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第110話 マジか

MAGIKA


評価、ブックマークありがとうございます。励みになります(*^-^*)

 大輝達がコソコソと進んでいくと開けた空間が見えてきた。その空間にはあまり隠れられそうな場所はない。というか、それ以前に隠れられないほどの人数になってきているが。とはいえ、やはり捕まえた海人族を解放しに回っていることがバレれば、自分達ではなく海人族の女性達に被害が及んでしまう可能性がある。


「セレネ、あの距離まで魔法を届かせられるか?」


「ごめんなさい、無理ね。せめてあの岩陰まで進めればいいのだけど......」


 そう言って指差した先はその空間の中心付近にある鍾乳洞。あれなら一人ぐらいは隠れられそうだ。しかし、それまでに隠れれる障害物がない。全くないわけではないが、セレネが隠れるには厳しい大きさだ。せめてもう一、二回り小さくないと。


 そうなると誰が適任かとなるが、誰もいないのではなかろうか。少なくともどちらか一人はこの女性達を護るためにこの場に留まらなければいけない。そして、もう一人はその場にいる男達を片付ける。そして、それが出来る適任者がセレネなのだが、それはたった今さっき無念にも絶たれた。


「セレネ、小さくなれたりしないか?」


「バカ言ってんじゃないわよ。それができたら苦労していないわよ」


「ということは、少なくとも手段の一つとして考えてはいてくれていたんだな」


「......変なところで察しの良さを出すな、バカ大輝」


 セレネは思わずツンツンとした言い方になっているが、その表情はあまり怒っているようには見えない。むしろ、にやけ面を隠すためにムッとした顔になっているぐらいだ。するとその時、一人の少女が手を上げた。その少女は一番最初に助けた少女だ。


「私が、注意を引きます。あそこに隠れて石を投げるだけです」


 少女はそう言うが、当然大輝とセレネがその提案を了承するわけもなく.......


「いや、ダメだ。危険だ。せめて防衛手段を持っているなら未だしも、それを持っていない以上は許可できない」


「そうね。それに助けた人を危険なところに向かわせるっていうのもね......」


「大丈夫です。私なら大きさ的にもバレませんし、勇者様なら私のことも護ってくれますよね?」


「うぅ......それは......」


 大輝はあえて口調を強めで言ったのだが、その少女にはまるで届いていない。それどころか勇者という立場を逆手に取ったような言葉を告げた。そのことに大輝は思わず言葉が詰まる。そして、セレネからは「なに言いくるめられているのよ」という視線を受ける。


 だが、このまま動けないのはそれはそれで問題だ。それから考えた末に、大輝はその提案を了承した。だが、もちろんそのまま行かせるわけにはいかない。その少女の胴に糸を括り付けていつでも回収できるようにした。


 そして、その少女は談笑している男達の目を盗みながら前にゆっくりと這って進んでいく。それから、途中で大きめの石を拾うとその鍾乳洞に隠れた。


 少女は一瞬の隙をついて投げる。その意思は音を反響させながら転がっていく。すると、男達が大輝達の方から完全に目線を外した。その隙にセレネがササッと移動する。そして、すぐに魔法を発動させた。


 その瞬間、男達は黒い手に股間を殴られ悶絶しながら倒れた。この攻撃は最初から変わらずし続けていることだ。この攻撃が手っ取り早く沈められるということらしく、その理由も男ならよくわかるのだが、正直言うと大輝にとって当然気分がいいものではない。見ているだけで幻痛がしてくるぐらいだ。


 そして、大輝はササッと縛って動けなくしていくと次の場所に移った。それから、辿り着いた先は大勢の男達がいた。つまりは敵の本拠地。そこには隠れられる場所など一つもなく。住みやすく整備されている。


 こうなるともうどうしようもない。残された道はバレて暴れまわるぐらいであろう。するとその時、前方にふとよく知る気配を感じた。その方向を見ていると一人の男と目が合う。俊哉だ。俊哉も何らかの方法でここに辿り着いたようだ。


 しかし、そのことを知るのは後でいい。今はこの状況を打破するのみ。そして、俊哉はアイコンタコととジェスチャーを交えながら話すと大輝はセレネに告げた。それは「この人達を任せる」といこと。そのことにセレネはため息を吐きながらも送り出した。


「よう、お前ら、すげーいいもん食ってるじゃねぇか」


「だが、それで最後だ。最後の晩餐を精々楽しめよ」


「誰だお前らは!」


「すぐに捕まえ......ぐふぇ!」


 大輝は一人の男に近づくと腹に一発。それでその男は沈んだ。すると、大輝はその場にしゃがみ込む。それは切り裂こうと剣を振った男の攻撃を避けるためだ。そしてすぐに、足を払って顎を殴った。


 同時に聖剣を引き抜くと頭上に掲げた。そして、真上から来た剣を防ぐとそのまま流して、裏拳で吹き飛ばした。それらは全て数秒の出来事。その数秒で三人の男を動けなくさせた。それは他の男達に衝撃をる結果となった。つまりはビビったのだ。


「大人しく捕まるだったら痛い目見ないで済むぜ」


「ほう......なら、是非味あわせてみせろよ。まあ、出来ればだがな」


 すると、一人の男が返答をした。それはいかにも船長であろうというぐらい顔に傷の入った男であった。その男はサーベルの背で肩を叩きながら歩いていく。


「お前がこの海賊の船長か?」


「そうだと言ったら?」


「お前を捕らえる」


 大輝は間合いを詰めると聖剣を振るった。だが、それは簡単に受け流される。しかし、その攻撃は相手の力を測ったもの。次の攻撃が本命である。そして、大輝は魔剣を握りしめると横なぎに振るった。


「!」


 だが、それすらも受け流された。一気に叩いかけていくが全て受け流される。しかも、こちらでも力を与えられていないと感じるぐらいに。このままではただ無駄に体力を消費するだけと判断した大輝は、一度その船長から離れる。


「おう、なんだ?お前のその剣からして、お前は勇者なんだろう?勇者がこのザマとはたかが知れるってもんだよな?」


 船長が大輝を煽るように言うと周りの男達は笑った。まるで船長が勝つことを疑っていないように。だが、大輝はその煽りに関して何も言い返さなかった。何も響かなかったからだ。この船長はまだ本当の恐怖を知らない。いつ死んだっておかしくない災悪との戦闘経験を知らないから。


「なんだ?何も言い返さないのか?もしかして、ちびって動けないのか?」


「お前に言えることなんて何もないだけさ。言ったところでお前には何も伝わらない」


「そうか。まあ、そうだろうな。勇者なんて精々甘い蜜を吸っているだけな存在だろうからな!」


 今度は船長がサーベルを振るってきた。その攻撃を大輝は一つ息を吐きながら、聖剣で弾く。だが、すぐにサーベルを引き戻して振るった。しかし、それすらも魔剣で流していく。


 大輝の目は据わっていた。そして、力の差を見せつけるように最小限の動きで全てを弾いていく。故に一歩も動いていない。そのことに船長はイラ立ちと焦りが込み上がっている表情をして、周りの男達は段々と余裕の笑みを無くしている。また、その隙を俊哉につけ込まれている。


「お前にはわからないんだよ、人の痛みが。だから、人が売れるんだ。そんなお前らを俺はほっとかない。ここで捕えて、お前らの悪行を食い止めてやる!」


「うざってぇ、偽善者が!」


「偽善者で結構。少なくともお前の前では俺は善者であればいい」


 大輝は聖剣で大きくサーベルを弾くと魔剣をしまった。そしてすぐに、左拳を腹部にぶち込んだ。同時に聖剣の柄でサーベルを握っている手を弾く。


「がはっ!」


 大輝は聖剣を鞘に戻すと胴を蹴り飛ばした。そして、先に回り込むと再び胴に衝撃を与えた。その攻撃で船長は悶絶しながら倒れ込む。


「お前は悪いことをし過ぎた。そのツケだと思え」


 大輝は一発顎を殴るとその船長を気絶させた。それから、ふと周りを見渡すと俊哉が余裕層にこちらに手を振っていた。周りにはものの見事に伸びている男達の姿が。その光景を見ると大輝は俊哉に向けてサムズアップした。


**********************************************

「うぅえ~、きもちぃわるいぃ~」


「しっかりしなさいよ、勇者でしょ?」


 海賊一斉摘発から一日が経ち、大輝達は帰りの船便に乗っていた。それまでの流れを簡単に言うと、大輝達がたまたま辿り着いた洞窟で海賊を捕らえている間にクリシュナ達がクラーケンを討伐していた。そして、それらのことをあの姫様に言うと盛大に宴が開かれた。


 そして、船に乗るとすぐに大輝は酔った。そのため現在は自室で寝ている。そのそばにはセレネが大輝の看病をするためにベットの横に座っている。別に大輝が頼んだわけじゃないのだが、なぜか甲斐甲斐しく世話をしてくるのだ。


「はあ~、少し落ち着いた」


「良かったわね」


「でさ、なんでそんなに俺に世話を焼くんだ?」


「そ、それは......」


 大輝がそうセレネに聞くとセレネはおもむろに目を逸らした。なんだ?なにかやましいことがあるのか?もしかして、これを借りとしてなにかを頼むつもりだろうか?


 すると、セレネは何かを決意したように大輝を見る。その瞳に大輝は思わず吸い込まれる。


「私はどうやら()()()()()()()らしいのよ......この意味わかる?」


「確か、エルフの森で言ったことだよな?そこまではわかるが、それがどんな内容かは覚えてない」


「そう。なら、ちゃんと聞いてなさいよ」


 セレネは一回大きく深呼吸をすると大輝に向かって指を指した。そして、宣言する。


「私は大輝のことが好きよ。あんたの事情はもちろん知ってる。その上で好きになったの。どうせあんたのことだから、もとの世界の戻るときのことを考えてるんでしょ?なら、そんなことを考えられなくぐらい、人族も魔族も関係ない、あんたを私に惚れさせてみせるわ」


 セレネはそれだけ言うと立ち上がって、部屋を出た。そして、扉を閉めると大輝の部屋から逃げるように走り出した。


 そんなセレネの言葉と様子を物陰でたまたま香蓮は聞いていまった。

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