第125話 あの時の勝負
良く続けてる自分偉い
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「なるほどな。無事和解.....ってほど仲が悪いわけじゃないが、ちゃんと思いを伝えられたのなら良かったな」
「はい、それもこれも大輝様達のおかげです。もしもう少し帰ってくるのが遅かったなら結果は変わってしまっていたかもしれません」
「.....なあ、本当はどう思うんだ?」
大輝は上体を起こして、姿勢を直すとふとそんなことを聞いた。それはミリアの心の内を聞いてみたかったからだ。ミリアはこの騒動で様々な気持ちを思い出した。この気持ちは忘れようとしていた大切な気持ち。そのことは大輝でもわかっている。
でも、その気持ちは吐き出した方が楽になれるのか、それともそのまま忘れたままの方が楽で良かったのかそのことは大輝でも測ることは出来ない。そして、本体ならばこれはもう聞くべき質問でもない。なぜならミリアがせっかく整理した気持ちを掘り返してしまうような行為なのだから。
けど、自分はミリアという存在をより深く知らなければならないとも思った。それはソワナとの約束......はしていないが、任されたのだ。なら、より真っ直ぐにミリアと向かい合う必要がある。それこそ、心の内は何よりも向き合わなければならないことであるから。
すると、ミリアは大輝の言葉に特に嫌そうな反応は示さなかった。ただ優しい、柔らかい笑みを浮かべながら大輝の言葉に返答する。
「そうですね。本当は耐えていた方が楽だったかもしれません。その状況に慣れてしまっていたのですから。なので、お姉ちゃんに会えた時は嬉しい反面、とても心苦しかったですよ」
「けど、今は違う」
「はい、その通りです。確かに苦しかったですが、それは自分がお姉ちゃんに対する未練を断ち切れていなかった証でもあります。今もこれからもずっとそばにいて、笑いかけてほしいって。その気持ちは今でもないわけではありません。ですが、考え方が変わりました」
「考え方?」
「お姉ちゃんはそばにはいない。でも、遥か遠くからでも変わらず見守っているんだって。これはこの騒動があったから変われた考えなんですけどね。少し皮肉っぽく言ってしまったでしょうか?」
「いや、そんなことないと思うぞ」
大輝は大聖堂の祭壇にある女神像を見つめるとミリアの気持ちを心に届かせた。どうやら、ミリアは自分が考えていた以上にしっかりしていたようだ。自分の気持ちをしっかり持っていた。ソワナからはミリアのことを任されたが、何の心配もなさそうだ。
ここで、大輝は別の話題へと移った。それは自分が眠っていた後にミリアとソワナ以外で起こっていたこと。つまりは、カオスとグラムのことだ。この二人の事情を聴くなら、仲間達から聞いた方が正確なのだが、今は大まかなことだけ聞ければいい。
そして、ミリアに聞いたのは、ミリアは少なくともほんの少しだけカオスと関わりがあった。となれば、お人好しのミリアのことだからきっとカオスのことは聞くはずだ。それにずっと自分の傍から離れなかったし。
すると、ミリアはやはり何か聞いていたらしくて、そのことを大輝に話し始めた。
「カオスさんは弟さんと一緒に旅へと出かけられたらしいですよ。なんでもこの世界の各地にある女神像の神殿に出向いて懺悔しに行くとかで」
「ん?カオスはどうやって旅するつもりなんだ?というか、消えてしまってないのか?」
大輝の質問は最もであった。幽霊達がこの国に留まっていたのは、この国の地に縛り付けられていたから。その事は大輝も知っている。だからこそ、グラムの魔法から解き放たれた今はこの地に幽霊として存在は出来なくなるはず。
「なんでも弟さんの魂にカオスさん自身の魂を縛り付けたらしいですよ。そうすれば、天へと飛ばされることもなくこの地に居続けられるということで」
「それってこの国的にはありなのか?」
「いやまあ、今回だけは特例ですよ。いろいろなことが起き過ぎて、脳がパニックになって許してしまった。そういう筋書きで女神様に話を進めていきます」
「そんなんでいいのか?」と大輝は思ったが、それに関して追及することはなかった。確かに悪いことも起きた。だが、それが結果的には二組の姉弟と姉妹の抱えていた溝を埋めてくれたのだから。後は自分がその思いを伝えられず欲に染まってしまった人たちの分まで前を向いて歩くだけ。
すると、ミリアが大輝にふとこんなことを聞いてきた。
「大輝様、私との勝負のことを覚えていますか?」
「勝負?」
大輝がそう聞き返すとミリアは両手でそれぞれ人差し指を立てるとその指で口角を釣り上げた。その固いとも言える表情を見た瞬間、大輝は過去のミリアの笑みを思い出した。そして、ミリアが右も左もわからない自分を案内してきてくれたことを。そして、その時に交わした勝負内容のことを。それを思い出した時点で大輝は負けを認めた。
「完敗だな。どこからどう見ても柔らかい笑みだ」
「そうでしょう、そうでしょう!別に鏡の前で笑顔の練習なんてしてませんからね」
「あ、これはしてた人がいう言葉だな」と大輝は思わず笑ってしまう。まさか、あの時の勝負を覚えていることに驚いたが、その条件をクリアしてくることにはもっと驚いた。正直、あの時点で勝ちは確信していた。なぜなら比べる対象はエミュだ。エミュの笑顔は破壊力抜群の太陽の笑顔なのだから。
最初の頃は酷かった。一目見るだけでは普通に笑みを見せているようにも見えたが、あのような感情のない笑みは大輝にとって初めてだった。それこそ、無表情の方がマシなくらい。だが、気がつけば進化していた。今やエミュに勝るとも劣らない月の微笑みとなっている。
「何があってそんな風に笑えるようになったんだ?」
大輝がそんなことを聞くとミリアの表彰は途端に赤みを帯びてきた。頬や耳は段々と濃さを増していく。すると、ミリアはそんな顔になりながら熱量の帯びた瞳を大輝に向けた。その目はまるで「言わなくてもわかりますよね?」という感じであった。
大輝はそんなミリアを見て思わず背筋を伸ばした。そして、大輝の顔にも赤みを帯びていく。もうこの状況は間違えようもない。何度も経験して、一度たりとも慣れない状況だ。そういうわけか二人の間でしばらくの沈黙が流れる。
それから、最初に口火を切ったのはミリアであった。
「私は前は自分でも分かっているぐらい固い表情をしていました。それはただ一つ姉の代わりを完璧に務めるために。その為にはそういう浮つくような気持ちは持たないようにしてきました。ですが、そうではないんですね......」
「何がだ?」
「人が人を好きになる。その清楚で美しい気持ちは自分の意志ではどうにもならないということです。私は聖女として様々な場面で、様々な人から相談を受けました。となれば、当然そういう色恋沙汰の話も出てきます。その時に自分なりの考えで伝えていましたが、その時の言葉は適切ではなかったみたいです」
「.......」
「私が大輝様への気持ちに気付いたのがいつだったかは、正直なところ覚えていません。ですが、この胸に宿る確かな熱のことは忘れたくても忘れられません。そして、時間が経つたびに膨らんでいく一方です」
大輝はただ真っ直ぐいずれ来るであろ言葉に対して身構えていた。そして、ミリアはその言葉を口にする。
「私はもっと前から大輝様のことは慕っていたかもしれません。それは違う地からやって来てくださり、戦ったこともないのにこの世界を護るために戦ってくれて、周りの人たちが不安に駆られないように、勇者としてこの国の皆様に温かく接している姿に」
「俺は――――――――――」
「大したことをしているんですよ?それは私の国だけじゃなく、他の国方々でも思っていることです。それに知っているはずです、皆様の笑顔を。あの笑顔は全て大輝様達が作り出したものなんですよ?.......ですから、私はそんな大輝様の姿を慕っているのです」
ミリアは空気を吸って伝えた。
「そんな大輝様が好きなんです」
その言葉をしっかりと受け止めた大輝はゆっくりと言葉を返していく。
「......ごめん。俺はその言葉を受け取れない。俺は好きな人がいるから」
「......そうですか。振られてしまいましたね」
ミリアはそうは言いつつもあまり暗い表情はしていなかった。むしろ、想定通りといった感じの表情だ。すると突然、こんなことを聞いてきた。
「時に大輝様、勝負の時に言った言葉を覚えていますか?」
「すまん、思い出せない」
「大輝様は『可能な限り一つ言うことを聞く』と言っていました。そして、それは私に出された罰だと思いますが、それって私が勝った場合は大輝様にも適応されますよね?」
「どういうこと?」
「つまりですね......その一つのお願いを聞いてください。そして、私のお願いはこのまま決まるまで横恋慕でいさせてください。あ、別に気が変わったならそれはそれでも構わないですよ?」
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