第95話 過ち込みの判断
幼女は嫌いじゃないです。2次元に限りですが。
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「クソ......」
大輝はあのアリジゴクから少し離れた巨大な骨の下へとやってくると思わず愚痴を吐いた。そして、ふと自分の足元を見てみればおそらくセレネであろう少女が自身の足にしがみついている。そのことに悲しい目を向けてしまう。
「これはどうすべきかしら......」
「とりあえず、セレネをあの国に置いていくか?」
「止めた方が良いと思うな~。それは余計な不安を与えかねないからね~」
「とはいえ、連れて行くわけにもいかないよね。ん~」
全員がこのことに頭をひねる。それは茉莉とエミュが言った言葉は全員がわかるものだったからこそ。災悪との戦闘は基本的に大きくなることが多い。だからこそ、その場に連れて行けば危険にさらすことはきっと間違いない。しかし、なら一度セレネを置いて態勢をを整えようとはいかないだろう。
あの国では子供になるこの現象で多くの人が苦しんでいる。その中で勇者である俺達が同じ目に会ってしまいましたとは、さすがに不味いであろう。それは体裁ということもなくはないが、それ以上に勇者でもどうしようもない相手だと思わせてしまうことがなによりやってはいけないことだと感じる。
その行為は俺達の存在という希望を与えながら、災悪に勇者でも勝てないという絶望を与えることになる。そうなれば.......あの国はどうなってしまうのか。想像は難しくはないだろう。
大輝は若干イラ立ちを込めたため息を吐いた。そのイラ立ちは自分に対して。なぜセレネが結界内にいなかったことに気づかなかったのか。そのことに自分の愚かさに腹が立って仕方がない。するとセレネは無言のまま大輝のズボンを引っ張った。
「どうした?」
「......」
大輝は先ほどのイラ立った顔を隠すとセレネに話しかける。だが、セレネは大輝の目をジッと見つめてまま答える様子がない。ただ、セレネの様子は落ち着いたものであった。もしかしたら、俺達が誰であるのかは認識して、安心しているのかもしれない。
するとエミュが話しかける。
「セレネちゃん、少しお留守番できる?」
「......」
セレネはエミュの存在に気づくと大輝の後ろへと隠れた。そして、そこからちょこっと顔を出すとフルフルと頭を横に振る。どうやら認識は出来ていなかったらしい。それにエミュ以外の存在に気づくとますます大輝を隠れ蓑にするように、大輝の後ろへと自身を隠した。そして、そこからチラッチラッと周りの様子を伺っている。
大輝は思わず笑みが出た。それはなんだか子供の頃のセレネを見ているようであったから。「昔はこんなにも人見知りだったんだな」と思うと今度はいつ頃からあんなにつっけんどんな性格になったのか非常に気になるところ。だが、それは今ではないだろう。
「俺からもお願いする。少し寂しい思いをさせるかもしれないが、それが一番セレネを安全でいさせることが出来るんだ。だから、出来るならそうしてくれるとこっちもありがたい」
「......」
セレネは大輝の言葉が伝わったのか少し考える様子をしながらも、頭を横に振った。そして、どこにもいかないでとばかりに大輝のズボンにしがみつく。大輝はそのことに若干の可愛らしさを感じながらも、同時に困惑の顔を浮かべた。これはどうすべきなのか......。
「随分と懐かれているみたいね」
「みたいだな。だが香蓮、このままじゃいけないことはわかっているだろう?災悪との戦闘は死と隣り合わせ。最低でも自分の力で自分を護れるぐらいじゃないとな」
「優しいね、大ちゃんは」
エミュは大輝の言葉選びに大輝の人柄の良さが出ているような気がして思わず笑みがこぼれた。なぜなら大輝の最後の言葉は酷く端的に言うならば「役立たず」ということなのだから。戦闘も出来ずに死となり合わせの状況で、自分を護ることも出来ず護られっぱなしならそれはそういう言葉を言われても仕方ないはず。だが、大輝はその言葉を使わなかった。そのことにエミュは嬉しくなった。
すると俊哉が大輝の言葉に反論した。
「良い雰囲気に水を差して悪いんだがよ。その言葉だとセレネを連れて行くって流れになるよな?それこそ危険なんじゃねぇか?いくら自分の身を自分で護れようとも、子供の姿であることには変わりない。それだと俺達の戦闘に支障が出かねない」
「......まあ、そうだよな」
大輝は俊哉の意見にも納得の顔を示した。俊哉が言いたいことは簡単に言えば、戦闘に集中できないということ。それは災悪にとってはあまりに危険。ただでさえこれまで四度の戦闘で余裕を持って戦えたことなんてまるでない。常にギリギリ一歩足を前に出せて勝っているような感じだ。逆に言えば、今がこうなのだから当然、舐めてかかれば死ぬのはこっち。舐めていなくても危険だというのに。
だからこそ、わからない。こうしている間にももしかしたらまた何人かが、子供にされているかもしれない。その焦りと不安が判断を鈍らせる。......俺はどうすればいい。国に住む人達を不安にさせてでもセレネを置いていくべきか。それとも危険は承知で連れて行くべきか。
すると大輝はふと全員が自分を見ていることに気が付いた。自分の答えを待っているのかと思ったが、その五人の目はどこか自分の視線に向けれれてはいなかったような気がした。そしてその時、大輝は視界の端で黒い何かを捉えた。それから、その方向を向くと......
「痛たぁ!」
不意に額に痛みが走った。大輝はすぐに額を手で押さえ、ゆっくりとその方向に目を向けると目の前にあったのは黒い手であった。そして、大輝はその黒い手が伸びている先を追って行くとそれは自身の足元の陰から出て来ていた。こんなことが出来るのはセレネしかいない。
大輝はセレネの方向を見るとセレネはまるで「これで問題ないでしょ?」と伝えているような顔をしている。そして、再び大輝に離れまいとしがみついた。そのことに大輝は思わずため息を吐きながらも、少し嬉しそうにセレネの頭を撫でた。その行為にセレネは目を細める。
「わがままでごめん、俺には一人にすることが出来そうにない。きっとこの選択は間違っているとわかっているが、それでも俺はセレネの意思を出来る限り尊重してやりたいと思っている。だから、俺は連れて行きたいと思っている」
大輝はセレネの頭から手を離すと深く頭を下げた。セレネの存在は災悪に対して自らハンデを背負って戦いに挑もうとしているのと同じこと。それは今までギリギリで競り勝ってきた差を捨てているということだ。ただでさえ災悪と戦って勝つ勝率はあまり高くない。なんとか無事に四勝できているだけ。その勝率を自ら下げる行為。その判断に影響を受けるのはなに自分達だけではない。
負けてしまえば、砂漠の国にひいては世界中の国にも影響を与え、女神様にも甚大である。愚かな判断。そう罵られてもなんらおかしくない自分の発言。しかし、全員はそれに対して答え始めた。
「はあ、仕方ねぇな。まあ、そうなると思っていたし」
「逆に言えば、その判断をしないと大輝らしくないわね」
「大丈夫だよ、私達がいるから」
「そうだよ~、皆がいればきっと勝てるよ~」
「キャン!」
「......ありがとな」
大輝は全員の言葉に思わず胸が熱くなった。正直、この判断は自分の一個人の意見でしかない。だから、仲間から反対されたならばすぐに判断を改める覚悟もしていた。だが、その四人と一匹の反応はその判断に対して肯定的な意見であった。だからこそ、嬉しく感じた。
大輝は感謝の言葉を述べるとセレネに目線を合わせ向き合った。そして、セレネに語りかけるように言葉を告げる。
「セレネ、ここからは本当に危険だ。だから、本来なら安全な場所に留まって欲しいと思っている。それは今も変わらない。だが、セレネは俺達とともにいたがっている、自分の魔法を使って自分を護れることを証明しながら」
「......(コクン)」
「俺はそのセレネの意思を尊重する。セレネの気持ちをしっかりと受け止める。だから、セレネは安心して俺達と一緒に来い。セレネはちゃんと守ってみせる。俺は勇者でもあるが、セレネの友でもあるからな」
「......うん」
セレネは大輝の言葉に瞳を輝かせながら、大きく頷いた。そして、子供になってから初めての言葉を口にした。だが、それでも嬉しさが止まらなかったのかセレネは大輝の首筋に抱きつく。
「好き」
「......そっか」
セレネは子供らしい笑みを浮かべながらそう言った。その言葉に大輝は一瞬驚きはしたが、すぐにそれが子供の感情故の言葉だと思ってそっとセレネの言葉を受け止めるように、セレネの頭を撫でた。しかし、心なしかセレネの抱きつく強さが少し強いような......
一方、大輝の気づかないところでエミュは嬉しそうに笑みを浮かべ、香蓮は驚いた感じで目をやや開き、俊哉はため息を吐き、茉莉は面白そうに笑っていた。それは丁度大輝からは見えていないセレネの顔がその四人には見えていたからだ。そして、その顔はというと子供らしい満面の笑みだ。だが、その笑みには子供がただ懐いて「好き」と言っているのとは違うような感情が混じっている気がするのだ。
.......いや、わかっている。あれは子供ながらちゃんと人を好きになった時の嬉しそうな顔だ。それは顔以外からもしがみつくように大輝の首に回している手からも判断できる。そして、明らかに動揺時間が長い。大輝は何度かセレネに離れるよう呼びかけ始めているが、セレネは笑顔のまま動くことがない。
そ時、四人の心のうちは一致した。それは、「もしこの感情を抱いたままもとの姿に戻ったならどうなってしまうのか」ということ。セレネはこどもの感情を抱いたまま大輝を好きになってしまうのか、それとも子供の頃の感情は忘れてしまうのか。
そんな風に思いながらエミュと茉莉は笑顔で、香蓮と俊哉は不安なため息を吐きながらそんな二人の光景を見ていた。
それから、大輝達は再びあのアリジゴクへと戻ってきた。大輝の背にはセレネがしがみつき、黒い手で大輝と自分を一つにするように固定している。これには大輝も苦笑いだったが、もうここまで来た以上背に腹はかえられない。
「行くぞ」
大輝はそう言うと自分を中心に風の結界を作り始めた。そして、その中に他の四人も入るとアリジゴクへと突入した。
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