仕事承ります
「それで今日は気が向いたので何か仕事をください」
「風向きでたまたま帰って来たついででしょう」
「建前は苦手です」
「嘘おっしゃい!」
「お嬢」
俺とギルマスが話していると後からおっさんが歩いて来た。
「トビーさんこんにちは」
このおっさんはトビーさんというこのギルドの先代時代から籍を置く古参の請負人だ。総合ランクは4に近い3。このギルドがもっているのはこの人のおかげだろう。筆頭の顔役でもある。
「そのリトの発言はテキトーに流すべきだ、真面目に相手してたら収拾がつかん」
「トビーさん。ですがリトさんもうちの顔役の一人ですし」
トビーにライツにリト。この三人がこのギルドの顔役だ。
もっとも、顔役って言う役職は無く慣習的にそう呼ばれる者がいるだけだが、そう呼ばれる者達はギルド合同の依頼や、新人教育などを任されることが多い者だ。
俺は三人の中では下っ端だが、上空からの偵察という特殊技能を有しているため合同依頼にはたまに呼ばれ、他のギルドにそこそこ顔が売れているため顔役に抜擢されている。
「トビーさんおはようございます。ええそうですよね、流してくれないからつけあがるんですよ。まったく」
「お前の事だ!!」「あなたの事でしょ!!」
「あれぇ?そうでしたっけ。それで何か仕事はありますか?なければちょっと外に出掛けますが」
「待ちなさい!あなたのちょっとは週単位で帰って来ないでしょ。今からあなた向けの依頼を見繕うわ」
「いや、オイラのためなんかにわざわざ仕事を見繕って貰わなくてもいいです、分かってますよ、オイラなんか必要じゃないってことを。なぁポクー、帰ろうか」
結構めんどそうな依頼を見繕われされそうだったので踵を返すと、トビーさんに掴まった。
「まあ若いの、そう急ぐもんじゃない。ちーと待っとればお主に合う仕事も見つかるじゃろう。ほれこれなんかどうじゃ」
「えーと・・・・ワイバーンウォッチング依頼。
同好の士よ来れ。ボーグ山脈のワイバーンを観察して楽しもうじゃないか。対象ランクフリー。ただ討伐ランク3以上じゃないと死ぬかもね、ははは」
「どうじゃ、中々の依頼だと思うんじゃが。道楽系の依頼じゃが報酬はかなり良いぞ。同好の士という者は中々逢えんから依頼人も奮発してるのぅ」
「羽根つきトカゲかぁ、依頼人と趣味が合いませんし駄目ですね」
「・・・そこは真面目に返すのか」
「当たり前でしょう。ウォッチング依頼なんてレアな依頼、趣味さえ合えば受けないなんて非常識な対応は出来ないでしょうが!」
まったく何を言ってるんだか。
「はい、リトさん。この三つがオススメの依頼です」
「あ、どうも。ええっと・・・・合同依頼・・・ふむふむ・・・合同依頼・・・ふむふむ・・・・指名依頼・・・・・・・・・・えらく偏ってません」
「はい。あなたに求められているのが合同依頼の敵情偵察か貢献依頼ばかりですから」
「恐るべし俺」
「全てポクーちゃんのおかげですね」
「ええっ!そうなの」
「ええ、ポクーちゃんは無音で移動できるので偵察にはうってつけです」
「はぁ、オイラもずいぶんポクーに差をつけられちゃったな。明日・・・来年・・・・いつか真面目に仕事しよう」
「今からお願いします!」
「えぇ、・・さてどの依頼にしようかな」
「あっ、受けてくれるんですね。でしたらまずこの指名依頼を終えた後この合同依頼を受けるプランが最もお薦めです」
「いきなり二つもぶっこむとはこの鬼畜ギルドマスターめ、畜マスとこれから呼ぶぞ」
「あなたは私が居ない時に報告に来てそのまま消えるでしょう。だからです」
「たまたま畜マスが外出している隙に報告しているだけですが?」
「隙!隙って完全に狙ってやってるじゃないですか。それに畜マスは止めてください!」
「お嬢!」
「こほん。・・・・リトさん、先程のプランでどうでしょう?失敗の可能性が低いこの指名依頼と、今度【エジンバギルド】が主催で行われるこの合同依頼」
「指名依頼の内容は分かりますが、この依頼主であるメイヤーさんは聞いたことが無いんですが誰の紹介ですか?」
「モルツ絵画工房のモルツさんです」
「なるほど。・・・・この指名依頼は受けます。そのあとの合同依頼は保留で」
「はい、承ります。指名依頼は受注、合同依頼は前向きに検討っと」
「うん?どこかで改竄が行われた気がする」
「何を意味の分からないことを言ってるんですか?指名依頼ですが、あなたがふらふらしているので開始の日時は決まっていません。ですからうちのコに交渉してきてもらいますからしばらく待っていてください」
「あら優しい。何時もは自分で日時を、とか言うのに」
「あなたに任せたらこっちの合同依頼の日に被せるでしょうが」
「スケジュール調整は得意です」
「知ってます!」