第109話 辿り着いた先は
どこかの海にいったら一度はある話
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「いたたたた.....」
「うぅ......ここは?」
大輝とセレネは気が付くと知らない洞窟へと辿り着いていた。おそらく海流に乗ってここまでやって来たのだろう。そう思うと大輝はセレネとはぐれなかったのは幸運とも感じた。......ところで、ここは一体どこなのだろうか。流されてきたであろう海の方を見るが、見える範囲では場所が特定できるような目印になるものはない。
それに、先の方は霧がかかっていてよく見えない。また、波も荒いので、泳いでいこうとしてもすぐにもとの位置に戻されるだろう。となると、この洞窟の先に進むしかなくなるわけだが......
「セレネ、大丈夫か?」
「待って、少し時間を頂戴」
セレネの様子が先ほどから変である。じっとうずくまったまま頭を抱えて、少し肩を震わせているようにも見える。まあ、無理はない。こんなところに二人っきりなのだから。それは不安にもなるだろう。しかも、ここは何にも知らない場所なのだから。
そんなことを思ってセレネが落ち着くまで大輝が待っている一方で、セレネは全くそんなことに不安がってはいなかった。いや、二人っきりという状況はある意味では問題があった。それはもう言わずもがなと言ったところであろう。
不安がっているとすれば、この状況を二人、もとい三人に知られることだ。そうなれば、まずめんどくさいことになるのは間違いなし。まあ、この状況が喜ばしくないと言えば、嘘になるけども......って、そんなことは今はいいでしょ!
セレネは一度深呼吸する。だが、鼓動は早く。顔も熱い。少しでも考えてしまったのがいけなかったのか。ならもう、大輝にバレないように平静を装うしかあるまい。
「大丈夫よ、待っててくれてありがとう。さあ、先を進みましょ」
「そうか。なら、行こう」
大輝が先行しながら周囲を確認していく。見た所は自然でできた感じだ。だが、時折自然っぽくないものが落ちていることがある。それは鉄だったり、果物の皮だったり。骨なら未だしもそれらはさすがに不自然だろう。なんせここまで波は届かないのだから。
もちろん、全くそうならないとは言えない。この地域の気候は知らないので、嵐に見舞われれば、当然波は大きく荒れてここまで入ってくることはあるかもしれない。しかし、それでも不自然と思う。なぜならその果物の皮は見た感じでは新鮮さが残っているのだから。
大輝はとりあえずそのことを頭の隅に入れときながら、先を進んでいった。未だ反応はないが、ここには何かが住んでいると思ってもいいかもしれない。
「それにしても、寒いわね。日が出てないせいかこの中もだいぶ冷え込んでるし」
「そうだな。それに段々と暗くもなってるし、俺が火を灯すよ。それなら、セレネも同時にあったまれるだろ?」
「そういう意味で言ったわけじゃないんだけど......ありがとう、助かるわ」
大輝が左手から火を出すとセレネはその火に両手を当てて温まり始めた。そのじんわりとした柔らかい光は大輝とセレネを落ち着かせた。
「フラン、能力増幅してくれ。もう少し反応を探りたい」
「了解じゃ」
フランによって大輝の探知能力が上がると大輝は改めて周囲を探った。すると、進んでいる先に微かな反応を見つけた。そして、大輝はセレネに静かにするようにジェスチャーすると岩陰に隠れながらその気配の正体を見た。
すると、そこの檻にいたのは上半身は人でありながらも、耳にはひれのようなものがあり、下半身は魚のようになっている。その姿は人魚そのもの。つまりは海人族ということだ。
しかし、その少女は気を失っているのか動く気配はない。大輝達はコソコソと動くとその檻へとやってくる。ここら周辺に他の気配は感じられない。だが、ここに海人族がいるということはこの洞窟は絶対に何かあるはずだ。
大輝は檻の柵を掴むと広げようと力を入れた。だが、当然の如く思ったようには開いてくれなかった。セレネにはやや白い目が向けられているが、大輝は一回咳払いして気を取り直すと人差し指だけ伸ばした。そして、その指の先から高温の炎をブレードのように出すと人が入れるぐらいに柵を切っていく。
それから、音を立てないように切った柵の一部を置くとセレネが中に入っていった。
「ねぇ、大丈夫?」
セレネはその少女を揺さぶって確認してみるが、反応はない。しかし、大輝にそのことを確認すると生きているということなので、大輝から受け取った気付け薬を少女に嗅がせた。すると、その少女は僅かな声を上げてゆっくりと目を開けた。
「うぅ......ひっ!誰!?」
「あー、安心してっていっても不安でしょうね。ほら、大輝、証拠を見せて上げて」
「これでいいか?」
大輝が見せたのは聖剣。正確に言うと聖剣の鞘についた女神の紋章だが。すると、それで自分達が勇者であるということが伝わったのかその少女は気を許してくれた。
大輝は聖剣を戻しながら「相変わらず凄いな」としみじみと思った。それは聖王国の影響力。エルフの国を除けば、今までいったどの国でも自分達が勇者であるということが伝わる。ましてや今は水着姿だ。それなのに聖剣を見せただけで、こんな少女にも伝わるとは......
「それで、私達はあなたを助けに来たのだけど、何があったの?そのことを答えられる?」
「私は海で遊んでいたら、突然大勢の人に襲われて.......気が付いたらこの洞窟に連れ去られていて、他の人達もみんな手枷をつけられて!連行されていて!!それでそれで!!!」
「落ち着いて、大丈夫よ」
少女はその時の恐怖を思い出してか思わず身を縮こませて、震えた。すると、セレネがそんな少女に優しく抱擁する。そして、優しく声をかけながらゆっくりと頭を撫でていく。すると、その少女も落ち着てきたのかゆっくりと落ち着きを取り戻していった。
「それにしても、どうしてあなただけこんな場所に?それにあなた達を襲った人物って?」
「私達を襲ったのは人族でした。そして、私だけがここにいるのは私が病気になったせいで、『売り物にならない』って言われて、それで......」
「そう酷い奴らね。大丈夫よ、必ずやっつけてあげるから.....大輝が」
「そうだな。勇者の俺が保証してやるよ」
大輝が拳で胸を叩きながら誇らしげに言うとその少女は初めて笑った。だが、すぐにその症状は辛そうに咳をした。すると、それを見た大輝は今度はポーションを取り出した。そして、それを少女に飲むようにいって渡す。
そのポーションを飲んだ少女は自分の咳の症状が引いたこととのどの痛みがなくなったことに驚いた。そして、大輝達が立ち上がると同時に少女も立ち上がる。
「さあ、仲間を助けに行こうか」
「うん!」
大輝が元気に声をかけるとその少女は大輝に懐いたようにピッタリとくっついた。そのことにセレネは思わずジェラシーを感じてしまった。いけない、いけないこんな小さな子にこんな気持ちを抱くなんて、器の小ささが知れるわ。それに、もう小さい時の気分は味わったし。
それから大輝、少女、セレネといった順で進んでいく。しばらくすると、複数の気配を感じた。なので、壁からこっそりと覗くと複数の男が辺りを巡回している。
そこに大輝は合図した。それはセレネに向けてのことだった。するとセレネはその合図に了承するように頷くと魔法を発動させた。
「なあ、お前の後ろになんか黒い手が見えるぞ?」
「はあ、何言ってんだ?」
「ほんとだって、なあ?」
「ああ、そうだな。というか、お前だってそうだぞ?」
「お前もな」
「おーい、どうしたって......うわああ!?なんだそれは!?新手の嫌がらせか?」
「「「「いや、お前だけ数多すぎ!!!」」」」
「「「「「ぎゃああああ!!!」」」」」
セレネの魔法によって、男達の陰から黒い手が出現した。そして、男達がわちゃわちゃしているうちにセレネがその男達を襲って気絶させた。
それから大輝がササッとその男達を縛り上げて、鍵を頂戴した。
大輝は気配を頼りに歩いていくと複数の小さな気配が確認できた。その場所に向かうと檻の中に多くの海人族がいた。そして、先ほどと同様に柵を切断していく。全員、衰弱していたので、同じようにポーションを与えながら。
それからそのようなことを繰り返したいるといつの間にかとんでもない数になっていた。一体どれほどの数を攫ってきたのだろうか。しかも、この人達を全員売るつもりだという。こんな美人、美少女達になんてことをしようというのだ。これは男として成敗しなければならないな。
「なーに鼻の下を伸ばして、鼻息を荒くしてるのよ」
「そりゃあ、男だからな」
「ドヤ顔で言うことじゃないでしょ......はあ......」
セレネは思わずため息を吐いた。これでも好きなのだから驚きである。しかも、この気持ちを吐き出したいという気持ちもある。常に燻ぶり続けている。これは考えものだろう。
「時間は有限よ。早く行きましょ」
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