99. 電撃作戦
論功行賞から約1週間後、俺は海の上にいた。ベアダインから拿捕した大型船四隻の軍事演習だ。
「どうだ? 船長、船の様子は?」
「凄いですね、この船。大きいのに早く、小回りもきく、安定感も抜群、船乗りとしては、本当に夢のような船です!」
「そうか、ベアダインの首都までは何日で行ける?」
「この大型船のみであれば3日で行けますね。ベアダイン軍は、風に逆らって北上したのと、中型船に合わせてゆっくり進軍したようですが。
海図も残されていましたし、本当に至れりつくせりですよ!」
「よし、では行けるな! ヒナコ、ハルバルトに伝令を頼む! 1万5千で進軍を開始しろと!」
「わかった! ダーリン☆ あれやって!」
「よし、やろう!
イーグルワン!
出撃スタンバイせよ!」
ヒナコ用に作った甲板左舷の長細い滑走路の一番後ろにヒナコが戦闘機形態に変身してスタンバイする。
ヒュィィイイイイイイイイイイイ、、
甲高いエンジン音が鳴り始めた。
「イーグルワン!
出撃スタンバイ完了☆」
「オールグリーン!
イーグルワン、
発進を許可します。」
「ヒナコ ゼン ヤマナ!
イーグルワン!
いっきまーーす☆!!」
ヒュッ、ゴォォォォオオ!!!
「あいつ、ドサクサに紛れて、、、全く。」
ヒナコを笑って見送る。
「よし、一旦帰港しろ、物資を積み込み次第、南下する!!」
「「ははっ!!」」
「さて、一番艦、二番艦じゃカッコがつかんしな、、、艦名つけなきゃな。アユミはなにがいい?」
「え? ええと、、グレートフミオとか、サンダーヤマナとか、、」
「……却下だな、まあ今ので一つは決まった、クィーンテレシアだな。」
王都にて、
「くしゅっ!」
「おお、テレシア、バルコニーは寒かったかい?」
「は、はい、陛下すみません、いきなりくしゃみが出まして、、」
「ここは風が当たる、中へ入ろうか。」
「はい、陛下。」
(なんだったのかしら、、今の感じ。。)
再び船上、
「フミオさま、風が気持ちいいですね〜」
「ああ、そうだな。」
「あの〜、映画で見た手を広げるの、、やって見たいんですけど、、」
「ん? ああ、あれか! よし、船首へ行くか!」
「はい!!」
(やりぃ! エリスさん、ヒナコさん、ごめんなさーい、一度やって見たかったのー。)
「ほら、」
アユミの脇を抱えて、船首に上げてやる。身長差があるので、俺は一段低い甲板に立ったままだ。
そして両手を伸ばしてアユミの後ろから腰を支えてやる。アユミは前に重心を傾けて、両手を大きく広げる。
「わぁ〜!!」
声を上げるアユミ。見ると涙をこぼしている。
「す、すみません、フミオさま、嬉しくって、、入院中、ずっとこういう事憧れていて、、
死んでから夢が叶うって変な感じです。」
「そうか、、」
存分に楽しんだ後、アユミを船首から抱えて下ろしてやり頭を撫でる。
ふと上を見ると、、レオルとルルとシェリーがマストをジャングルジムにして飛び回って遊んでいた。あいつら、身体能力すごいな、、
まあ、船上戦闘の練習と思えばいいか、、
王都東部に簡易で作った海軍基地に着く。
「1ヶ月分の水と食料、物資を積み込め! 後は馬と選抜隊千名は一番隊から四番隊に分かれ、一番艦から四番艦にそれぞれ乗船しろ!
急げ! 明日早朝、夜明けとともに出航する!!」
「「ははっ!!」」
「一番艦、クィーンテレシア、出航準備完了!!」
「二番艦、ゼノラウトⅧ(エイト)、出航準備完了!!」
「三番館、グランデルハルト、出航準備完了!!」
「四番艦、キングリカード、出航準備完了!!」
「よし!! 連合艦隊! 発進!!」
「「「オォォオオオーー!!」」」
ゼノラウトの海軍基地を出て3日目の朝、艦橋の作戦室で艦長と話す。
「どうだ? 予定通りいけそうか?」
「はい! 極めて順調です! 予定通り、本日昼間にベアダイン首都、ベアディアに接舷できます!!」
「よし、堂々と接舷して作戦を遂行しよう。」
「ははっ!!」
太陽が天頂にさしかかる頃、
「敵襲、敵襲ー!!」
首都ベアディアの港は蜂の巣を突いたような騒ぎになっていた。
一本の長い大桟橋を、左右から挟むように、右から一番艦、二番艦、左から三番艦、四番艦が接舷する!
船から身軽なテリクス兵とガリア獣人部隊、ヤマナとトモナリ、弟子たちの一団が駆け下りてきて、素早く桟橋を制圧した。そしてグドルト率いるドワーフ部隊が桟橋の付け根に半円状に陣を張り、橋頭保を築いた!!
「急報!!」
「今度は何だ!」
声を荒げるトウセ ジウマ。
「わが国の大型船を使って、、ゼノラウト軍が港に現れました!!」
「何だと!!」
城の奥から出てきて塔に登り、窓に駆け寄るトウセ ジウマ。
眼下を見下ろすとそこには、、大桟橋を挟むようにして停泊している四隻の大型船と、港の守備兵を蹴散らして橋頭堡を築くゼノラウト軍の姿があった。
「くっ! 北のガリアから進軍してくる1万強の軍勢は囮か!!
戦力を割いて、半分となった今の首都防衛隊5千で止められるか?」
窓の上から見ていると、、船から降りて来たゼノラウト軍はわずか千余り、だが、、とんでもなく強い!!
ベアダイン兵がバタバタ倒れていくのに対し、、ゼノラウト兵は誰1人倒れない!!
ドワーフ部隊の壁もベアダイン兵を全く寄せ付けない!
「くっ、戦闘経験の差か? だがあんな少数で首都制圧などできるものか!
いや待てよ??
まさか!!
出来ないとしたら、いや最初から首都制圧が狙いでないとしたら、、」
トウセ ジウマの背中を冷たい汗が流れ落ちる。
「あ、ああ、、
狙いは、、
私の首か!!」
「フミオさま! 見つけました!
名前も『トウセ ジウマ!!』
職業は『独裁者!!』
間違いありません!!
『一枚乃栞!!』
あの塔の、上から二番目の窓からこちらを見ています!!」
『盤面掌握』で索敵をしていたアユミが栞を投げて叫ぶ!
『盤面掌握』に『歩 成 金』、『力読み』、『一枚乃栞』とアユミも能力全開状態だ!
レオルとルル、シェリーは、自身は無防備であるアユミを囲むように守っている。
「そうか、良くやった、アユミ!」
そう言って俺は、白く輝くフィオナを天に掲げて煌めかせた後、
スーッと傾け、殺気と共に奴に向かって真っ直ぐに突きつけた。




