お揃いのキーホルダー
「ねえ涼香、見て見て!これ、すごく可愛くない!?」
休日のショッピングモール。雑貨屋の棚前で、玲が嬉しそうに手招きをしてきた。
玲が掲げていたのは、ガラス細工で出来た小さな星型のキーホルダーだった。青とピンクの二色展開で、光に透かすと綺麗なグラデーションが浮かび上がるようになっている。
「……あー、うん。綺麗だね」
「でしょ!青が涼香で、ピンクが私。お揃いで買おうよ!可愛い。」
『お揃い』その一言に、私の心臓が大きく跳ね上がった。
指先が少し熱くなる。
玲とお揃いのものを持ち歩くなんて、私にとってはまるで「ペアリング」でも買うかのような、特別で、重くて、愛おしい出来事だ。玲の日常に自分の存在を刻み込めるような気がして、胸の奥がじんわりと甘い熱で満たされていく。
「……うん、買おう。私が玲の分も払うよ」
「えっ、いや申し訳ないよ」
「ううん、これくらいだったら。いつものお礼。」
「本当に!?やったぁ、ありがとう涼香!」
飛びついて喜ぶ玲の姿に、私は必死で口元の緩みを抑えながら、大切に青とピンクのキーホルダーをレジへ持っていった。
……だが、その甘い錯覚は、翌日の勤務開始直後にあっさりと砕け散ることになる。
「あ、百合さん!見てください、これ!」
出勤するなり、バックヤードで百合さんを見つけた玲は、昨日買ったばかりのピンクのキーホルダーを嬉しそうに見せびらかしていた。
「昨日ね、涼香と買い物に行った時に買ってもらったんです!お揃いなんですよ〜!」
「⋯とても素敵ですね。涼香さんとお揃いなんて、仲が良くて羨ましい。」
「ふふ、でしょ!涼香ってたまにすごく太っ腹なんですよね。大事に使おうっと!」
通りかかった他のスタッフにも「見て見て、涼香とお揃いなの!」と無邪気に誇らしげに見せている玲。
そこに「二人だけの秘密の特別感」なんて1ミリも存在しなかった。
玲にとってのお揃いは、「仲良しの友達とお揃いのグッズを買って楽しかった思い出」でしかなくて、クラスの友達と交換日記をするくらいの軽い感覚なのだ。
(……分かってたけどさぁ)
ロッカーの陰で、自分のバッグに付けた青いキーホルダーをそっと握りしめる。
私にとっては宝物みたいに重たい「お揃い」が、玲にとってはただの「友達との思い出の品」。
嬉しそうに笑う玲の声を背中に聞きながら、私は一人、静かに頭を抱えて撃沈するしかなかった。




