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好奇心で異世界への魔法陣に飛び込んだら青春を謳歌しました!  作者: 夜月紅輝
第8章 いつも気がつく時には思い足らず
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第123話 愚姉

姉より、妹が欲しいと思うんですが、その気持ちは妹を持ってる人からすればどう思うんでしょうね


評価、ブックマークありがとうございます。励みになります(≧◇≦)

「目を覚ませグラム!」


「偽物が僕の名を口にするなあああああ!」


 一気に飛び出した大輝の肉体を借りたカオスはグラムへと突っ込んでいくと一気に切り込んだ。その攻撃に合わせるようにグラムも切り込んでいき、鍔迫り合いの状態へとなった。そこにカオスは魔剣を横から切り込む。だが、それはグラムに後ろへと下がられ避けられてしまう。


 しかし、そうなったなら追撃さえしてしまえば、グラムを死に体へと持ち込むことが出来る。そうなってしまえば、こっちのものだ。だが、さすがカオスの姉と言うべきかカオスが考えた行動に反応してくる。


土壁(アースウォール)


「チッ!」


 グラムは自身の目の前に土の壁を作り出すとカオスの行く手を阻んだ。そして、その壁を一気に横なぎで切っていく。それをカオスは聖剣で受け流すが、もうこの時点でグラムの体勢が整ってしまったことにイラ立ちを見せた。


 だが、すぐに思考を切り替えると切られた土の瓦礫をグラムに向かって蹴飛ばした。そして、それは避けられるか、剣で砕いてくると分かっているので、その二通りで様子を見た。すると、グラムはその瓦礫を避ける行動したので、その間合いをへと詰めていく。


「らあああああ!」


「忌々しい!その攻撃も、その動き方も、その読み合いも!どこまで姉さんを邪魔すれば気が済むんだ!」


「くっ!」


 カオスは聖剣を思いっきり振り上げた。だが、それはグラムに半身で避けられ、逆に剣を振り下ろされる。しかし、カオスはその攻撃を魔剣で弾いた。その行動にグラムは思わず怒りをにじませながら吠える。そして、カオスに左手を向けるとただの風の質量弾を放った。


 その魔法はカオスの腹部へと刺さり、思わずうめき声を漏らした。だが、すぐに両剣を地面へと突き刺すとその勢いを殺していく。そして、睨むようにグラムを見た。それはかつての魔将と呼ばれたカオスの戦の血が流れ始めたのだ。


「あんまりこの体を痛めつけてくれんなよ。借りもんだぞ?」


「うるさい!うるさい!うるさい!僕にその目を向けるな。お前は偽物だ。いい加減正体を現わせ!」


「はあ......姉思いの良い弟だったのにな。あの時は私の唯一の癒しでもあったのに.......仕方ない、愚弟にしたのがあたいだと言うのなら、ちゃんと姉として更生させてやらねぇとな!」


 カオスは再び飛び出すと聖剣をグラムに向かってぶん投げた。当然、グラムはそんな攻撃など避けていくのだが、その聖剣はグラムを通り抜けるとすぐに追いかけるように動いた。それはカオスが大輝の肉体の理解しての行動だ。


 その突然の軌道変化にグラムは思わず驚くも、すぐさまその剣を弾く。だが、それは予想通りとばかりに、聖剣を引き戻しながら二投目の魔剣を投げて距離を詰めていく。グラムはそれを<土壁(アースウォール)>で防いでいく。


 カオスはその魔剣を引き戻すとその壁を思いっきり砕いた。しかし、その壁の後ろにはグラムの姿はない。だが、カオスは<気配察知>ですぐさま位置を特定した。その場所は瓦礫に紛れて、自身の斜め後方の場所だ。


「なめんな!」


「ぐはっ!」


 カオスは両剣を地面に突き刺すとそこを支点にするように逆立ちした。その際に、足でグラムの振った剣の腹を蹴り上げ、すぐに剣から手を放すと濃密な魔力の<火球(ファイアボール)>を放った。その火球はグラムの胴へと直撃すると爆発を起こしながら吹き飛ばした。


 カオスは手を地面につけると上手く回転して体勢を立て直した。そして、剣を掴むと一気にグラムへと接近する。グラムは自身の腹部に回復魔法をかけながら立つと迎え撃つように剣を構えた。


 カオスは聖剣を突くとグラムはそれを半身で避ける。そして、剣を袈裟切りに振り下ろした。それに対し、カオスは魔剣で防ぎながら、グラムの横っ腹へと蹴りをぶち込む。その攻撃によって、グラムは思わずよろめくが、すぐさま左手をピストルのような形に変えるとその指先から魔法を放った。


貫風弾(ソニックバレット)


「あ"あ"!」


 グラムが放った魔法はカオスの蹴った足のふとももを容易に貫通した。その痛みにカオスは思わず体勢を崩す。すると、そこにグラムはさらに連続で同じ魔法を放った。その攻撃を直撃させるのは不味いと感じたカオスは、その風の弾丸を剣で弾いて直撃だけを避けていく。


 そして、カオスはそのまま地面へと倒れてしまった。そんなカオスを見るとすぐにグラムは動いた。それから、剣を大きく引くと地面に寝そべっているカオスに思いっきり突いた。その攻撃をカオスは聖剣と魔剣をクロスさせるようにして防ぐ。


「らあああ!」


「がふぉっ!」


 カオスはグラムの剣を力任せに弾くとその場で跳ね起きして体勢を直した。そして、後ろに向かって回し蹴りをした。その攻撃はグラムにとって予想外だったのかカオスの蹴りがしっかりとグラムの顔面を捉えて、飛ばした。


「あ"あ"あ"あ"あ"あ"!」


 しかし、カオスの攻撃はそこで終わらない。すぐにグラムに向かって糸を飛ばすと思いっきり引き寄せた。そして、聖剣を振るう。その攻撃はグラムの胴体を切り裂いた。その痛みによってグラムは思わず声を上げざるを得なかった。


 そして、カオスがさらに攻撃を加えようとするとその前にグラムが糸の拘束を解き、カオスから離れるようにカオスに向かって蹴った。それから、距離を取ることに成功したグラムは荒く呼吸をしながら、再び腹部を治療していく。しかし、思ったよりも傷が深かったのか回復に時間がかかり、加えて痛みであまり集中できない。


「ごほぉ......」


 グラムは思わず口から血を吐いた。口にはべっとりと血が付着している。そんなグラムの様子を見たカオスは剣を肩に担ぎながら声をかけた。


「もうその体はお前の力だけじゃ回復しないはずだ。諦めて大人しくなれ」


「うる......さい!ぜえぜえ、偽物に屈することはない。俺は姉さんに会うという望みがあるんだ!たとえどんなことをしてもな!」


「なら、どうしてそこまで会いたいんだ?」


 カオスは思わずその理由が気になった。グラムがシスコン気味であることは前から知っていた。だが、そこまで思慮分別がつかなくなるほどに狂ってはいなかったはずだ。そうなった原因がなんなのか、それがとても気になるのだ。


 すると、グラムはその思いを吐き出すように答え始めた。


「姉さんは僕にとって、一番に輝く星のような存在だった。そして、その星はいつも僕のそばにいてくれた。『一人にさせない』と言ってくれた」


「.......」


「僕と姉さんには護ってくれる人がいなかった。だから、自分達の力でどうにかするしかなかった。だが、その時の僕では何にも役に立てなかった。代わりに、姉さんがずっと明日を生きるためのお金を稼いでくれていた。そのことに僕は心苦しさを感じた」


「.......」


「近くに姉さんがいない寂しさと姉さんばかりが稼いできて、役に立たない僕がその稼いだ金で生きていることに罪悪感を感じた。だから、僕は代わりに必死に勉強した。姉さんがいるのは戦場だ。いついなくなってもおかしくない。だから、もうそんな危険な目に合わなくて済むように僕はいろんなことを学んだ。降霊魔法だってその一つだ」


「......なるほど」


「でも、姉さんは消えてしまった。僕はそのことが悲しくて、辛くて、どうしようもなく寂しかった。けど、それ以上に恩返しが出来ないことが何よりも苦痛だった。僕は姉さんの庇護下のもとでただ生かされていただけ。そのことが、当たり前だったような感じがして自分に腹が立つ!......だから、魂が集まりやすいと言われる聖霊国で降霊魔法を行った。全ては恩返しをするために」


 グラムの言葉を聞いた瞬間、カオスは思わず顔を上げた。それは自分がどれほど愚かだったのかと涙が溢れるのを抑えるため。自分はグラムを必死に生かそうと動いていた。そして、結果的には自分の望み通りグラムは生きてくれた。


 だが、肝心なグラムの気持ちを考えてなかった。グラムがその当時どう思っていたかなんて考えることもしなかった。余裕もなかったなんてのは、言い訳に過ぎない。ただ一言「どうして欲しい?」とグラムの願いを聞けばよかった。


 その自分の行動の甘さがこのような悲劇を生んだ。本当なら自分で自分の顔を殴ってやりたい。しかし、これは借りものの肉体だ。そんな私的理由で傷つけることは出来ない。なら、今の自分が取るべき行動は何なのか。決まっている


 カオスは大輝の肉体から霊体を出すとまだ意識を覚まさない大輝の体をそっと寝かした。すると、フランとドリィがもとの姿に戻り、大輝を庇護するようにそばに座った。そんな大輝達の様子を見たカオスはわず頬を緩める。


「昔のあたいはあんな感じだったろうか......」


 カオスは思わず独り言ちりながらグラムのもとへと向かった。グラムは未だ腹部に手を当て、荒く呼吸しながらも、右手に持った剣をカオスに向けた。


「ぜえぜえ、ち、近づくな!」


「まあまあ、そんな釣れないこと言うなよ」


「何を......!」


 カオスはグラムにゆっくり近づいてきたかと思うと急に移動速度を上げた。そして、カオスが行ったのはグラムへ抱擁すること。そのことにグラムは思わず驚きの声を上げた。そんなグラムの様子を気にしつつもカオスは語りかける。


「今更だけど、ごめんな。一人にしてしまって。約束したにな。不甲斐ない姉でごめん」


「ほ、本当に姉さんなのか?」


 グラムはカオスの独特の撫で方で思わずカオスに聞いた。すると、カオスは自分が姉であることを示すようにグラムとの思い出を語っていった。その時、その話を聞いたグラムは思わず目から涙を溢れさせて、頬を伝って流した。


「ぼ、僕は姉さんになんてことを!!」


「気にすんな。あたいは気にしていない。それに早とちりしていたのは、あたいの方だった。傷つけてごめん。きっとそう簡単に拭えることじゃないけどな」


「あ"あ"あ"あ"あ"あ"」


「それでグラム、お前の望みはなんだ?聞けることなら聞いてやる」


「僕は姉さんに生きて欲しい!生きて僕と一緒にいて欲しい!」


 グラムはカオスにそう叫んだ。だが、カオスはその言葉に反応することはなかった。なぜならそれはたくさんの生贄を用意するということだ。自分一人のために多くの人を殺すことは出来ない。故に、その願いは聞いてやることは出来ない。


「ごめんな、それは聞くことが出来ない。あたいはそれまでに人を殺し過ぎたからな。だから、死んでも尚人を殺すことは許されないんだ。それに、私自身も許さない」


「......なら、一緒にいてください」


「お安い御用だ」


 その瞬間、グラムの作り出したキマイラが粒子状になっていく。その際に、多くの魂を放出した。それらの魂は汚れなく神々しく輝いていた。

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