第133話 救出作戦開始
ついに動き出しましたね。
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「はあはあはあ......」
大輝は荒い呼吸を繰り返しながら、魔法陣の上で倒れ伏していた。その体に赤いラインが幾何学的に施されていて、香蓮達は大輝の体から確かに魔力を感じていた。しかし、ここらがどうしていいのかがわからなかった。なんというか、現在大輝に体には魔力がパンパンに入っているので、触れたら爆発するような気がして。
しかし、フランとドリィはそんな様子に構うことなく、大輝を容赦なく起こしに行った。それはもう、背中をビシバシと叩きながら。
「主様、早く起きて感覚を確かめるのじゃ」
「上手く魔力を使えるか確認しないと痛み損なの」
「わかった......わかったから、今起きるから」
大輝は痛みを堪えながらゆっくりと上体を起こしていくと自分の腕に目を通していった。そして、自分の体に起こった変化に思わず驚いた。手の甲にある渦巻いたような赤いラインが腕を伝って心臓にある円に入った五芒星へと向かって行く。
それだけではない、背中にある赤いラインも、顔にある赤いラインも全てその五芒星へと向かっていた。そして、大輝は体に確かな魔力の流れを感じていた。そのことに思わず笑みが浮かぶ。「これでやっと俊哉を助けに行ける」と。
「よし、よしよしよし!これで俺も魔法が使える!これで俺は戦える!」
「うむ、ちゃんと魔力が使えるようで何よりじゃ」
「でも、マスター。マスターの場合は有限なの。それも完全なる有限なの。加えて、マスターの魔法は攻撃力が強い故に魔力の消費も大きいの。だから、前以上に考えて使わなきゃいけないの」
「それに、継続的に使う魔法はオススメできん。これも魔力消費が大きいからじゃ。そんなことをすれば、溜めた魔力は一気にカラになる。使うなら一瞬で、強力じゃな」
「むずいな......だが、分かった」
大輝は一先ず何とかなりそうなことに安堵した。魔力がないと知った初めの時はどれほど先が真っ暗になったか。でも、これのおかげで......いや、皆のおかげで首の皮一つ繋がった。希望の光が見えてきた。だからこそ、もう迷いはしないし、このチャンスを逃しはしない。
すると、いろいろなゴタゴタが一気に片付いたおかげか、余裕が出てきた。故に、気づいた。ここにミリアがいることに。いや、いたことには気づいていたのだが、なぜいるのかはほったらかしのままだ。そのことが気になったので、大輝がミリアへと話しかけようとすると先にミリアが動き始めた。
「あ!『誰が一番なのか』という話題に思わず反応して忘れてました!重大な内容を!」
「重大な内容?それって何かしら?」
「神託のことです」
その言葉に全員が反応した。このタイミングで災悪は実に最悪だ。それは俊哉の助けに行こうものなら、災悪が現れた地方は壊滅状態となり、その逆もまた然りといった状況になる可能性が高い。となれば、どちらかを諦めなければならないということだ。
手分けする方法もあるが、それはかなり難しい。なぜなら、段々と最悪のレベルがどんどんと上がっていることを一番に実感してるのは、大輝達であるからだ。死ぬリスクがあまりにも高い。全員がまとまっている時ですら高いというのに。
だからこそ、その言葉に全員が顔を暗くする。すると、ミリアはそのことに慌てたように反応して言葉を続ける。
「皆さん、落ち着いてください。まずは私の話を聞いてください」
「そうだな。内容は?」
「女神様が言うには、この聖王国から一番近い大森林へと現れます。その敵は巨大なトレントと言えばいいのでしょうか。加えて、ここからが重要です......女神様が言うには、俊哉様らしき存在を捉えたようです」
「「「「「!!!」」」」」
全員はミリアの言葉に再び目を見開いた。だが、先ほどとは違って表情に暗さが見えない。そこにいけば俊哉に会える。俊哉を救うことが出来る。その確かな希望が見えたからだ。そして、その中でも大輝は瞳にその炎をメラメラと燃焼させていた。
「全員、今すぐ準備だ!助けに行くぞ!」
大輝が立ち上がってそう叫ぶと全員が呼応するように返事をした。そこからは、この屋敷は騒がしいものになっていた。俊哉をすぐにでも助けに行きたい衝動はある。でも、それで災悪をないがしろにすれば、死ぬのはこっちだ。だからこそ、急ぎながらも不備なく準備を進めていく。
そして、全員が準備し終えると馬車に急いで乗ってかっ飛ばし始めた。その馬車が遠くなっていく様子をミリアは「ご武運を」と告げて見送っていた。
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「よし、ここだ!」
大輝が馬車で向かった先はいつも自分が鍛錬場所として使っている場所よりもさらに奥の方。そこで、馬車による移動限界に至ったところで、馬車に魔物除けの結界を張ってどんどんのさらに深いところに向かって行く。
そこは大森林というに相応しいほど一本一本の太い幹の木が乱立している。そして、その木は青々と茂っていて天へと昇っている太陽の光のほとんどを遮っている。そのせいでほどよく暗くあまり視界が良くない。加えて、腐って倒れた木々が邪魔をしていて、随分と動きづらい。
まだ問題は続いた。それは周囲の状況が全く読めないということ。大輝は基本的にどんな状況においても<気配察知>を当たり前のように使っている。そして、今も気を抜けば使いそうになるほど。それで、問題なのがその魔法が使えなくて周りに魔物がいるかどうかがわからないのだ。
大輝はこの魔法を使って、相手の個体の数を測っている。また、<精霊の瞳>が使えないのも問題だ。この魔眼はトレントを探すのに非常に役に立つのだが、それが出来ない以上どれかの木にトレントが潜んでいたとしても見つけることが出来ない。
また、突然トレントが襲ってきても<身体強化>が使えないせいですぐに反応して避けることが出来ない。故に、今はレオ(大)とその背に乗っている茉莉が周りの様子を伺いながら、大輝の両横と後ろに香蓮、エミュ、セレネがいる構図となっている。一言でいえば、大輝を囲む状況だ。
そのことに大輝は何とも言えない心象を抱えている。仕方ないとはいえ、これはなんとも心に来るものだ。自分も自分でできることはしたいのだが、ここは大輝が鍛錬していた、そして勢いで突っ走ったあげくに死にかけた森の入り口付近ではないのだ。戦おうとすれば、確実に魔力を消費することになる。それだけは出来ない。
「ウォン!」
「前方から魔物がやって来たよ。念のため、サイドにも警戒しておいて」
「「「了解」」」
すると、大輝の目の前で戦いが繰り広げられた。それは前方からやってくる二体のオオカミの魔物とその後ろからやってくる熊みたいなサイズのスカンクの魔物。さらに、両サイドからターザンロープのように蔦を使いながらやってきた猿の魔物。
前方にいるオオカミに向かって茉莉は矢を射って的確に二体の頭を撃ち抜いていく。すると、近づくことは危険だと判断したスカンクは尻を茉莉たちに向けると一気に放屁した。その瞬間、その放屁はガスに引火したかのような大爆発を起こし、茉莉達ひいては俺達を襲った。
だがその爆撃に対し、レオ(大)は焦ることなく咆哮一発で蹴散らしていく。そして、そのスカンクに一気に近づくともう一度放屁される前に爪で切り刻んだ。また同刻、香蓮とエミュの方にそれぞれ三体の猿が襲いかかって来ていた。
その猿の魔物はそれぞれどこかの冒険者から奪ってきたであろう剣を持っていて、ターザンロープで近づきながら、その剣を一気に振るっていく。しかし、香蓮はその剣を素早く抜刀して全て弾くと無駄のない流れるような太刀捌きで、猿の首筋に僅かに傷つけていく。
香蓮にとってそれで十分であった。それ以上の大げさな動きはいらない。頸動脈さえ切ってしまえばそれだけで敵は失血死で死ぬのだから。また、エミュの方ではそもそも猿の攻撃を気にしていなかった。なぜなら、手に装備したガントレットで剣を殴り折りながら猿を吹き飛ばしているからだ。
最初に来た猿を顔面殴って一発、次にそのまま突き出した拳を横に振るって裏拳で一発。そして、素早く体勢を直してアッパーで剣を折りながら殴って頭だけを上空へと吹き飛ばす。大輝は思わず心強いと思いながらも「エグイな~」という言葉を思い浮かべずにはいられなかった。なぜなら、これらのことを全て移動しながらやっているのだから。「普段見ないうちに強くなりすぎじゃね?」と思ってもいいだろう。
するとその時、セレネの影が大輝達を覆うように動き始めた。そして、ある特定の木々へと<影縫い>で刺していく。その瞬間、その木から顔が現れ断末魔が聞こえてきた。どうやらトレントだったらしい。だが、エルフの国のように敵じゃないトレントもいるわけで......
そんなことを大輝が思っていると察したようにセレネは言った。
「あいつらはほんの僅かだけ動きがあった。それは敵意だった。なぜわかるかと言われれば、ここはほとんど陰だから、ここは私のフィールドといっても過言じゃないの。この意味わかるわよね?」
「おう......お世話になってます」
「そういうこと。それじゃあ、このまま突っ切るわよ」
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