101. 首都陥落 (地図画像あり)
※文中に残酷な表現が入っています、ご注意ください。
ベアダイン首都、ベアディアは陥落した。
城の主要な場所は制圧し、塔の上の旗をすべて下ろさせる。
城内では国の重職に関わっているとおぼしき者たちが、小部屋や会議室にいまだにこもり続けていた。
俺は城内のエントランスの真ん中で、『龍気』を込めた声で叫ぶ。
「降伏しろ! 城内は制圧した! 国を憂うるなら、、、この俺、ヤマナとの会談の席に着け!!!」
声はドアや壁を貫き、城内の全員の耳に響き渡る。
「…………」 ガチャ、、、、ガチャ、ガチャ、、
ドアノブが回され、部屋からベアダインの兵や高官たちが出てくる。
「トウセ ジウマは死んだ、降伏したものには剣をふるいはしない。」
「「「!!」」」
「俺はここに来るまで、やせ細った町の人々を見てきた。ベアダインでは毎年多くの餓死者が出ていることも聞いた。この中に、ベアダインの民は幸せだと思うものはいるか? トウセ ジウマの治世こそあるべき姿だと思うものはいるか?!!」
「……いません、この中には、、誰一人、いません、」
勲章をつけたベアダインの高官らしき者が答える。
「……なら、なんでお前たちは今まで放っていたのだ! 民から吸い上げたもので自分たちがいい暮らしができたからか!」
「……いいえ、止められなかった我々に罪があることは分かっております! ですが、ですが誰一人、逆らえなかったのです!」
「ジウマ様は恐ろしい方でした、、 本当に、、本当に死んだのですか? 生きていたら、、、 恐ろしい、今度は何をしてくるのか、、、」
今度は文官らしきものが話す。
「そいつ、強いのか?」
トモナリが聞く。
「い、いえ、、ですがなぜか誰も逆らえないんです、、ジウマ様が命令すると、人々は熱狂し、兵は炎の中にも飛び込み、執行者は処刑を行うのです。異常だと分かっていても、逆らえないんです!」
……独裁者のスキルによるものか、、
「さっきも言った通り、トウセ ジウマは死んだ。これから確かめに行く、ついてこい。」
「「は、はい、、」」
俺は兵達とベアダインの高官を連れ、アユミに教えてもらった地点へ向かった。
城の南門をでて草原の中の道を南へと進む。
やがて、土埃の匂いに混じって、生臭い匂いがしてきた。
「「「!!」」」
現地についた一同が凍り付く!
頭だの足だのが飛び散った馬、深く掘り返された土、そして人らしき破片の数々、、
すでに集まってきていたカラスを、兵たちが追い払う。
そりゃあなぁ、、20ミリバルカンを生身で受けたらこうなるだろうに、、
「おい、探せ、腕でも、服でも指輪でも、身に着けていたものでも、トウセ ジウマを探せ、
お前たちにしかわからん。」
ベアダインの高官たちに向かって命令する。
「は、はい、、、ひぃっ!!」
びくびくしながら体のパーツを確かめていく高官たち、、
「ひっ、ひぃぃぃ!! い、いいい、いました!!」
奴は、、トウセ ジウマは意外とわかりやすい形で残っていた。
肘までの左手と両肩、そしてそこに頭がそのままくっついて残っていた。
黒い詰襟の服は、胸から下の部分がボロ雑巾のようにビリビリになってぶら下がっていた。
トウセ ジウマだけは胸に勲章などを一切付けていない、勲章を贈る側だからだな、間違いなさそうだ。
「間違いないのだな、」
「は、、は、、はい、、間違いありません。」
「そうか、、ちょっと離れていろ。」
ヒュッ
首を斬り、頭だけがゴロリと転がる。
「「ひぃぃ!」」
……いちいち五月蠅いな、こいつら、、
布で顔の泥を落としてやり、驚いたような状態で固まっている顔を少しほぐし、目を閉じさせ、安らかな顔にしてやる。
それを桶に入れ、上から布で包む。
「よし、戻るぞ。」
「「ハハッ!!」」
トウセ ジウマの首を持って、ベアディア城へと戻った。
「この中にいる軍部のもので一番上の者は?」
「はい、私です。」
細面で身長の高い、いかにも軍人といった格好の者が敬礼して答える。
「まずは軍を呼び戻させろ、そして治安維持の目的以上の兵力は武装解除しろ。」
「し、しかし帝国や周辺の国々が、、」
「ああ、他国の軍は俺が押さえてやるから大丈夫だ。帝国は友好国だから俺の居るところには攻め込んでこないよ。」
「……では、アルストア大陸軍の話は本当だったのですね。」
「なに? 大陸軍?」
「ご存じないのですか? 帝国のフリード殿下を大将とした軍がベアダインに向け南下していることを。」
「ああ、知っているよ、俺の援護のために、ベアダインの北側で軍事演習やる話になっているんだが。」
「では、その軍の呼称や参加国はご存じですか?」
「いや、そこまでは知らないが、、帝国以外も出てきているのか?」
「演習の名目は『大神官ヤマナ率いるアルストア大陸軍 合同演習』
このベアダインを除く、大陸全土の国々が参加しているようです。兵力は10万、先鋒は勇者ユウキ率いる3万の精鋭です。現在すでにここから2日ほどの距離の国境まで迫っております。」
「は?」
絶句した、、人をダシに無茶苦茶やってくれるな、フリード殿下、、
しかも、殿下のヤロウ、俺が『大神官』の職業を持っていることを、大陸中に言いふらしやがった、、
「もっとも、帝国とガルスト以外は、ほとんど兵は参加しておらず、軍事交流で帝都に派遣されていた各国の武官を誘っているようですが、、どちらにしてももうこの国も、国民も終わりです、、大陸全土の国々を敵に回して、生き残れるわけがない、、」
「……おい、なんで終わりなんだ?」
「え? ヤマナ様と大陸全土を敵に回して敗北し、あとは国土と民を蹂躙されるだけでは、、、」
「だーかーら、誰がその蹂躙をやるんだ? 俺が止めてやるって言っているのに。」
「!! 敗戦国から何も取らないので!」
「ああ、もう、、俺の話の順番が悪かった!
俺がベアダインで、まずやろうとしていることから話してやる!
1.軍の武装解除!
過剰な軍備で国民をこれ以上苦しめるな! 兵を家に帰してやれ! 軍なぞに入れずに家族のために働いてもらえ!
2.国民への食糧配給!
今回の軍事行動で、一粒の麦もなくなった村もあると聞いたぞ、ふざけんな! 国民を守るための軍備で国民を殺すんじゃねぇ! 足りない分は俺が周りに頭を下げてもらってくるから、今すぐ末端の村々まで食糧事情調べて、国の食糧庫から飯を配ってやれ!!
3.政治犯の釈放!
どうせほとんど無罪だろ! 何千人もいると聞いたぞ! 殺人や傷害や詐欺などの明らかな犯罪者は除いて、政治思想関連の犯罪者は出してやれ! 処刑したものは帰ってこないが、、残された家族への救済を忘れるなよ。
俺は勝ったからと言って、飢えたベアダインの民から麦一粒取り上げるつもりはない! なんか文句あっか?!」
「「い、いえ、ありません! ありがとうございますヤマナ様!」」
「わかったら、武官、文官は1.2.3.に分かれてすぐ取り掛かれ!」
「「「ははっ! ヤマナ様!!」」」
「ああ、あと、、この混乱に乗じて私腹を肥やしたり、領地を広げようとする者のところにはヤマナが直々に駆けつけるという噂も撒いておけ。」
「「「!! は、はいっ!」」」
「あと、ベアディアの市長というか、責任者はいるか?」
「は、はい、私です。」
まるまると太った立派な燕尾服を着た男だ。
「……おまえ、、市民がやせ細っているのに、なんだその腹は!」
「ひぃぃ! すみません!」
「まあいい、、お前が出ると市民の怒りの的になる、殺されても面倒だ、お前は城に居ろ。その代りお前の使っている市の職員を呼べ、」
「は、はい!」
集められた市の職員たち20名ほど、みんな一様にビクビクしている。
「あー、そんなに怯えんでくれ、俺はフミオ ゼン ヤマナだ。」
「ひぃぃいい! 竜殺し!」「人を雷で焼いて喰うあのヤマナ!!」「お、おたす、け、ガクッ、、」
みんな腰を抜かしてその場にへたり込む、中には泡を吹いて気絶するものまでいた、、
「……俺ってそんなに怖いか?」 子供たちに聞いてみる。
「師匠、基本は優しいけど、戦場ではオニだからなぁ、、」とレオル
「ししょーが戦うと雷でコンガリいいにおいがするのー」とルル
「フミオ師匠はかっこいいです!! 特に敵戦艦を素手の一撃で破壊したときなんて最高でした! あぁん!」とシェリー
「敵兵を、ゴミクズのように蹴散らすフミオさま、ステキです!」とアユミ
うん、レオルが一番まともなコメントかな?
ルル、おれ食べてないからね、変な噂あるみたいだけど。
シェリー、相変わらず派手なの好きだね、あと変な声やめようね、、
アユミ、、ゴミクズって、、俺なのか、俺の言動が悪いのか?
がっくりうなだれる俺、マジでorzな気分だ、、
「あーー スマンが取って食ったりしないから聞いてくれ、船に多めに食料を持ってきた。これから港で炊き出しをしたいから、お椀やコップを持って集まるよう市民に呼び掛けてくれ。」
「「!! た、炊き出しですか!」」
「ああ、もちろんベアディアの軍用備蓄も使わせてもらい、港以外でも炊き出しを行う。この都市の人口はどれぐらいだ? 3万ほどと聞いたが。数日間はやってもらうぞ。」
「男たちは戦いに行っているため、今は2万人ほどです、、」
「そうか、 おい、ジョバス! この人たちと炊き出しの計画をたてろ! 『グランデルハルト』と『キングリカード』に多めに食料積んであるから炊き出しの分はそこから出せ。場所は2~30か所ぐらいでやればいいだろ。」
「はっ!! 領主閣下!」
こうしてその日の夕方、ベアディア市内のあちこちで、炊き出しの湯気が昇り、市民は温かい食事を取ることができた。
今日の所は一旦『クィーンテレシア』に戻り、一泊する。
『クィーンテレシア』と『ゼノラウトⅧ』は、夜襲警戒のために沖に停泊させている。
船の間の連絡は、最近部下にした元漁師のナギが小舟でやってくれている。
翌朝、
「よし! 北方遠征部隊、出発!!」
「「「ははっ!!」」」
俺はベアダインの武官を含んだ100名ほどの北方遠征部隊を編成し、ベアディアから帝国方面へと出発した。
もちろん、ふざけた名前の軍隊を見に行くために、だ。




