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好奇心で異世界への魔法陣に飛び込んだら青春を謳歌しました!  作者: 夜月紅輝
第8章 いつも気がつく時には思い足らず
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第114話 欲しい言葉

評価、ブックマークありがとうございます。励みになります(*´▽`*)

 大輝はカオスから災悪の本当の黒幕を聞くと気持ちの整理がつかず、聞いてからしばらく浮かない顔を続けていた。そして、結局つかないまま一旦、カオスと別れると大聖堂の方へと向かっていた。とりわけ、ミリアにこの気持ちを吐き出したいわけじゃない。ただそこが居心地が良く、一番気道の整理がつけやすいというだけなのだが.......


「大輝様、お悩みがあるでしたら聞かせてください」


「ふふっ、ミリアがこんなにもやる気に満ち溢れてるなんて、昔では考えられなかったわ。それとも......勇者様のおかげかしら?でもそうね、ミリアの言う通りだと思うわ」


「......はあ」


 大輝は思わずため息が漏れ出た。本当は自分に整理をつける予定だったのだが、こうも圧がすごいと黙っていることも難しいだろう。それに黙っていたとしても、話すまでこの圧を続けるだろうと思われる。しかし、内容が内容だけに話していいものなのか?


 災悪の黒幕はわかった。だが、それをありのまま伝えることは悲劇の原因を生みかねない。もちろん、ミリアが激情にかられて「魔族と戦争です!」なんて言うとは思わないことはもちろん分かっている。しかし、それであっても伝えるのは酷だ。自分自身がこれだけ心の整理に時間がかかっているのだ。それがこの国で育ってきたミリアなら言わずもがなであろう。


「はあ......」


 結局、何と言ったらいいかもわからない。考えれば考えるほど、心がかき乱れていく。精神がすり減っていくような感じだ。それに、カオスからこの話を聞かされてからろくに探索も出来ていない。だから、ソワナも隣にいるのだ。


 大輝はもう少し言葉を探すために時間を稼ごうとミリアに話題を振った。


「そういえば、ミリアはソワナさんに会っていろんなこと伝えられたか?」


「はい。こんなことが起こっていて言うのもなんですが、こうしてお姉ちゃんと話せるようになったことを嬉しく思っています」


「まあ、ミリアったら。お姉ちゃん大好きなんだから」


「ちょ、そんなこと言うのやめてください!大輝様、違いますからね!?」


「まあまあ、そんなにあせっちゃって。相変わらず可愛いわね」


 ミリアが正直に心の内を吐露した瞬間、ソワナによっていじられる。なんか上下関係が見えた気がする。もちろん、姉と妹という関係性を除いてではあるが。それにこんなにも勝てないミリアを見るのは初めて......いや、一人いたな。もしかしたら、ソワナはエミュと同じタイプなのかしれない。


「でも、まだまだ伝えきれていないことはたくさんですよ。ですから、また消えてしまう前に話せることは話したいのです」


「......っ!」


 大輝はその時のミリアの言葉と表情がとても印象深く映った。それは悲しみを堪えながら、無理やり笑みを浮かべている表情。口元は不自然に歪み、目元には笑った時のしわが見られない。その表情を見た大輝はなにも返す言葉が思い浮かばなかった。


 ミリアはソワナの死をしっかり受け止めようとしている。一度消えて、蘇った命。消えた時に思い出とともに封印したであろう姉への気持ちが、きっと爆発してもおかしくないだろうに、「また消えて欲しくない」や「もっとそばにいて」という欲望を押さえながらその気持ちを再度封印しようとしている。


 おそらく二度目の封印は一度目よりはるかに辛いだろう。せっかくまた会えた気持ちを押し殺して、また消えていくまでにその気持ちにケリをつけるなど。会えた喜びがあるからこそ、その難しさを跳ね上げている。


「そっか、たくさん話せよ」


「はい、そうさせてもらいます」


 大輝はやっと吐き出した言葉がそれであった。自分でもどうしようもないほど愚かな返答かもしれない。もっと送れた言葉があるはずだ。なのに、自分はこれだけしか送ることが出来なかった。そのことに無性に悔しさが残る。


 すると、大輝はふと頭を誰かに抱えられた。そして、そのまま引き寄せられ顔の反面に柔らかい感触と甘い香りが漂う。その手のぬくもりからはとても優しさが伝わってきた。まるで自分の悪しき心が浄化されていくように。


 それを行ったのはソワナであった。霊体にも関わらず、まるで母親かのような温もりは大輝を酷く安心させた。


「私の気持ち、伝わりましたか?勇者様は頑張っておられます。それはミリアから伝わってきました。それに勇者様の記憶からもその辛さがジクジクと伝わってきました。その辛さを私がどうこうすることが出来ませんが、同情することはできます。よく頑張りましたね」


「......!」


 大輝はその言葉に思わずハッとさせられると感情が高まってきた。これまで命を張って災悪を倒して、人々から感謝されることが多かった。当然だ、人々の害悪を払っているのだから。しかし、それまでの頑張りを褒めてくれる人はいなかった。


 もちろん、褒められるために鍛え続けたわけじゃないし、選択し続けたわけじゃない。そのことはわかっている。でも、そこを評価してくれた人はこの人が初めてであった。そのことが無性に嬉しかったのだ。


「ミリア、ここからはあなたの番よ」


「.......分かりました」


 ミリアはソワナの言葉の意味がわかった。つまりはミリアという一個人ではなく、聖女としての番がきたということ。そして、これはミリア自身がもっとも大輝にしてあげたかったこと。


 いつも大輝達にこの国の、ひいてはこの世界の運命を握る戦いをしてもらっていて、自分は何もできないことを歯痒く思っていた。女神から神託を受け取るのは、勇者業に一番貢献していると思われるが、それでも言ってしまえばそれだけだ。それ以外は無事に帰って来ることを願うのみ。


 それしかできなかった自分をどれだけ責めたことか。もちろん、本当はついて行きたい。しかし、それでは足手まといにしかならないのではないか?災悪を討伐してもらうことにあたって、それだけは一番してはいけないことだ。


 きっと大輝のことだ。「そんなことはない」と言ってくれるだろう。しかし、ついていったとして、一番自分を責めるのは自分自身であろう。それで足を引っ張る、最悪なことでしかない。


 だからこそ、こうして聖女として本体の役割を果たせることを、それで日頃の恩返しができることをミリアは嬉しく思った。


「大輝様、いつもありがとうございます。私、知ってるんですよ。大輝様が毎日一生懸命鍛錬してくれていることを。その努力のおかげで私達は日々生きながらえているかもしれません。そう考えると大輝様には感謝しかありません。ですが、この時にかけて欲しい言葉はこれではありませんね」


 ミリアは大輝の顔をそっと持ち上げて、目線を合わせると静かに抱きしめた。その行動に大輝は思わず固まった。そして、ミリアは大輝の耳元に囁きかける。


「大輝様、頑張ってくれてありがとうございます。私はそんな大輝様を慕っております」


「......!」


 ミリアはその言葉を囁いて数秒後、大輝の両肩を掴んで大輝からバッと体を話した。そして、その顔を急速に赤面させていく。その表情は「あれ?なんか感極まって余計なことまで言ってないか?」といった感じであった。


 ミリアは先ほどの言葉をゆっくりと繰り返す......あれ?言ってないか?「慕ってる」とか言ってないか?気のせいか?気のせいであって欲しい?そうしないと姉の前で告白していることになってしまうから!


 ミリアはもはや希望的観測を持って、姉のソワナの方を見るが。ソワナは両手で口元を覆いながら目を見開いた状態で固まっている。そして、ミリアの視線に気づくとゆっくりとサムズアップした。そのことにミリアは顔から蒸気が出るかのように顔が真っ赤になった。


「ち、ちちち、違うんですよ!?こ、これはー、そのー、あれがこうなって、どうなってからにして、だからこうで――――――――――」


「落ち着いて、ミリア。わかってるわ、お姉ちゃんはちゃんとわかってるから」


「そうですか、ならよか―――――――――」


「つまりは勇者様が大好きなのね」


「全然わかってないですぅ――――――――!」


 ミリアはもう頭が回転していないのか目をグルグルさせたままソワナの言い分に抗議する。しかし、その全てが笑ってごまかされるか、スルーされる。なんという羞恥であろうか。幸いなのは、未だ大輝が固まった様子であるということか。


 しかし、それですらソワナのネタにしかならない。となるとここで取るべき行動は一つしかないだろう。


「お姉ちゃん!私、ちょっとのどか湧いたから部屋に戻ります!」


「あ、それならここに――――――――」


「戻りま―――――――――――す!」


 ミリアは大輝をソワナへと預けるとこの場から逃げるように走り出した。そんなミリアの様子を微笑ましそうに見つめながら、大輝へと話しかける。


「ふふっ、騒がしい妹でごめんなさいね」


「い、いいえ、大丈夫ですよ。ミリアの表情もだいぶ柔らかくなったような気がしますし」


「あら、ミリアと同じようにタメ口で構いませんよ。それにミリア......ね。あの子の表情をあそこまで柔らかくしたのは勇者様ですよ」


「俺は大したことはしてないよ。どちらかというと、ミリアにいろいろと愚痴を聞いてもらったばかりで、本当にそれだけ」


「あら、そうなの?じゃあ、先ほどのミリアの言葉をどうにも思っていないということ?」


「それは......」


 大輝はその言葉に思わず詰まった。ミリアが言った言葉はおそらくあの船でセレネが言った言葉と同じ意味合いだろう。もちろん、うぬぼれが無ければだが。しかし、だとすると、どうしてそこまで自分のことを好きになっていくのだろうか。ミリアを除いても少なくとも四人の人物が自分に好意を寄せてくれている。


 そして、大輝はソワナの顔を一瞥するとその心の内を吐き出し始めた。

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