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好奇心で異世界への魔法陣に飛び込んだら青春を謳歌しました!  作者: 夜月紅輝
第8章 いつも気がつく時には思い足らず
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第118話 別で蠢くもの

評価、ブックマークありがとうございます。励みになります(*^-^*)

 大輝とカオスが大聖堂に戻ってくると同じタイミングでミリアも現れた。そのミリアの表情は切羽詰まったような顔をしていて、大輝はその顔を見て思わず嫌な想像をした。だが、大輝は軽く息を一つ吐くとミリアへと声をかけた。


「ミリア、落ち着いてくれ。何があったんだ?」


「そ、それが、お姉ちゃんが突然いなくなったんです!どこへ行くときもいつも一言声をかけるのに......大輝様はどこかで見ていませんか?」


 大輝はその言葉で思わず頭を抱えそうになった。だが、そのような行動はミリアの不安を煽るだけ。なので、出来る限り自然体に且つ不安を抱かせないように。しかし、嘘はついてはいけない。それを見抜けないほどミリアは間抜けではない。


「すまん、見てないんだ。けど、魔力を探ればおおよその位置はわかる。この人がいればな」


「大輝様、その人は?」


「この人はカオスという女性だ。俺達の家で勝手に住み着いていた幽霊さ。そして今は、カオスから現在の状況を探ってもらっている」


「まあ、そういうことだ。どーんとあたいに任せろ」


 カオスはそう言うと拳で胸を自慢げに叩いた。その言動でミリアはカオスが信用できる人だと見抜いたのか、それ以上カオスの話題には触れずに話を進めた。


「それで、大輝様。今外の状況はどうなっていますか?私に出来ることがあるならば、なんでも言ってください」


「なら、大聖堂へと民衆を避難させてくれ。それが無理だったら、出来る限り建物からでないように。それから黒い化け物が現れた。そいつには近づかないようにと伝えてくれ」


 大輝は欲に飲まれた幽霊を「黒い化け物」と呼称した。嘘はついてはいけないと思っているが、これだけはミリアに深刻なダメージを与える気がした。だから、ミリアには幽霊とそのにいる魔物が別であると認識してもらうことにした。それが正解だとは思わない。その選択で傷つけてしまうことは十分に理解してる。


 するとその時、大輝はカオスに手を置かれた。つまりは「本当にその選択でいいのか?まだ今なら間に合うぞ?」というものであろう。だが、俺はカオスの方へと向くと無言で頷いた。そして、ミリアが「わかりました」と答えると大輝達は大聖堂を出て、魔物の討伐へと向かった。


**********************************************

「やっぱ、つえな。けど、待ってろ。今すぐ解放してやる」


 俊哉は目の前にいる黒い魔物の攻撃を剣で受け流す。そして同時に、剣を滑らせるように動かしていき、胴体を思いっきり切りつけた。その瞬間、魔物は叫び声をあげながら散っていく。そんな光景をかれこれ5回以上は見た。


 その度に胸が苦しくなり、敵への憎悪が湧き上がってくる。しかし、俊哉はその憎悪を払拭するように頭を横に振った。これ以上は自分が善良な魂を切ったことを考えてはいけない。それを考えてしまったら、また来てしまう.....痺


 俊哉はふと横にあるショーウィンドウに映る自分の姿を見た。醜いものだ。それは自分の肉体に関して。


 だが、そのショーウィンドウに映る俊哉の姿は別段変わった様子はない。当然だ、隠しているのだから。そして、俊哉はふと思い出す。それは丁度、自分の屋敷に戻ってきた時のことだった。


 俊哉はあの砂漠の国以来、ずっと右腕に痺れを感じることを大輝達に隠していた。そして、海の国で大輝と共に温泉に入った時にはもう右腕の感覚は僅かしかなかった。


 また、砂漠の時には手首に僅かなあざのようなものが出来てるだけだったが、海の国に至るまでにそれが肘あたりまでに広がっていた。そして、自分達の家に戻ってきた時、俊哉はふとその腕がどうなっているのかが気になった。これまでいろいろと見るタイミングは合ったのだが、怖くて目を背け続けていた。


 だが、これ以上逃げることはやめた。その行動理由は大輝の存在が大きい。大輝は今複数の気持ちに対して、必死に自分の気持ちを探って、相手の気持ちを受け止め考えてる。またそれだけにとどまらず、勇者としての立場、言動に関しても出来る限りの注意を払っている。


 自分とは違いそれだけの多くの悩みを投げ出さずに考え、行動し続けている大輝の姿に俊哉は心を打ちつけられた気がしたのだ。だからこそ、まずは今自分自身の現状を確かめる意味でも、そのあざがどうなっているのか見ようとしたのだ。


 そして、俊哉は鎧を脱ぐと包帯を取る......までもなかった。


『ははは......なんだこれ......』


 俊哉が鏡で自分自身の体を見ると乾いた笑いが出た。それだけもはや、手遅れに近かったのだ。タンクトップ姿の俊哉の上半身の半分以上が幾何学模様なあざに覆われていた。右腕、両肩、胸、首と後少しで上半身があざに覆われる所まで広がっていた。


 しかし、その時には痺れのような感覚には襲われなかった。その感覚に襲われるのは基本的に大輝達と話している時だけ。そして、このあざの症状を俊哉は大輝達にずっと言えずにいた。だが、それは俊哉にとって仕方がないことだと済ましていた。


 それは俊哉にとっては当然の結論であった。原因もわからないのに助けを求めてもそれは相手に迷惑をかけるだけ。だからこそ、自分で解決できる可能性があるうちは言わないことにしていたのだ。それに、一番相談しやすい大輝に負担をかけたくなかったという気持ちもあった。


 先ほども言った通り大輝は様々な気持ちを抱えている。そして、その気持ちは長く考えてもどれもそう簡単には決着がつかない難題ばかり。そんなところに自分でも解決の糸口が見つからないのを頼ってどうなるというのか。それはただ大輝の負担を増やすだけ。


 そして、今ショーウィンドウでもう一人か

俺と向き合いながら、今もこのことを誰にも言えずにいる。


「クソ......また痛みが強くなってきた。仲間を心配することすらダメというのか」


 俊哉は思わず左手で自分の右腕を殴った。だが、そこに触れた感覚すらほとんどない。しかし、右腕は動かすことが出来るという意味不明な状況に俊哉は苦悩していた。あの姿を思い出すたびに自分が自分でなくなっていくようなそんな感覚。もはやあれは自分なのかと疑ってしまう。


 俊哉はそのことを深く考えることを止めた。わからないことをわかるように探っていくことは悪いことじゃない。しかし、今は優先度が違う。やるべきことが分かっていることを潰していった方が、建設的だ。


 俊哉は精霊に誘導してもらおうと声をかけようとした。だが、その精霊は俊哉を避けるように、でも遠ざかり過ぎない位置にいた。これはあざが出来始めた時から起き始めたことだ。仲が良かった精霊のことだ嫌いだから避けているということではないのだろう。そして、その原因はおそらく.......


 俊哉はまた頭を横に振った。思わず考えてしまっている自分を正気に戻すかのように。そして、精霊に声をかけて大輝のもとへと案内してもらった。


「大輝、ここにいたか」


「俊哉か、他のあいつらは?」


「わからん、一緒じゃなかったしな。だが、俺達があいつらの力を一番知ってるから.......って、俺が良いこと言おうとしてる時に」


「どうした?」


「なに、あいつらが来ただけさ」


 そう言って俊哉が指を向けた先にはこちらへと向かってくる香蓮達の姿があった。そして、大輝と俊哉のもとに来た香蓮達は総じて気まずそうな顔をしている。「おそらくはこの現状を知っているからの表情なのだろう」と俊哉は推測した。


 するとまた、香蓮達と反対側からの方向からミリアもやって来た。そのことに大輝は思わず驚いた声でミリアに尋ねた。


「ミリア、どうしてここに!?」


「私、お姉ちゃんの姿を見たんです。しかも、お姉ちゃんはなにか焦ったような表情をして移動していて、私は気になって追いかけたんですが見失ってしまって......その時、大輝さん達の姿を見つけたのでここへと向かってきたんです」


「そうか、そういうことなら仕方ない。なら、今すぐどこか安全な建物内に避難してくれ。ソワナに関しては俺が何とかする」


 大輝がミリアにそう言うが、ミリアはその言葉を聞いてからも動こうとはしなかった。まるで何かを伝えたがっているかのように、その場で立ちすくんでいた。そのことに大輝は思わず尋ねる。


「どうした、ミリア?」


「......そう言うと思ってました。ですが、お願いです!私をお姉ちゃんのもとまで連れてってください!」


「......!」


 大輝は突然のミリアの言葉に目を開かせた。だが、さすがにその言葉を受け入れることは出来ない。わざわざミリアを危険にさらすなんてことは。だから、大輝はあえてミリアに強めな言い方で返した。


「ミリア、ミリアがここまで襲われなかったのは単に運が良かっただけだ。だが、その先はどうにかなるとは思えない。俺達が必ずしも守れるわけじゃない。そのことはミリアでも分かっているはずだ」


「はい、わかっています。そして、これが自分のわがままであることも。ですが、それでも私は前に進まなきゃいけないんです。ここで会いに行かなかったら、私の時間が止まってしまうような気がするんです。だからどうか、お願いします」


 ミリアは大輝に向かって恭しく頭を下げた。その行動に大輝は思わず怯む。すると、カオスが大輝の肩に手を置いて話しかけた。


「お前さん、私が守ってやるよ。この魂にかけてもな。だから、行かせてやってあげな。この子もお前さんと同じで止まらない道を選んだんだ」


「......分かった。けど、すぐに危険が迫ったら教えてくれ。すぐに行く」


「あいよ」


「大輝様、ありがとうございます」


 ミリアは大輝の顔を見るともう一度頭を下げた。それから、大輝達は簡単に情報共有をするとより魔物が発生しているというエリアに向かった。

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