第127話 受け入れ難い現実
さて、衝撃的終わり方をしてから新章に入ります。これが終わればあと残り3章ぐらいです。終わりが近い!
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「うぅ......ここは......」
「主様、起きたかじゃ!?」
「マスター!やっと起きてくれたの!」
大輝は目を覚まし、上体を起こすとフランとドリィが一斉に抱きついてきた。大輝はその事に驚きながら、同時に体に痛みが走った。その痛みを我慢しながら、混乱している記憶を整理して、フランとドリィの頭を優しく撫でた。
先ずは、現状の把握。見て分かることは、自分は今上半身は裸の状態で、左胸の心臓辺りを中心に包帯が巻かれている。その左胸を見た瞬間、脳内に電流が走った。自分はこの左胸が痛む理由を知っている。あれは確か――――――――
「大ちゃん!」
「大輝!」
「バカ大輝!」
「月島君~!」
「大輝様!」
大輝が何かを思い出そうとした時、大貴の部屋の扉は勢いよく開かれて、エミュ、香蓮、セレネ、茉莉、ミリアが一斉に声をかけた。その事に大輝は思わず驚く。それは、勢いよく入ってきたこともそうだが、全員の顔が今にも泣きそうであったからだ。
大輝はフランとドリィを自分から引き離すとベットから立とうとした。その時、大輝は急激な体の重みと脱力感に襲われて思わず膝をついた。その事に大輝は一瞬放心状態になる。何が何だかわからない。だが、体に全く力が入らない。そして、左胸にひどく熱を感じる。
すると、無言でエミュと香蓮が大輝の肩を持つとベットへと座らせた。大輝はふと自分の手を見てみる。異常はない。足も、背中も、顔もどこも異常はない。なのに、何か大切な何かを一斉に失ったような気さえするのはどうしてだろうか。
『大輝に一つだけ俺の願いを聞いてくれるか?』
「あ"!」
「大ちゃん!?」
「大輝、大丈夫なの!?」
大輝は思わず誰かの言葉が頭の中に流れた。そして、その言葉が流れた瞬間に発生した激しい頭痛によって思わず頭を抱えた。そんな大輝にエミュと香蓮は酷く心配したような顔をするが、大輝はその二人に手を出して制止させた。
この記憶は思い出していいものなのか。思い出していけないから誰が言っているのかわからないのではないのか。だとしたら、このまま気づかぬふりを続けるのが正解か。しかし、これが今の状態と関係しているのならば、この状態をもとに戻すためにもこの記憶は探らないといけない。それに、自分自身がこの記憶を探りたがっている。
そして、大輝は目を閉じるとその言葉を深く深く意識した。
『友としての最後のお願いだ』
「ぐっ!......友......」
大輝は痛みを堪えながらその言葉をハッキリと頭に刻み込んだ。今はまだ薄い靄のようなものがかかっていて、誰が自分に対して言っているのかがわからない。だが、その言葉の中でしっかりと自分に関係する情報を入手した。それは「友」という言葉。
「友」それは大輝と親しい間柄であるということ。そして、今この場で大輝の中で「友」と呼べるのは、エミュ、香蓮、セレネ、茉莉、ミリア、フラン、ドリィ、レオ.......あれ?おかしい。これで全部だと自分が思っているのに、なぜかもっとも大切な存在を忘れているような気がする。いや、気がするじゃない。忘れている。
大輝はその人物を探るように香蓮達の方を見た。すると、総じて暗い顔をしている。また、その目からは涙が伝っていた。大輝はそのことに思わず困惑する。この反応はそのいない人物を香蓮達も知っているということなのか。だとしたら、誰なのか。そんな目を送ってみるが、誰一人として答えようとしない。
『大輝、今はお前の質問に答えることは出来ない。だから、一方的に言わせてもらう』
「あ"あ"!」
大輝の記憶の中で少しずつ靄が晴れていく。目の前にいる人物は男で、背丈は自分とあまり変わらない。そして、不自然にも長袖を着て、その手にはグローブをしている。しかし、不信という感じはない。ただ、自分とその男は酷く親しいといった感じであることは雰囲気から伝わってきた。
その記憶にかかった靄は足元から段々と晴れていき、その姿を、服の色を、周りの状況をハッキリと映していく。それから、首元までやって来て顔にある靄が晴れていく。同時に言葉が聞こえる。
『大輝、お前はどうか生きてくれ。そして、俺を殺しに来てくれ』
「え.......あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!」
「大ちゃん、落ち着いて!」
「二人とも手伝って!」
「しっかりしなさいよ、バカ大輝!」
「今は堪えてください!」
「聞くかどうかわからないけど、精神魔法をかけてみるよ~!」
大輝はその人物の顔をハッキリと見た。その男は俊哉だ。大輝の唯一無二の親友にして、この世界に共に飛び込んで、様々な体験をしてきた裏切るはずもない、疑いもしない男の存在を。そして、その親友に自分は短剣で左胸を刺された。
そのことに大輝は思わず頭を抱えながら発狂した。万力で絞めつけられたような痛みが頭に走るが、今の大輝にはそれ以上の痛みが胸に宿っていた。
おかしいおかしいおかしいおかしいおかしい!どうしてどうしてどうしてどうしてどうして!なぜなぜなぜなぜなぜ!俊哉が俺を攻撃したんだ。何がどうして、こうなったんだ。俊哉はこんなことをする奴じゃないことは自分が一番分かっている。なのにどうして!
わからないわからないわからないわからないわからない!どうして俊哉が俺を攻撃したのかがわからない!何があったんだ!俺が俊哉の恨みを買うことをしたのか!何をすれば、こうなるんだ!何があったら、こうなるんだ!わからない!全然わからない!ただ、わかることは自分は俊哉に攻撃された。
大輝は受け入れがたい現実に声を荒げながら暴れる。そんな大輝をエミュ達は動きを封じにかかった。それは大輝の傷口をこれ以上広げないためもあるが、それ以上に大輝の精神崩壊を防ぐため。
大輝は今抗いようもない現実と戦っている。そんな大輝は香蓮達に目もくれないだろう。そんな余裕はないから。なら、少なからず大輝の傍にいるという存在証明をしなければならない。そのためには、大輝に触れていること。こんなことで証明できるとは思っていないが、今の状態の大輝に何を言ったところで全く届かない、。なら、少しでも触れてあげることで大輝自身から気づかせる方がまだ可能性が高い。それでも、微々たるものだろうが。
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!」
大輝の叫びは止まらない。香蓮達に抑えられて、この場を滅茶苦茶にすることはないが、大輝の目は完全に現実を見ていない。そして、大輝は思わず痛みのあまりに香蓮から腕を引き離すと左胸にあるガーゼを包帯ごと引きはがした。
その瞬間、温かいものが大輝の胴体を流れていく。同時に、その左胸から体温が失われ始めた。その光景を見ていた香蓮達は思わず目を逸らす。それは当然見ていられないから。あまりにも惨くて、痛々しくあるから。
「あ......」
大輝は思わずその変化が激しい左胸を見た。すると、その左胸にはまさに短剣で刺されたような刺し傷があり、その傷が完全に塞がっていないのか血が流れている。それを見た瞬間、大輝は現実を受け入れを得なかった。
そして、あまりに光景に思わず放心状態になり、言葉が漏れる。この傷は俊哉がつけたもの。今もあの裏切られた時の光景を忘れなせないように、刻み付けるようにジュクジュクと痛みを与え続け、ドクドクと血が溢れていく。
「どうして、どうしてこうなるんだ......」
大輝の目から涙がこぼれた。悔しそうに唇を噛みしめながら。そう思うのは仕方ない。俊哉と大輝は同じ世界から来た唯一の男同士。男同士で積もる話もあったし、もとの世界も今も変わらずバカな話をしたこともあった。
そして、一緒に災悪を討伐してきた。大輝も俊哉もこの世界に染まり始め、時には真面目な話もあったが、それもかけがえのない思い出。そして、全体に裏切ることのない人物だと思っていた。なのに.......俊哉に刺された。
「嘘だ......こんなの嘘だ......」
やはり何度思っても現実を受け入れつことが出来ない。受け入れたくないというのが正解なのだろう。しかし、自分にしっかりとある傷ついた左胸がその現実の証明とその全てを物語っている。だからこそ、大輝の悲痛な言葉が漏れてしまう。
そのことに香蓮達も同調するように涙を流した。香蓮達はもちろん大輝と俊哉の間に何があったかはわからない。しかし、大輝と俊哉だけの二人だけだったという状況はフランとドリィから証言を得ている。だからといって、俊哉を犯人扱いするわけではないが、だとしたらどうして俊哉がいないのか。
そのことが謎でしょうがないのだ。それはもはや、自分が犯人であると言っているようなもの。それに大輝が目覚めてからもう三日も経っているのだ。何かがあったとしても帰って来ないのはおかしい。それに大輝の反応からしても......もう現実を受け入れなければならない。
完全に受け入れたわけではない。何かあってのことだと思っている。いや、そう思いたいという気持ちの方が強いか。だからこそ、俊哉に何があったかを知るためにも大輝が正常でなければいけないのだ。
全員の気持ちは一つであった。
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