第96話 惑い
ここ最近、2作品目が好調で嬉しいです。そうなると、そっちに力を入れたくなって、こっちがおざなりに......とそれはいけませんね。ラストまで全力で駆け抜けますよ\(゜ロ\)(/ロ゜)/
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大輝達がアリジゴクの中へ入るとそこはレンガのように整えられた石が積み重なっていて、ダンジョンのような形になっていた。今いる空間は半円状の空間で、そこから放射状にいくつもの道が伸びている。そして、その空間のある場所には何かをはめる台座のようなものがる。
「まあ、察するにあの台座にはめれば、次へと進めるようになるということだな」
「加えて、あの道に先にこの台座にはめる何かがあるって感じだな。で、どうする?手分けするか?」
大輝の言葉にキュピーンとエミュと香蓮が反応した。それはどういう風に組を分けるということだ。大輝は今セレネを背負っている(厳密には背負わされているのだが)。なら、大輝とセレネだけで行動させるのは危険であろう。ならば、最低でももう一人同行者をつけた方が良いに決まっている。
この場合で分けるなら、もちろん二、三人の組に分かれるだろう。ならば、なんとかしてでも大輝と二人っきりになりたい。こんな所でなにバカな考えをしているのかと思うだろうが、こんな時であろうともそれとこれとは話が別。それにただ二人っきりになりたい、それだけなのだ!
十分に欲深な考えが支配しているエミュと香蓮に一つの問題が訪れる。それはこの話をどう切り出すかだ。いくつも道があるので、これを全員で一つずつ攻略していくという行動はこの一つがどれだけ時間がかかるかわからない以上、得策ではないだろう。出来る限り早く災悪を討伐しなければ、子供にされたセレネやあの国の人達になにか影響が出るかもしれないし。
するとそんな考えを見透かしたようにため息を吐いた俊哉が二人に言う。
「俺は茉莉とレオがいれば十分だ。そっちは大輝がまともに動けない以上、戦力は多めにあった方が良いと思う。だから、二人は大輝の方についてくれ」
「それだよ!」
「ナイスね!」
二人は俊哉に向かって目を輝かせながらサムズアップをした。二人っきりになれなかったのは残念だが、一緒であることには変わりない。なら、これはこれで良いであろう。
そして、大輝と俊哉の二組に分かれるとそれぞれ別方向の道へと向かった。
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「あれで良かったの~?」
「良いも悪いもあれしか選択肢がないだろう?まあ、二人にじゃんけんでもさせて公平に決めるのもありだったんだが、このダンジョンには災悪が住んでいる。それに今の大輝はハンデを背負っているようなものだ。なら、あっちの人数を増やした方が良いと思っただけだ。まあ、大輝とどちらがついたとしても、二人でも問題なかったとは思うがな」
「そうだね~。それにレオちゃんをカウントすれば人数的にもピッタリになるし~」
「そういうことだ。レオは強いからな」
「ウォン!」
俊哉がそう言いながらレオを撫でるとレオ(大)は嬉しそうに目を細める。それ見て俊哉の方も少し緊張がほぐれた。
......しかし、災悪という存在は何なのだろうか。それが転移者にしか討伐できないことはわかっている。だが、それでもどうやってそれらが発生するのかが謎だ。大概の場合は魔物が強くなり過ぎてそうなるといった感じだが、大輝があの村で戦ったのは悪魔だという。なら、実は悪魔がその災悪を発生させているのではなかろうか?
この世界の悪魔とは女神に対なす存在らしい。そして、その大昔に神族に敗れこの地を去った。しかし、これを逆に捉えれば、悪魔は神と戦えるほど強いということになる。故に女神の使徒である俺達が戦うことは普通に考えられる。なので、その悪魔が作り出したのが災悪とするならば、これと戦うことは言わば必然なのだろう。......随分と今更だが、俺はとんでもない場所に来てしまったかもしれない。
すると俊哉達は一つの扉の前に出た。その扉を入るとすぐに結界が張られて出られない状況になった。ということはここをクリアしなければ出れないということなのだが......
「これは一体どう進めばいいんだ?」
「道がないね~」
俊哉達の場所から数歩進めば、その先は一寸先の闇ならぬ一寸先の奈落。道すらない大空間。そして、少し遠くに見えるは台座にはめるであろうペンダントのような宝石が。
茉莉の言った通り、道が細いでもなくそもそもない。これでは飛ぶことでしか進みようはなく。それに今この場に飛べるものがいない。加えて、戻ることも出来ない。事実上の詰み。
......いや、まだだ。まだ何かあるはずだ。このダンジョンはおそらく災悪が作り出したものではなく、昔からあったものだと思われる。それにここは人族が住む国にそれほど遠くないところにある。であれば、飛べなくても進む方法はあるはずだ。
そう思うと俊哉は精霊にこの空間一体を調べてもらった。すると精霊が四角く囲うように点々と続き始めた。
「これは......」
俊哉はそれを見て驚いた。それは精霊が囲うところに透明な板が浮いているのだ。そしてそれは、階段状になってその宝石がある所まで続いているのだ。
こういうのはゲームとか限定のやつかと思えば、どうやらこの世界にも存在するらしい。これは盲点であった。
それから、俊哉達はその階段を下りていく。そして、宝石を手に取ると景色が一変した。ガコンッと音を響かせ現れたのは何本もの凶悪なトゲをつけた岩盤。それは俊哉達を押し潰さんとゆっくりと動き始めた。
「レオちゃん、私と俊哉くんを乗せて走って〜!」
「ウォン!」
茉莉がそう叫ぶとレオ(大)は分かったように体を伏せた。せして、その上に2人が乗るとレオ(大)は勢いよく走り出す。
するとまるでその動きに合わせるようにその岩盤も動きを速めていった。そのことに思わず焦る俊哉。
「不味い、不味い、不味い!このままじゃぶつかるぞ!」
「レオちゃん、頑張って〜!」
「ウォン!!」
「任せとけぇ!」とばかりに一吠えすると透明な板に爪をひっかけてグングンと加速していく。そして、レオ(大)が入ってきた入り口を通り抜ける数秒後にその岩盤はそこへと激突した。
「はあ~、あぶねぇー。助かったー。センキューな、レオ」
「うん、レオがいなければ無理だったかもね~」
「クゥ―ン」
レオ(大)は照れたように声を出した。しかし、随分とわかれば楽だと思っていたらこんな罠が待ち伏せていたとは。ここが俺達じゃなければ、大輝の<超加速>を使っても無事に逃げ切れるかどうか。だが、あいつなら案外助かりそうだな。
「ふぅー、落ち着いてきたしそろそろ――――――――――――」
「あれ~?少し前見て~」
俊哉が立ち上がろうとすると茉莉が正面を指さした。その方向を俊哉は見てみるが、何の変哲もない三本道.......ん?数が増えている?
俊哉は思わず首を傾けた。この道は来た時は曲がることはあったが、二手に分かれることもなかった。だからこそ、帰り際には三本に分かれていることが不可思議に思った。.......この道は一本道だったはず。ということはもしかしたら攻略をしたことでダンジョン内部が変わったとか?だが、それだともっと大きな音が鳴り響くはずだ。たとえ岩盤が迫っている音が大きかろうとも。
「レオ、あの岩盤が迫ってきている時に他に何か感じたか?」
「クゥン」
レオ(大)は何もなかったかのように頭を横に振った。聖獣であるレオ(大)の感覚がそう告げているのならおそらくれは正しいのだろう。なら、これは一体どういうことなのか。俊哉は頭が痛くなるような気がした。
すると茉莉が何かをわかったかのように手を合わせるとその考えを俊哉に告げた。
「ねぇ~、もしかしたら、最初に一本道だったというのが違うんじゃないかな~?実はもともとどこかで三本の道があってそれに気づかずここまで辿り着いた感じじゃないかな~。いや、もっと言えば気づかせずにここまで辿り着かせたかったとか~」
「???」
俊哉は茉莉の言葉にはてなマークは浮かんだ。単に言っていることがわからなかった。頭が良い故に特殊な発想に至ったのか。だとしたら、自分にはわからないはずだ。すると茉莉は俊哉に説明し始めた。
「どうして『気づかせなかった』という考えに至ったかと言うとそれはあの時、砂嵐に襲われた時にせっちゃんが偽物だったということが関係していると思うの~。あれは言わば幻術~。災悪がこちらへと何かをさせるためにこういうことをさせたんだと思うんだ~。そこまではわからないけどね~」
「つまりは俺達は三本ある道を一本道だと勘違いさせられていたということか。なるほど......確かにそれだと筋は通る。だが、そうとなるとこの災悪の目的は何だったんだろうな?」
「単に分離させるためかもしれないよ~。一人ずつ仕留めていくためにね~」
「だとすると、次はどうなると予想する?」
俊哉のその言葉に茉莉は顎に指を当てながら少し考える。そして、一つの考えを思いついた。
「もしかしたら、次は私達が偽物になるかもね~」
「......それは不味いな」
俊哉は茉莉の言葉の意味がわかった。それはいつの間にか気づかずに偽物と同行しているということ。説明するならば、最初は俊哉と茉莉の本物同士がともに行動していたとして、意識を外した一瞬の間に何らかの方法で本物と偽物が入れ替わるということだ。そして、片方の本物は偽物を本物だと思い込んで行動してしまう。
それは信頼関係が深いほど陥りやすい罠とも言えるかもしれない。仲間の実力がわかっているからこそそのことに信頼を置いてあまり意識をしないようになる。だとすると、これを防ぐには......
「「合言葉」」
「だな」
「だね~」
俊哉と茉莉は同じ考えに至ったのか声を揃えていった。そして、この場で合言葉を決めるととりあえず適当に道を決めてその方向に進んでいく。
俊哉は大輝達のことを心配していた。もし自分達の考えが現実に起こりようものなら、一番引っかかりやすいのは大輝達かもしれない。だからこそ、とにかく無事で合流することを願った。
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