第135話 荒ぶる感情
荒れ狂う波の如く
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大輝達がトレントの内部に突入していくのを確認するとエミュは一気に白竜へと変身した。そして、トレントのもとへと急行していく。しかし、トレントはエミュを近づけさせまいと大きな根っこを手足のように動かして、エミュを払い落とそうと振るっていく。
しかし、エミュはジェット機の如くの速さと小回りを利かせて、トレントのその攻撃を簡単に躱していく。そして、トレントの頭頂部に一気に向かって行くとその部分に向かって思いっきり<竜の吐息>を放った。
「ギャア"ア"ア"ア"ア"!」
エミュの攻撃によって、トレントの頭頂部は大炎上。それによって、周囲に響くような、痛みの声のような大絶叫をした。また、その痛みを体現するかのように手足をジタバタと動かして、地面を思いっきり叩きつけていく。
その影響で地面が大きく揺れ、無差別方向に動く根っこによる被害を一番に受けたのは香蓮とセレネだった。その二人はその跳ねるような揺れに耐えながら、運悪く襲いかかってくる根っこを何とか躱していく。すると、セレネは思わず声をかけた。
「こら、エミュー!いずれやるにしても早すぎるでしょうが!」
「それに大輝達が中に入ったばっかなのよ!すぐに消して!」
「大丈夫だよ。このトレント、やたら魔法耐性が高いから、少しでもダメージを与えるために火傷を与える必要があるんだよ。現に、私のブレス自体のダメージはあまり効いてないみたい。効いてたら、もっと幹の部分とか焼き焦げるもん」
エミュの言葉を聞くと香蓮とセレネはトレントの方向を見た。すると、トレントは頭頂部に真っ赤な火という花を咲かせながら、香蓮達を見る。すると、暴れる動きを止め、根っこをの先を針のように向けて構えた。その表情は、頭頂部の炎上と相まって怒りの表情のようにも見えた。
香蓮達は「あれ、これやばくない?」と内心焦り始めていた。
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大輝と茉莉はレオ(大)の背中に乗りながら、一気に螺旋階段を駆け上がって行く。その際、内側の木から切り株ほどの小さなトレントが湧いて出てくるように現れ、大輝達の前方へと立ち塞がった。しかし、そんなことはお構いなしとばかりに茉莉は矢を射っていく。
その度に、そのトレント達は叫び声を上げていく。その声は内部で反響してかなりうるさいのだが、茉莉はそんなことを気にする様子もなく、ただ淡々と矢を射る。その表情と態度はまさに氷の女王といった感じで、茉莉に後ろに乗っている大輝は酷く凍えるような恐怖を感じていた。
するとその時、茉莉が話しかけてきた。
「月島君、一つお願いしたいことがあるんだけど~」
「な、なんだ?」
「もし、あの女と俊哉君とで別々に戦う機会があったらさ~、女の方は私に任せて欲しいんだ~。それに、月島君の方でも俊哉君に言いたいことの一つや二つはあるんじゃない~?」
「......あるよ。よくわかってるな」
「二人のことは良く見てきたからね。まあ、高校からだけだし~、みなちゃんの付き添いの関係でもあったけど~、それでも二人がどれぐらい仲が良かったことは知ってる~」
「まあ、俊哉とは中学時代の頃からだけどな。まさか、こんな体験するに至るまで仲良くなるとは思っていなかった。そして、あいつにはすげー世話になっている。だから、俺が助けに行くんだ。それから、『殺しに来てくれ』って言葉を俺に言ったことに対して、俺は怒っている。だから、一発ぶん殴って目を覚まさせる」
「俊哉君はそんなことを言ってたんだ~......バカな、男だね~」
大輝は茉莉の言葉を聞くとふと茉莉が込み座ミニ震えてるのを感じた。茉莉もなんだかんだで敵陣に、それもボスに突っ込むのは初めてだ。だから、我慢していても怖さを拭えていないのかもと思っていたが、それは違った。
鼻をすする音がしたからだ。その時、大輝は思わずさっきの言葉に対して自粛した。茉莉は今氷の女王のようになっているわけではなかったのだ。俊哉の苦しみを代弁するかのように、敵に対して冷酷に接していただけなのだ。
やはり、茉莉と俊哉には何か繋がりがあるらしい。それがこの世界からなのか、もとの世界なのかもしれない、でもそんなことは今は関係ない。茉莉があれほどまでに俊哉へと感情を向けるのは珍しいが、あんな顔すれば、さすがに今がどんな関係かわかる。あれは......
「月島君、見えてきたよ~」
「ここからが本番みたいだな」
「ウォン」
そして、大輝達が螺旋階段を上った先にはやや広い空間があり、その空間にはさらに上へと昇っていく螺旋階段があった。また、その空間には男と女の二人組がいた。すると、女の方は大輝達に向かって挑発するように声をかけてきた。
「あら、こんなにも早く私達の所にやってくるなんて......無粋だと思わない?もう少し私と俊哉君の甘い空間を尊重してくれないかしら......って!人の話を最後まで聞けない地味女は!」
「うるさいから~。耳が腐りそう~」
「なんですってええええ!」
女が話しているとその話を遮るように茉莉は矢を放った。その攻撃は簡単に躱されるが、それでも女を怒らせるには十分な行為と言葉であった。だが、その女は激情のままに攻撃してくるということはなかった。ただ、青筋は走ったままだが。
「地味女は相変わらず見た目似通りに中身も地味女のようね。私の愛の巣に来て、目の前で愛を語られてその嫉妬で攻撃して、場を悪くすることしか言えない。はっ、つくづく愛想のない地味女ね。その張り付けたような笑みで俊哉君を騙していたかと思うと可哀そうでしょうがないわ」
「泥棒猫に言われたくないかな~。ただの実力で何も出来ない時点でそもそも負けていることにどうして気づかないのかな~。全く呆れてしまうよ~。呆れて、惨めで、逆に可哀そうだと同情してきちゃったよ~。まあ、ざまあないけどね~」
「聞いていればベラベラとおおおお!」
「上品さを雰囲気で表していたくせにボロが出過ぎてるね~」
その瞬間、その女と茉莉はそれぞれ手と弓を構え、それぞれ魔法を放った。女が放った黒い魔弾は茉莉へと容赦なく向かって行くが、茉莉はその全てを魔法の矢で弾いていく。そして、隙を突きながら女へと攻撃していく。
そんな舌戦からの魔法の攻防が大輝の隣で激しく行われていた。そんな光景に「女ってこえぇ.....」と思いながらも俊哉の方へと注意を怠らなかった。しかし、俊哉に反応はない。ただ目を虚ろにして、電源が入っていないロボットかのようにうなだれている。
「俊哉、本当に俺達の言葉が聞こえないのか?聞こえているのなら返事をしてくれ、反応してくれ。お前はずっと一緒にバカやって来た俺にも、こんなにもお前に対して感情的になった茉莉にも気が付かないのか?どうとも思わないのか?」
「......」
「お前がどういう思いで耐えてきた知らない大バカ者の俺だが、お前が助けを求めているのに何もしない大バカ野郎じゃないことぐらいはここで声を大きくして宣言してやる!そして、お前が嘘でも言った言葉には俺は怒っている。その言葉のツケはやらわせてもらうぞ」
「......」
大輝が俊哉に向かっていろいろと言うが、その言葉に何一つ反応することはなかった。大輝はそのことに悲しみと茉莉とやり合っている女に対しての怒りが込み上がってきた。すると、その女は大輝に向かって言葉を告げた。
「そんなチンケな言葉が私の俊哉君に届くはずがなないでしょ!たかだか勇者との友情なんてね、とっくに破綻しているのよ!それは嫉妬という感情によってね!勇者はその感情を持つ俊哉君に気付かなかっただけ!全くそんなで友情が復活するなんて滑稽ものね!」
「なんだと!」
大輝はその女の言葉の意味がわからないわけではなかった。俊哉が俺に対して嫉妬のような感情を抱かないとは思っていない。むしろ、抱いても当然だと思っている。ゲームであってさえ、自分が使うキャラよりも友達が使うキャラが強ければ、「あんなキャラ」を使ってみたいという憧れのような感情が湧くと同時に、「ズルい」という嫉妬のような感情が生まれるものである。
そして、この世界はそのような要素が強く、この世界が召喚されてから大輝達に見合う役職が振り分けられた。それがたとえ大輝の意志・意向でなくてもそうなってしまった以上、俊哉が「自分もなりたかったな」と思うのもあるかもしれないからだ。故に、その女の図星を突くような言葉に大輝は思わず反応してしまった。
そして、大輝が言い返そうとするとその前に茉莉が言葉を発した。
「うるさいな~。何にも知らないくせに~。もううんざりだよ~。決着をつけよう~」
「いいわよ。その言葉に乗ってあげる。ついてきなさい」
女がそう言うと螺旋階段を上り始めた。それを追うように茉莉はレオ(大)に乗って追いかけていく。そんな姿を横目に大輝は俊哉と対峙した。すると、俊哉が顔を上げる。
「俊哉、気づいたのか!?」
「......勇者、お前を殺す」
「......めっちゃ笑えるなその冗談。いいぜ、やってみろよ。少なくとも今のお前に負ける気はしねぇ」
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