはなさそうだが、、やってくれる!!
「おい! 俺が相手してやる!」
俺は馬を降りてフィオナを抜刀し、女盗賊の前に立ち塞がった。




