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好奇心で異世界への魔法陣に飛び込んだら青春を謳歌しました!  作者: 夜月紅輝
第8章 いつも気がつく時には思い足らず
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第119話 悲しみは突然現れる

眠い


評価、ブックマークありがとうございます。励みになります(*^-^*)

 大輝達が向かうと多くの黒い魔物がそこら中を暴れまわっていた。数としてはパッと見20そこら。ということは、それだけの数が欲に飲まれたということになる。それは同時にもう純粋な穢れなき魂には戻れないということ。この魂は消えたなら一体どこに向かうのだろうか。大輝がそう考えるのはあまり時間はかからなかった。


 降ろされた幽霊には魂というのが存在する。魂があるから再びもとの人格を発現できたのだと思われる。また、死後は魂だけがこの世界とは別の場所に飛ばされる。それはこの世界の言い伝えを収めた本にも、ミリアにも教えてもらったことでもある。


 だが、それは魂という存在を表す根源があるからこそ成立する話。死後の魂は天界へと昇り、過去の記憶を消され再び新たな命として生まれる。その世界の循環の仕組みは自分達の世界でも変わらない。そして、それも魂があるからこそ成立する話。


 つまりは、もうこの世界には二度と生まれ変わって戻ってくることはないということ。事実上の消滅。この世界のどこにも自分の存在は証明できない。過去にあった富も名声も時間とともに消えていく人がほとんどであろう。そして、一番に知ってくれた人もこの世界を飛び立つ。そうなれば、この世界にいたということが証明できなくなり、もとからいたのかすらもわからなくなる。


 ......故にわかった。この討伐は人の存在そのものを消すということに等しいということを。存在を空気よりも身近でない、認識できないものに変えるということ。それはもはや死というのも不自然だろう。だから、言葉で表すとするならば「消滅」になるのだ。


 大輝は目を閉じながら歯噛みした。そして、仲間達に一言だけ告げる。


「これは討伐じゃない、救済だ。せめて痛みなく終わらせてやるぞ」


 大輝達は一斉に分かれて魔物に向かった。そして、言葉通り一撃で沈めていく。だが、その数は一向に終わることはなかった。明らかに数が増えている気がする。なぜだ?なぜ数が増えないんだ?


 それから5分が経とうとしたが、数がまるで変わらない。そのことに大輝は思わず焦ったような顔をする。それは仕方ない。その間それだけの存在を抹消しているのだから。心苦しくないはずがない。


 その時、ミリアが叫んだ。


「皆様、あの人を見てください!」


 そう言ってミリアが指を指した方向を見るとそこには一人の幽霊が苦しそうに胸を押さえている。これは魔物になる兆候。だが、それは見ていればわかること。だったらミリアは何を思ってその方向を指さしたのか......まさか!


 大輝は思わずミリアの方向を見た。それは大輝が嘘をついたことに対して、ミリアが気づいてしまった可能性があるからだ。すると、ミリアはそんなことはわかっているような顔をしながらも頭を横に振った。そして、言葉を続ける。


「皆様、一時的に戦闘行為を止めてください!」


 大輝はその言葉を聞くと全員に目配せした。そして、ミリアの位置へと集まってくる。すると、先ほどの幽霊の方で変化があった。その幽霊は苦しいそうな顔から一転、辛いさが消えたのか安堵にも似た顔をしていた。だが、大輝にはその理屈がわからなかった。


 その時、ミリアのそばにいたカオスが答えた。


「私達が見てわかったことなんだが、お前さんらが倒すたびにあの魔物は際限なく増えていくみたいだ」


「どういうことだ?」


「お前さんらがあの魔物を倒すと叫び声が上がる。それがトリガーになっている。どうやらあの叫びは善良な魂の欲を強制的に暴走させるようなんだ。そして、その欲が暴走したまま魔物と変わっちまった魂もあれば、その欲の存在に気付いて自ら暴走させちまって変わる魂もある。まあ、どちらにせよ叫び声を聞くとああなるみたいだ」


「そんなのどうやって.......」


「大輝、落ち着け。お前には風魔法があるだろ?それで防音結界とか作れたりしねぇか?作れるなら、それで魔物の口を塞ぐことに意識を割いてくれ。倒すことは俺達がやる」


「......わかった。任せる」


 大輝は剣をしまうと両手に風を纏わせて、その手に意識を集中させた。その間に俊哉達が魔物へと接近していく。すると、大輝は前方に向かって腕を伸ばすと一気に周囲の風を操った。そして、魔物の口元に風を収束させていく。そのタイミングを見計らって俊哉達はその魔物を倒していく。


その時、一人の女性が声を上げた。


「待ってください!これ以上はもうやめてください!」


 その女性は両腕を大きく広げ、魔物達を庇うように大輝達の目の前に立った。その時、全員が思わず目を見開く。その女性はミリアの姉、ソワナであったからだ。ソワナは懇願するように両手を合わせると大輝達に言った。


「この行動が悪いことはわかっています。ですが、この人達はまだ生きています。ただ闇に飲まれているだけの可哀そうな被害者なのです。ですからどうか、攻撃はやめてください。まだこの人達を救えるはずです。それまで待ってください」


 ソワナの意見は大輝達には身に染みてわかっていた。だが、その方法を探す前に被害が増えてしまうのだ。現状況としては、魔物達の叫び声でまた魔物が発生するという感じになっているが、それ以外にも普通に魔物にはなり得てしまうのだ。


 多くの幽霊はまだその欲を知らないだけ。自分の内に秘めたる未練がいつ爆発するかなんて誰にも予想できない。それに、こうしている時間もどこかで発生している可能性も否めない。故に取るべき行動は一つ。魔物達を倒して、まだ無事な幽霊をもとの場所へと戻すということだけ。


 大輝は意を決してソワナに言おうとした時、大輝の前にミリアが出てきた。そして、ソワナに言う。


「お姉ちゃん、その願いを受け入れることは出来ません。お姉ちゃんの気持ちもわからなくはありません。ですが、()()()()()()()()()()。ですから、私達の意見を聞き入れてください」


「......!」


 ソワナは今の言葉でミリアがどれだけ酷いことを言ったのかがわかった。しかし、怒ることはなかった。それはもっともの意見だったからだ。この世界に不可抗力で来てしまったとはいえ、本来はもう干渉すべき世界ではないのだ。今自分達がいるのはこの世界からしたら不純物に等しい。


 故に排除。そういう意味ではないのだろうが、行っていることはそう意味で捕えられてもおかしくはない。だから、ソワナはその言葉に反論の言葉すらも思い浮かばなかった。でもせめて、「出来る限りの人を救ってください」とは言おうと思った。それぐらいなら許せるわがままだろう。


「勇者様方、どうか―――――――――――」


「あの人以外の邪魔者は排除しろ」


 ソワナが言葉を言いかけた時、ソワナの背後の方で男の声がした。するとその瞬間、その場にいた多くの魔物の腹から口が現れ、勢いよく吸い込み始めたのだ。その吸い込みは大輝達の体重すら引き寄せるものだった。となれば、魂だけの存在のソワナはひとたまりもなかった。


「お姉ちゃん!」


「ミリア!」


 ソワナはその吸い込みに体を持ってかれる。そんな光景を見たミリアは思わず叫び、ソワナも呼応するように叫んだ。だがここで、大輝がソワナに向かって太めの糸を飛ばした。その糸によって(ソワナも実体化だったこともあり)ソワナを捕まえることが出来た。そして、ソワナもその糸にしがみつくように体を引き寄せる。


 しかし、当然大輝にも限界はある。もちろん、他の場所にも糸を飛ばしているが、大輝の周りからは多くの幽霊がその糸に捕まることだ出来ずに吸い込まれていく。そしてまた、魔物の方に変化はあった。


「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!」


 魔物は声を上げながらその肉体を段々と収縮させていく。どうやら幽霊を取り込んで吸収しているようだ。それからどんどんと人らしい姿に変えていく。大輝が戦った冒険者の魔物と同じだ。だが、違う点があるとすれば、その魔物よりも段違いに強くなっているということ。


「邪魔だな、切れ」


「ア"ア"ア"ア"ア"」


「やめろおおおおおおお!」


 男は魔物にそう命令すると糸の近くにいた魔物が爪でその糸を切り裂いた。その瞬間、大輝の重たかった腕は一気に軽くなる。ほぼ全員が糸が切られたことで吸い込まれていった。その中にはソワナもいた。大輝はそのことに顔を顔を青くする。


「お姉ちゃん!」


「ミリア!......強く......生きて」


「嫌ああああああああ!」


 ミリアの声も虚しく、ソワナはその魔物に吸われていった。その光景を一切逃さずミリアは見てしまった。その瞬間、魔物は黒々しく発光してその肉体を完全な人の形状へと変化させた。


「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!!」


 その魔物は衝撃を帯びた咆哮を上げた。

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