第138話 決着の戦い
雨の被害がないことを祈っています
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「あ"あ"あ"あ"あ"あ"!」
「汚い声だね~。上品さが微塵も感じられないよ~」
茉莉は冷ややかな目をルドレに向けると口元についてた血を手の甲で拭った。そして、ルドレに向かって弓を構える。もうこの女を野放しにしてはいけない。今この時を持って、あの女を殺す。
弓に魔力で出来た矢がつがえられる。その矢を茉莉は思いっきり引いていく。狙いは当然ルドレ。そして、茉莉が矢を放とうとしたその時、レオ(大)が突然自身の背中に茉莉を乗せるようにタックルしてきた。その事には茉莉も思わず驚く。
「レオちゃん~!?」
「ウォン!」
レオ(大)がは茉莉を担ぐとこの空間を出ていった。その行動は何かを恐れているように感じた。いや、それが何かを自分はよくわかっている。たった今さっき、自分は意図的に人を殺そうとした。その事実はだけは拭うことは出来ない。
そして、おそらくレオ(大)はルドレを殺そうとした自分を止めてくれた。あのまま行けば、一生背負い続けることになるだろう罪を背負わせまいと防いでくれた。だから、ここは感謝すべきだ。そして、今レオ(大)が向かっているのはおそらく......
そして、茉莉達がこの空間から消えていく姿をルドレは見ていた。すると、ルドレは口から大量に血を噴き出しながらも歯を食いしばって耐え、その血を使って魔法陣を描いていく。
未だに痛みが全身を駆け巡る。全身を一度剣のようなもので何度も何度も刺される感覚。それでいて、意識を失うことすら許されず。自分が死ぬギリギリまでこの苦しみを味わい続ける。いや、もう死ねるかも怪しいぐらいだ。
「なめやがって地味女ああああ!お前だけは逃がさない!この私と共に散れええええ!」
ルドレはその魔法陣に叩きつけるように手を置くと全魔力を注ぎ始めた。すると、その魔法陣は大きく広がっていき、その魔法陣から触手が現れ始めた。そして、その触手がルドレの体に絡みつくと魔法陣の中に引き吊り込んでいく。
「ははははは、死ね、死ねええええええ!」
ルドレは大声で笑いながら呪いの言葉を吐いていく。そして、ルドレの姿は消えた。
――――――――――トレント内部二階
「月島君、俊哉君は~?」
「ああ、大丈夫だ。今さっき終わった所。そして、俊哉の方は人に見せられない面になってる」
「良かった~。元に戻ったんだね~」
茉莉は大輝達のもとへとやってくるとすぐさま大輝へと声をかけた。そして、大輝から俊哉が無事であることを聞くと思わず安堵の笑みが浮かぶ。それから、俊哉の姿を見てみると俊哉は泣きっ面を隠すように腕で目元を覆っている。しかし、嗚咽交じりの声でバレバレであるが。
「そういえば、月島君の呪いは~?」
「藍野があの女を倒してくれたおかげで解けたみたいだ。そんでタイミングが悪くて、思わず俊哉の頬が腫れるぐらいまで殴っちまった」
「一発殴って目を覚まさせたから良かったんじゃない~?」
「まあ、そうだな。ほら、立て俊哉。お前の顔は誰に得があるんだ?いい加減泣き止めて、移動するぞ」
「それじゃあ、行こう~――――――――――何~!?」
大輝が俊哉を無理やり立たせると外へ出ようと移動し始めた。その瞬間、この空間が大きく揺れ始めた。すると、この空間にトレントの根のようなものが張り巡らされ始めて、次第に空間を潰し始めた。そのことに大輝達は思わず焦る。
「ここにいたら潰されるぞ!早く脱出しないと!」
大輝達はこの空間から逃げるように出ると螺旋階段を下っていく。だが、その根っこのようなものは、螺旋階段の空間をも潰し始めた。しかも、大輝達を捕らえようと追いかけて来る。
「不味い不味い!螺旋階段の方も壊され始めている!このままじゃ仕方ない!跳ぶぞ!」
大輝は全員にそう叫ぶと中央に向かって跳んだ。螺旋階段の中央は障害物も何もなく吹き抜けになっているのだ。故に、そこから降りるのが一番早く着くのだが、大輝達がいる場所から最下層までとてつもない高さがある。このまま何もせずにいれば、確実に死ぬ。
「安心しろ。俺の魔力が戻ったなら、死ぬことはない」
大輝はそう言うと風魔法を使って全員を包み込むような風の膜を作り出した。そして、そのまま風で落下速度を落としていく。そのことに大輝は思わず喜びの笑みがこぼれた。やっと自分の魔法が使えている。その事が嬉しいのだ。
そして、安全に最下層へと着地するとトレントから飛び出た。
「大輝、茉莉、鷹岡君!」
「やっと戻ってきたわね!」
「これでやっと反撃できる!」
大輝達がトレントから出てくると香蓮達は喜びの声を上げた。それから、大輝達が香蓮達のもとまでやってくると香蓮達はトレントに対して動き始めた。
エミュはトレントへと飛んでいくと<竜の吐息>でトレントを燃やしていく。すると、トレントはエミュを払い落とそうと動きが始めた―――――――――と思いきや、エミュに構わず香蓮達に根っこを飛ばした。
香蓮達はその行動に驚きつつも、その根っこを細切れに刻んでいく。だが、トレントは構わず次々と根っこを針のように飛ばしていった。エミュが依然として攻撃しているのにも関わらず。すると、大輝と俊哉が香蓮達の前に出た。
「罪滅ぼしってところか?」
「まあ、そんなところだ。俺にもやらせてくれ」
「いいぜ。フラン、ドリィ!派手に行くぞ!」
「了解じゃ!」
「わかったなの!」
大輝はフランとドリィと魔力パスをつなげると魔力を全解放した。俊哉も大輝に合わせるように魔力を解放させる。そして、互いにトレントに向かって剣を構える。その時、突然トレントがしゃべりだした。
「殺す、殺す殺す殺す殺す殺すぅ!地味女あああああああ!」
「!......まだ生きていたの~!?」
茉莉はそのことに驚いた。だが、同時に合点もいった。トレントがこちらを狙う理由。それがトレントに意識を移したルドレだとしたら、自分を狙って攻撃してくるのは当然だと言えよう。全く、しつこすぎるのは嫌いだ。
「私に時間を頂戴~。私があのトレントに終止符を打つよ~。それがせめてもの手向けだと思うしね~」
「いいわよ。それじゃあ、私達は周りの邪魔な根を切りに行きましょう」
「正面は任したわよ。あんた達!」
「「任せろ!」」
そして、茉莉が弓を構えると魔力を集め始めた。同時に香蓮とセレネが両サイドへと動き出す。それからすぐに、香蓮は邪魔な根を切っていく。小さい根は凍らせて砕いていき、太い根は雷を纏わせて切りやすくすると微塵に切っていく。
セレネは<黒の武人>と<影の手腕>を併用して、影で出来たガントレッドで小さい根を砕いていく。そして、黒い手を刃物のような形に変えていくと切り刻んでいく。
また一方で、大輝と俊哉も動き出していた。正面から来るは無数の極太の根の先。それもかなり速い速度で襲ってくる。しかし、臆することはない。ただ今は鋭く眼光を見せるのみ。
「光炎閃壊」
「精霊陽滅」
大輝と俊哉は同時に切り込んだ。互いに多大なる熱量を帯びた炎と光が目の前から襲ってくる根っこが切り払われ、燃えていく。そして、トレントの目の前には根っこがなくなった。そこへと茉莉がランスのような形となった矢をトレントに向けた。
「最後まで惨めだね―――――――――破魔の矢」
「ギャア"ア"ア"ア"ア"ア"!!!」
その矢は真っ直ぐトレントへと向かって行くと幹の中心へと刺さっていった。そして、どんどんとめり込ませながら突き進んでいく。その度にトレントの断末魔が森の中を駆け巡っていく。それかた、その矢は姿が見えなくなるまで刺さるとやがて、トレントを貫通した矢が空の彼方へと消えていった。
そしてその瞬間、トレントは力なく動きを止めた。大輝はトレントの魔力を<精霊の瞳>で見て、魔力が消えていることをしっかりと確認した。
「終わったようだ。香蓮、火を消してくれ」
「ええ、そうね。このままじゃ森林火災よね」
「あー、やりすぎちゃったみたいだね」
大輝が香蓮とエミュとそんな会話をすると横からバシンッ!という勢いの良い音と「痛てぇ!」という声が聞こえた。そして、思わず後ろを見てみると俊哉が胸ぐらを掴まれて、茉莉に往復ビンタしていた。それはもう腫れるぐらい。けど、茉莉によって回復させられているので、無傷だがダメージを負っているという不思議な状態にあった。
だがまあ、これは正当な反応だと思う。その事は大輝以外も思っていたようで止めるものは誰もいなかった。そして、茉莉が満足するまでビンタしたところで、俊哉へと抱擁した。
「私ばっかり頼って、どうして頼らせてくれなかったの~」
「茉莉......わりぃ、迷惑をかけたくなかったんだ。けど、それがそもそも間違いだったようだな。本当にごめん」
「私は根に持つからね~」
「許してもらえるまで気長に頑張るだけさ」
俊哉は茉莉の頭に手を置くとそっと言葉を返していく。そして、二人がしばらくして気を取り直したところで大輝の「帰ろうか」という一言で聖王国へと戻った。
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