第130話 復活
辛いことでも仲間がいれば......
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「香蓮、どうしてここに?」
大輝は思わず目を見開きながら、香蓮を見つめていた。それは明らかに気づくのが早すぎるからだ。俺は気づかれるとは想定していても、その時間を出来る限り長くしようと動いたはずだ。だから、助けてもらったとはいえ、香蓮がここにいることに驚きが隠せない。
すると、香蓮は無言で大輝の胸ぐらを掴むとそのまま馬乗りになった。そして、開いている手で大輝の頬に思いっきりビンタした。
「大輝は私を舐め過ぎよ!一体、何年幼馴染をしてきてると思ってるの!大輝の行動ぐらいお見通しに決まってるじゃない!」
香蓮は再びビンタする。
「私は悲しいわよ、私のことを全然知ってくれなくてね!でも、そんなことは今はどうでもいい!どうせ後で好きなだけ知っていくしね!それよりも、無謀すぎるのよ!ずっとやるとは思っていたけど、ここまでバカとは思わなかったわ!それでどうだった!?自分の浅はかさにいい加減気づいたかしら!」
「ご、ごめん......」
「謝る前に気付きなさい!」
香蓮はもう一度大輝の頬を思いっきりビンタすると上体を起こさせて、抱擁した。そのことに大輝は思わず固まる。それは香蓮の肩が小刻みに震えていたからだ。そして、背中に回っている腕はより強く自分を抱きしめている。
大輝は見えない香蓮の顔は涙で染まっていると思った。ただの勘であるが、幼馴染としての確信のある勘だ。それぐらいはバカな自分でもわかる。だからこそ、大輝も優しく香蓮を抱きしめた。
「ごめん......でも、俺は助けたいんだ。だから、それで......リスクは承知だった。けど、香蓮達の気持ちは考えてなかった。きっと今は大騒ぎになってるかもな」
「ほんとよ。大輝も鷹岡君も二人とバカよ。大バカ者よ。もう心配かけさせないで。無茶しないで。悲しむ人はここにいるの。それをちゃんと気づいて......」
「ごめん......バカでごめん。でも、助けたい。いや、助ける。だから――――――――」
「だから、どうするべき?もう一人で無茶をして、痛い目を見たのを忘れたわけじゃないわよね?」
「ああ、しっかりと無力を思い知らされたよ」
「今度は別のことを忘れたようね」
「うぁわ!?」
香蓮は大輝の肩を掴んで、顔が見えるようになるとそのまま押し倒した。そして、大輝の顔を両手で挟むと目線を合わせた。大輝はその強い眼差しに思わず釘付けになる。すると、香蓮は一つ大きく息を吸うと告げた。
「大輝は無力じゃない。それは私達が知っている。確かに、今は魔力が無くて戦力的に劣るかもしれない。けど、力が全てじゃないでしょ?少なくとも私達は大輝がいてくれるだけで、頑張れるの。だから、無力なんかじゃない。私達に力を与えてくれるからね」
「俺は何も......」
「してなくなんてないわ。ただ自覚がないだけ。それとも、信じられない?」
香蓮は大輝の顔を見るとにこやかに笑った。大輝はその笑みに胸が熱くなるような感覚を覚えた。これはきっと気まぐれなんかじゃない。確かに覚えのある熱だ。だから、俺は......
大輝は香蓮の表情に釣られるように笑うと香蓮の頭へと手を置いた。
「その言葉は卑怯だ。信じられないはずがないだろ?」
「なら、聞かせて。私達を信じている証を示す言葉を」
「わかった......助けてくれ、香蓮。俺はお前の力が必要だ」
「いいわよ。そう言うってことは、一人一人に同じ言葉を言わなくちゃね」
「うぅ......」
香蓮はイタズラっぽい笑みを浮かべながら、大輝の手を引いて立たせる。そして、思わず大輝が困っている表情をしているのを見て、さらに明るい笑みをする。それに対して、大輝も笑みを浮かべるが、内心ではこの後起こるであろうことに怯えていた。まず、間違いなく怒られることに。
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「これぐらいで許してあげるからね!」
「良かったわね。私一人だったら高くついたわよ?」
「心苦しいですが、これは罰ですからね」
「私は~、もう一人にお灸を据えたいな~」
「ふぁふぃ、ふぉうふぃふぁふぇん(はい、もうしません)」
大輝が香蓮と共に家へと帰って来ると同時に、エミュの右ストレートから説教は始まった。大輝はその間実に従順に説教を聞いていたのだが、それだけでは怒りは収まらず、時折激しいビンタが大輝の頬を赤く膨らませた。
だが、大輝はエミュ達の表情を見ると思わず罪悪感を抱く。それは全員が香蓮と同じように泣いていたこと。それだけの心配をさせてしまっていたこと。それだけは明らかに自分の責任。こうなることはある意味当然と言えるかもしれない。
すると、涙を拭ったセレネが聞いた。
「それで大ちゃん、何か言うことは?」
「もう一人で突っ走らず、無茶をしません」
「そういうことじゃないわよ、私達が聞きたいことは。私達が悲しいのはね、あんたが死にかけで帰ってきたのもそうだけど、それと同等ぐらいに頼られなかったからよ。それは私達じゃ力不足みたいに思われているようで、すごく癪に障るのよ」
「違う、そんなことは思ってない。ただ、自分勝手に動いていただけで......」
「わかってるわよ。それに関しては勝手にこっちがそう思っていただけ。でも、そう思わせる原因を作ったのはあんた。そして、私達が欲しい言葉は謝罪なんかじゃない」
大輝はその言葉を聞くと思わず香蓮の方向を見た。すると、香蓮は大輝の心情を肯定するように頷いた。そして、大輝は同意であることを確認できると手を地面につけ、それから頭もつけた。
「俺に、俊哉を助けるために!力を貸してください!」
「はあ.....全くあんたって本当にバカよね。でも、その心意気は嫌いじゃないわよ」
「「あー!!」」
セレネは大輝に合わせるようにしゃがむと自分の顔の位置に合わせるように、手で大輝の顔を持ち上げた。そして、艶のある表情で大輝の耳元にそっと囁く。そのことに大輝は思わず顔を上気させる。そんなセレネの出し抜いたような行動にエミュとミリアは叫び声をあげた。
「もしかしなくても香蓮ちゃんも?」
「え?あー、何のことかしら?」
「香蓮様、私の前で嘘をついてもいけませんよ。私は多くの人を見てきているのです。それぐらいはわかりますよ」
「別に何もしてないわよ!?」
「大ちゃん、私も必ず何かするからね!」
「ふふっ、何か違うような気がするけど~、面白いから黙ってよ~」
そこからは大輝の預かり知らぬところで騒がしくなった。それは大輝では止められないほどに。そして、大輝が困惑しているとさらに二人の幼女が大輝の所に向かってきた。
「主様ー!」
「マスター!」
「フラン、ドリィ......うぁわ!?」
その二人は泣き顔をそのままに大輝へと抱きついてくる。大輝はその突進に押されるがままに地面へと寝転がった。そして、そのままフランとドリィの頭を撫で始める。この二人には一度残酷なことを言った。それで随分と悲しませた。だから、二人の気の済むままにそのまま抱きつかせてあげた。
それからしばらくして、全員が明るい表情に戻ると大輝は皆には見つからない場所で茉莉を呼び出していた。
「月島君、どうしたの~?」
「少し、伝えたいことがあってな。それは、俊哉に関してだ」
「俊哉君の?」
大輝がそう切り出すと茉莉の朗らかだった表情はすぐに真面目な表情へと変わった。その変わりようで、大輝は「やはり藍野と俊哉には知らないところで、何かあったのだな」と感じた。だからこそ、回りくどいことをせずに率直に言った。
「藍野、聞いてくれ。俺は目が覚めてからしばらくして、俊哉と何があったのかを完全に思い出した。そして、俺の意識が途切れる前に俺に頼み事をしていたんだ」
「頼み事?」
「ああ、俺にはよくわからないが『最後まで付き合えなくてごめん』という言葉を藍野に伝えてくれと」
「......ふっざけんなよ~!あの人は~!」
「!?」
大輝が茉莉へと俊哉の伝言を渡した瞬間、茉莉は一度も見たことないような怒気の籠った表情で起こりだした。そのことで、大輝は縮み上がるような恐怖に襲われた。普段おっとり系の人が怒るとこんなにも怖いものなのかと。
「もう、なんなの俊哉君は~!人の気持ちばっかり見て、自分のことは後回しで~!それでいて、自分の問題には、迷惑かけまいと自分一人の力で解決しようとして~!カッコつけすぎなんだよ~!そして、全然カッコついてないんだよ~!わかってんのか~!」
「ひぃ.....」
大輝は思わず震えた。怖い、怖すぎる。自分のことのように怖い。
「はあはあはあ......あ、ごめんね~。本当に怒った時にしか出ないから、安心して~」
「そうなのか......」
「ただ、助け出した後の俊哉君は私に任せてもらっていい?」
「ああ、どうぞ.....」
茉莉と俊哉がどういう関係か知らないが、とにかく「俊哉は死んだな」と大輝は遠い目をして思った。
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