第107話 可能性はなくはない
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「で、なんでまたこの恰好なんだ?」
大輝達は現在ビーチにいる。そして、クリシュナ達もまた同じ場所にいる。それから、なぜか水着姿で剣を携えるという不思議な恰好になっている。これでは、あまりにも防御に不安が残る。そんなことを大輝が思っていると香蓮がそれについて返答した。
「こうしないとあのイカが現れないらしいのよ。あの時に現れたのはたまたま食事のためだけであって、それ以外で現れるようにするにはこうしないとダメらしいのよ。不本意だけどね」
「不本意すぎるだろ」
大輝の言葉の意味も分かるのか香蓮は何も言い返さなかった。すると、大輝はもう一つ疑問に思ったことを聞いた。それは、クリシュナ達の恰好について。
「あのー、クリスさん?どうしてクリスさん達も水着姿なんですか?」
そうなぜかクリシュナ達は大輝達と同じように水着姿なのである。一切そのような格好をする必要はないのに。クリシュナ達の相手は海賊もとい人間である。
クリシュナ達の魅力からすれば、水着姿でなくても、海賊が全員女性出なければまず間違いなく気を許すだろう。正直、それは大輝自身が思っていることなので、同じ男からすれば考えは似たようなもの。
故になぜそのような恰好をしているのかわからないのだ。まあ、何か理由があるであろうことはわかっているのだが。すると、その質問にリズベットとライナが答えた。
「なに単純な話さ。この恰好の方がもっと魅了できるだろ?」
「おろこっれ、りょろいもんね(男って、チョロいもんね)」
「......」
そこはかとなくしょうもない理由であった。いや、戦略としては男の心理をついているからいいのだろうが。まあ、そっちは専門外だ。今回は大船に乗った気持ちで任せようか。大輝はそう思うとエミュに話しかける。
「そういえば、この場合ってどう戦うんだ?あのイカは当然、海に現れる。そうなるとこちらから海に出向かなければならないが、そうなると俺とエミュとセレネしか直接攻撃ができるのがいないんだが」
「そうだね、としちゃん達も遠距離攻撃はできるけど、相手の方がこの海を知ってるから簡単に避けれちゃうしね」
「そんなときに渡された乗り物がこれよ」
すると、会話を聞いてた香蓮が海に指を向けながら言った先には、モーターボートのような乗り物があった。それを見た瞬間、大輝は目を輝かせた。......まさか、あれに乗るのか?乗れるのか?乗っちゃうのか?
大輝は咄嗟に香蓮を見る。香蓮は無言で頷くと言った。
「これで相手よりも機動は上回れるらしいわ。本来はマリンスポーツとかで使われるものらしいんだけど、こんな回の討伐のために貸してくれるらしいの。数は五台。それは二人乗りだから、クリスさん達に二台。私達は三台を使うことになるわ」
「そうか、そうなるとペアを作らなければならないな」
「そう思って、これを作っておいたわ」
香蓮がいつの間にか取り出していたのは、五つの棒。なるほど、それにマークがつけてあって同じマークがペアというやつか。それは簡単でいいが、一体どこにそんなものを隠し持っていのか。そもそも、いつの間に作ったのか。
そんなことを思っていると全員が集まってきた。ユリスがこっちに来ようとしていたが、さすがにクリシュナに引き戻される。そんな光景に苦笑いしていると前方から闘気を感じた。大輝は思わずその方向を見るとエミュと香蓮が棒を凝視している。そのことに気付いた途端、大輝は若干引き気味になった。
「安心て、不正なんかしてないわ」
「大丈夫だよ、そこの心配はしていない」
「それじゃあ、引いて」
香蓮の言葉を聞いた瞬間、エミュがさっと一つを引いた。そして、残りが棒を引いていく。それから、香蓮が「見せて」というと全員が結果を表示した。
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「で、俺のペアはセレネってことか」
「何か不満?」
「いや、なんにも」
大輝が試乗運転しているモーターボートの後ろに乗っているセレネは、大輝の言葉にムスッとした口調で返した。だが、本音を言えば、嬉しいに決まっている。たまたまとはいえ、こんな幸運は滅多にないだろう。これまで頑張って気おかげであろうか。きっとそうであろう。
それにしても、本当に今更だが、こんな日が来るとは思わなかった。好きな人と海に来て、運転しているモーターボートの後ろに乗っている。にやけが出そうでなんとか堪えているが、見えてない今なら別にニヤついてもいいんじゃなかろうか。
それに危ないからと大輝の肩を掴んでいるが、このままでいいのか。あの二人......いや、香蓮はどうかわからないが、エミュだったら確実に抱きついているだろう。エミュがやることを自分がやってみても引かれないだろうか.......いや、無理、無理無理無理。体を押し付けるってどうゆう神経してんのよ!
それに普段しないことを、しそうにないことをしたら確実に大輝にどうにか思われる。これは完全にこれまでのツケか。まあ、仕方ないと言えば、仕方ないことなのだけど。なんせこういう気持ちになるとは思ってもいなかったのだから。
まあ、自分は無理しないことにしている。というか、あんなのができると思っていない。今こうしているだけで、十分なのだ。
セレネは周囲を確認しながらそんなことを思っていると急に体が横に持ってかれる。
「ひゃあ!」
「あ、わりぃ。急カーブの練習しようかと思ってたんだけど、言うのが遅かったな」
「そうよ、ちゃんといいな.......さ.......い」
大輝の突然の行動にセレネは思わず言い返そうとしたが、あることに気付いて段々と声が尻すぼみになっていく。それは急カーブに振り落とされまいとしたためか大輝にがっしりと抱きついていたのだ。そのことに顔の熱が上がっていくのがわかる。
そして、このタイミングでブーメランが返ってきた。それは先ほど思っていた「抱きつくなんて無理。どういう神経しているのか」ということ。不可抗力とはいえ、抱きついてしまった事実には変わりない。これはど、どどど、どうしたらいいのだろうか。
セレネは頭の中でプチパニックを起こしていた。だが、そんな心臓の音は大輝にはバレてないらしく、大輝がこちらに向くことはない。そのことに安心と悔しさが入り混じった気持ちをしながらも、「気づいてないならこのままでもいいよね?」と思ってそのまま引っ付いた形になった。
「......」
大輝はどうしたらいいかわからない顔をしていた。そして、顔も若干赤らめている。当たり前だ。背中から予想もしない人物が抱きついたままになっているからだ。この状態はいかがなものかとは思うが、海での移動手段んがこれになるというなら、急な小回りも出来るようになっていた方が良いと思うので、結局しばらくこんな形になってしまうだろう。
問題は案外そこではない気がする。それは周りからの視線。自分と同じようにモーターボートの練習をしている仲間やクリシュナ達がいる。となれば、当然すれ違ったり、横を通り過ぎたりもするので、その際の特に三名からの視線がとにかく痛いのだ。
「これはもう終わらせた方がいいよな」と大輝が思ったその時、真下から巨大な気配が接近してきた。
「全員に告ぐ!すぐにこの場から離れろ!あのイカがやってくるぞ!」
それから、セレネにも速度を上げる確認をするとその場から離れ始めた。しかし、クラーケンはその影を大きくして浮上してきて、このままではあのイカの範囲に収まったままであろう。そう思った大輝は<超加速>を使ってモーターボートの推進力を上げた。
「ギャシャアアアアア!!!」
「あっぶねー」
大輝が魔法を使った数秒後に海面から巨大なイカが姿を現した。大輝はクラーケンが海面に上がってきた勢いで宙に投げ出されるが、直撃は避けれた。そして、海面に慎重に水着するとモーターボートを走らせていく。
「!」
その時、大輝はまた別の気配を確認した。だが、大輝の<気配察知>の範囲がギリギリ届くか届かないな位置にいるのかハッキリとは感じられない。
「ドリィ、少し解放してくれ。それから、フランは能力増幅だ」
「了解なの」
「わかったのじゃ」
二人のおかげで魔法効果が上がった<気配察知>はその気配を確かに捉えた。正確な数字はわからないが数は結構多い。しかも、一つ一つはそれほど大きくないが、それが一つの塊となって動いている。
大輝はそれがなんなのか確かめようとモーターボートを動かしていくと巨大な船を三隻見つけた。あれは、海賊船だ。
このタイミングで、海賊船も一緒に出て来るというのか。それはあまりにも無茶というものだろう。現在、この場にはクラーケンがいる。クラーケンが船を海中に引き吊り込むなんてよく聞いた話だ。
......いや、待てよ。もしなんらかの理由でこのクラーケンと海賊の間に繋がりがあったとしたら、このタイミングで現れるのは納得がいく。なんせクラーケンはかなりの脅威だ。相手にしようと思えば、海賊そっちのけで対処しないといけないだろう。
大輝はどこか確信に近い疑問を持ちながら叫んだ。
「全員、戦闘を開始する!」
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