第108話 討伐クラーケン
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大輝はクラーケンの周囲を動きがながら間合いを測っていく。そして、クラーケンの後方に回り込むとセレナが<影の手腕>で黒い手を出現させ、それを手刀の形に変えていく。
「影尖銃」
セレネはいつかに聞いた大輝の世界にあるという武器を思い出しながら、その手刀を射出した。すると、その手刀は真っ直ぐと海上を飛んでいき、クラーケンへと突き刺さる。しかし、大したダメージにはなっていないようで、歯牙にもかけられていない。そのことにイラッとしたセレネは複数の黒い手を一つに合わせていく。
「これならどうよ!」
「ギャシャアアアアア!」
セレネは象ほどの大きさにもなる黒い手の手刀を作り出すと思いっきり放った。その手刀は深々とクラーケンの胴体を抉っていき、クラーケンは思わず叫び声をあげた。
一方、エミュと香蓮のペアと俊哉と茉莉、レオのペアの方でも動きがあった。まずエミュと香蓮の方では、エミュが操作しながら空気を思いっきり吸って、後ろでは香蓮が居合切りの構えで目を閉じて集中させている。
そして、エミュは全ての空気を吐き出すとともに大気を焦がすような炎を吹いた。そのことにクラーケンは足で海を叩いて水の壁を作った。すると、炎が直撃した瞬間、その水は一気に蒸発していき辺りを水蒸気で包み隠した。しかし、それを関係なしと香蓮は跳び出すと抜刀した。
「一刀流奥義......雷の流澪」
香蓮が抜刀した瞬間、前方に五つの紫電を帯びた閃光が駆け抜けていく。その閃光は水蒸気でできた霧を晴らしながら、クラーケンの足を切り裂いた。
また、エミュ達と同時進行で俊哉達も動いていた。モーターボートを操作しながら、俊哉は右手を前に向けた。それから、小さいままのレオが俊哉の左肩にうまく乗ってその口を大きく開けている。
「虎怒の咆哮!」
茉莉は矢をつがえたまま自身を含めた三人の攻撃力を上昇させた。そして、俊哉は光線を、レオは衝撃波を、茉莉は一つの大きな矢を一斉に放った。その攻撃はやがて一体となってクラーケンに一直線に向かっていく。
そして、それはクラーケンの足を貫通させながら胴体へと直撃させた。
「ギャシャアア、ギャアアアアアアア!」
クラーケンは耳をつんざくような声を響かせる。だが、それはダメージが通っている証拠。大輝はそれを確認すると畳みかけようと近づこうとした時、突如としてクラーケンは海中へと潜り始めた。逃げたわけではない。それは大輝がしっかりと気配を感じている。
故に、何が起きるのか予想できない。出来ることなら<先見の瞳>を使いたいところだが、未だその習得には至っていない。そのことに大輝は歯を噛みしめた。だが、できないことを考えたことで意味はない。大輝はすぐに思考を切り替えると慎重に動きを探った。
「全員、動き続けろ!海面から足が飛び出してくるぞ!」
すると、気配が一気に急接近していることに気付いた。その影は海を黒く染めていき、やがて一斉に足を突き出した。だが、大輝達はそれを上手く操作しながら避けていく。
「セレネ、迎撃を頼む」
「ええ、任せなさい」
大輝達は突き出された足を避けたが、その足は大輝達を追うように、挟み撃ちにするように動いてきた。その足をセレネは巨大な黒い手で弾き飛ばしていく。
「あぶなっ!」
すると今度は、その足を海面を叩きつけるように動かし始めた。それによって、海はより荒く揺れるようになり、モーターボートでのバランスがとりづらくなった。そして、そんな大輝達に足が振り下ろされた。その足を<超加速>を使った急カーブでスレスレを避けていく。
「セレネ、少しの間だけ運転を変われるか?」
大輝は何かを閃いたかのようにセレネに操作を変わってもらうと大輝は魔力を集中させた。現時点でクラーケンに攻撃する手段はない。それはクラーケンが海中にいるから。なら、当たるかどうかは抜きにして、クラーケンのいる位置にとにかく障害物を落とせば、イラ立って海面に出て来るのではないか?
もちろん、希望的な観測ではあるが、やらないよりはいいだろう。そう思うと上空へと土魔法でとにかく巨大で大きな岩を作り出した。
「岩石落とし」
大輝は空に向けて伸ばした両腕を思いっきり振り下ろした。すると、その動きに合わせてそれらの岩は速度を持って、海面へと着水していった。その勢いで大きな波が発生するが、それはセレネが上手く操作してバランスを取っていく。
「ギャシャアアアアア!」
しばらくすると、クラーケンが大輝の思惑通りイラ立ちの声をあげながら、海面に跳び出した。そして、その足を大きく伸ばすと回転しながら動き始めた。
大輝は剣を構えるとその回転する足を切ろうと大きく剣を振った。
「ぐっ!.....ああ!」
「大輝!?」
大輝の剣とクラーケンの足がぶつかり合った瞬間、大輝は思わず驚いた。それはクラーケンの足が硬質化しているのだ。大輝はしっかりと香蓮と俊哉達の攻撃を見ていたが、あの時は普通に通っていた。ならば、この剣の攻撃だって通ってもおかしくないはず。
大輝はクラーケンの足によって大きく上方に吹き飛ばされた。だが、すぐに体勢を立て直しながら<精霊の瞳>で確認するとやはり先ほどの足には<硬質化>という魔法が使われていた。
すると、クラーケンが大輝に向かって口から水弾を放った。その水弾は多大な質量を有していて、当たればひとたまりもない。だが、それは前までの話。<超加速>によって、空を飛べるようになった大輝には造作もないこと。
そして、軽く躱していくとクラーケンの頭に向かって両剣を振り下ろした。
「双虎砕刃」
炎と風、それぞれで出来た二頭の虎は大輝の振り下ろしに合わせて、クラーケンに走り出した。その攻撃に対し、クラーケンは水弾で防ごうとするが、その動作を周囲にいる香蓮達に止められた。そして、大輝の攻撃がクラーケンへと直撃する。
「ギャシャアアアアア!」
その瞬間、鼓膜に響くような声が響いた。そして、燃えた頭を消すように再び海中に潜る。
「あんた、無茶し過ぎよ。大丈夫だったの?」
「大丈夫だ。こうも巨大な奴との戦闘回数が多かったからか咄嗟でも上手く力を分散できた」
「はあ......全く人の気も知らないで」
大輝は向かってきたモーターボートに着地するとそんなことを言った。そのことにセレネは能天気な大輝に思わずため息を吐くが、それはどちらかというと安堵の気持ちが強かった。すると、大輝がふとセレネの肩に右手を置いた。左手は警戒してか魔剣を持っている。もちろん、大輝の行動はバランスを取る支えにするためだ。
しかし、セレネには関係なかった。いや、わかってはいるのだが、体が思わず反応する。肩にやたら意識が向いてか妙に熱っぽく、感触を感じる。そして、意識を向けすぎて少しバランスを崩した。
「セレネの方こそ大丈夫か?変わるか?」
「いいえ、大丈夫よ。少し気を散らしてしまっただけ」
「集中しとけよ?まだ、倒したわけじゃないんだから」
「わかってるわよ」
セレネは思わず強めの口調で言った。すると、大輝は黙ったまま答えない。それは単に、周囲を探ってのことなのだが、セレネにはそのことで怒ってしまったのではないかと不安になった。
「セレネ、すぐに旋回させろ!」
「え?きゃあ!?」
大輝の言葉にセレネは反応が遅れた。そして、モーターボートが大きく揺れる。それは勢いよく飛び出してきたクラーケンによる波。しかし、大輝にとって問題はそこではなかった。
「やばい、気をつけろ!」
クラーケンは大きく宙に跳び出したかと思うとその頭を反転させて、そのまま一気に落ちてきた。そして、その頭が水面に直撃した瞬間、ビッグウェーブを作り出した。その波は大きすぎて、避けられるものではない。ただ一つの可能性を除いて。
「ど、どうすればいいの!?」
「落ち着け、セレネ。とにかく波を走るんだ!」
「わかったわ」
今からやるのは包み込むような波をサーフィンで通っていくようなもの。それをサーフボードではなく、モーターボートでやるのだ。そして、セレネはすぐさまその波に向かって走っていく。
その波は大輝達を襲うように追いかけて来る。モーターボートのすぐ後ろからは激しい音が鳴り響き続けている。そして、大輝達はなんとか波をくぐり抜けるとクラーケンの姿はそこにはなかった。
すると、セレネは戸惑ったような声を上げる。
「え?嘘......動かない!」
「マジか!......いや、違う。俺達は飲み込まれているんだ!」
そう言って大輝が指し示した方向には、クラーケンが作り出したであろう渦潮であった。そして、大輝達のモーターボートはその渦潮に引きずり込まれていく。
「「わあああああ!?」
それからやがて、大輝達は渦潮の中心にいってそのまま海中へと飲まれていった。
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