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第106話 飛び入り依頼

こういう場合の主人公ってコ〇ン君ポジションなんでしょうね


評価、ブックマークありがとうございます。励みになります(*^-^*)

「ふぅー、気持ちよかったー」


「やっぱり、日本人たるもの風呂にはちゃんと入らないとなー。特に温泉なんてな」


 大輝と俊哉が脱衣所から出ると浴衣のような服に身を包み、タオルを首にかけながら歩いていた。そして、火照った体を涼ませるために外へ出ようと旅館の入り口に向かっていた。


「全く、ミリアにはマジで感謝しないとな」


「これは帰ったらちゃんと労わないとな。......そうだ、日本料理を食べさせるってのはどうだ?まあ、作るのは俺じゃないんだが......」


「それを抜きして考えれば、案外悪くないかもな。そういえば、結構仲良くなったのに家に招き入れたことないし」


「だよな。まあ、俺個人でも出来ることを考えなきゃな......」


 大輝はそう言うとブツブツと呟きながら考え始めた。それを見て俊哉は少しため息を吐いた。これでまた何かを拗らせてしまうのではないかと。まあ、酷い言い方になるかもしれないが、何がどうなろうと決めるのは大輝だ。相談されれば乗りはするが、さすがにこの手の相談はしづらいだろう。


「まあ、ほどほどにな?」


「?」


 大輝にはうまく伝わってないようだが、「まあいいか」と深くは考えなかった。すると、後方からドタドタと走ってくる音がした。その音にふと二人は後ろを振り返るとそこにいたのは、耳にひれのようなものをつけ、魚の尾のような足をしているまさに人魚という言葉が相応しい少女であった。そして、その後ろにはその少女を追いかけているであろうメイド服の魚人の女性二人だ。


「いましたわ!」


「げふぅっ!」


 大輝と俊哉は「なにやらおてんばなお嬢ちゃんがメイドという追っ手から逃げているのだろう」と思って、邪魔することなくそれぞれ両端に寄って避けようとするとその少女は方向を変えて、思いっきり大輝に突っ込んだ。


 少女はまるで大砲から発射された弾のように大輝の腹部へと頭突きしていく。その攻撃と背後にある壁によって板挟みにされたせいで、大輝は衝撃を逃すことが出来ずもろに受けた。そして、その衝撃のまま床に倒れ込む。


「むむ、勇者......様?なのかしら?あまり勇者っぽくないけれど」


 その少女は大輝の腹の上に乗って、大輝を起こそうとペチペチと叩いていく。それをやめようとメイド二人がその少女を取り押さえようとした時、またまた後方から声が響く。


「ああ!?主様に何をやっておるのじゃ!」


「マスターから離れるの!」


「どなた達かしら?......って、なにをするの!?」


「ごほぉ!」


 後方から現れたのは部屋で寝ていて寝ぼけ眼のフランとドリィ。その二人は大輝の上に乗っている少女を見て目を見開くとその少女のもとへと突っ込んでいった。そして、掴みかかると大輝の上で暴れ出す。そのたびに大輝にはダメージが入っていく。


 メイド二人はどう収拾をつければいいのかわからない様子であたふたとしている。また、俊哉は口に手を押さえながら肩を震わせている。


「お主は誰なのじゃ!」


「私はこの国の王女よ!この宿に勇者様が来ているということを噂で聞いたの」


「それはおかしいなの。なぜなら、今はお忍びとして来ていて、この国はマスターの顔を知らないはずなの」


 ドリィの意見は正しかった。この国に訪れているのはミリアから与えられた休暇のようなものだ。しかし、この王女は噂で聞いたと言っていた。火のない所に煙は立たない、誰か大輝の顔を知っている人がいたのだろうか。


 だが、王女はそんなことは知ったことじゃないといった様子でフランとドリィを軽く無視しながら、大輝の胸ぐらを掴む。


「で、あなたは勇者なのかしら。なら、話を聞いてもらいたいのだけれどいいかしら?」


「わかった。わかったから、揺らすな~」


 王女は大輝の胸ぐらを揺さぶりながら、大輝の目を真っ直ぐ射抜いて言う。しかし、大輝にはその視点は合わず、また王女の足が大輝の足を拘束するように絡みついているので、逃げ出すことも出来ない。だが、そこに大輝の救世主が現れた。


「お嬢様、落ち着きください」


「勇者様はもっとイケメンのはずです。この方は違います」


「......」


 大輝は思わず黙った。救世主......まあ、こうして王女から解放されたから救世主ではあるのだろうが、どうしてだろう、心にダメージが。とりあえず、大輝は一度深呼吸するとその王女に自分が勇者であることを示すようにフランを聖剣に戻した。


 すると、王女とメイド二人は驚いたようながっかりしたような顔をした。そのことに大輝は思わずため息を吐く。一体この国では勇者はどれほど美化されているのか。500%ぐらの超美化をされてるのではなかろうか。


「で、これで信じてくれた?」


「え、ええ、無礼をお許しください勇者様」


**********************************************

「なんか気づかないところで、厄介ごとに巻き込まれてるわよね」


「しかも、また女の子ですよ」


「幼馴染が最近、天然ジゴロと化している件について」


「大ちゃん、後でお話ししよっか」


「......俺悪くないよな?」


 セレネ、ユリス、香蓮、エミュと次々に大輝に不満そうな顔をしながら言葉を投げ当ててくる。しかし、これは明らかに不可抗力であってこうも言われる筋合いはないのだが、口ではまず勝てないので言わないけど。


 大輝は一回咳払いすると四人の視線を無視しながら王女に話を促した。


「それで、俺に聞いてもらいたい話ってなんだ?」


「そうですわね、端的に言えばこの国で人さらいが起きているのですわ」


「人さらい......なにか目星はついているのか?」


「この国周辺には海賊が住み着いていて、おそらくその人達の仕業で間違いないと思いますわ。なにせ度々この国の貿易船を襲っているのでもの。そのせいである国とは貿易が出来ておらず、事実上の国交断絶。この国にとっては不利益でしかないのですわ」


「なるほど」


「また、話は変わりますが、もう一つ困っていることがあるのですわ」


「もう一つ?」


 大輝が聞き返すと王女は一回深呼吸をした。そして、恐る恐る口を開く。出来れば言葉にも出したくないように。


「眠れる化け物、クラーケンが現れたのですわ」


「あー、あれか」


「はい、あれなのです。でかくて、ぬめぬめしていて、気持ち悪い触手を動かして......って、ご存知なのですか?」


「まあな。この国に来るときに襲われたぐらいだし」


「そうなのですか!?」


 王女様は思わず立ち上がるほど驚いた。王女の隣で座っていたメイド二人も声こそ出さないが、目を見開いて驚いていた。逆に言えば、この国の人達にとってそれほど脅威的な存在なのだろう。まあ、どんな感じかは大体イメージできるが。すると、王女も似たようなことを口にする。


「勇者様方もわかっておられると思いますが、私達は泳ぐことが得意で主に海産物を貿易の品としていますの。ですが、海はクラーケンによって漁に出ることが叶わず、陸では海賊にる人さらいで安心して暮らすことが出来ない。どうか私達に安心と安寧をお与えください。その時の報酬は存分に用意させていただきます」


 王女を筆頭に三人は恭しく頭を下げた。その姿を見るとどうにもなんとかしてあげたいと思ってしまう。これが勇者の性ということなのだろうか。だが、これは自分一人の判断では決められない。仲間にも確認してみなければ。まあ、だいたい答えはわかっているけどな。


 そう思って仲間達の様子を見ると全員が手伝ってくれるようであった。やはり、こうなってくれるか。そのことが大輝には嬉しかった。


 すると、クリシュナが口を開いた。


「それなら、私達も手伝わせてもらってもいいかしら?」


「クリスさん達もですか?それはとても嬉しいんで良いですけど」


「実はね、私達がこの国に来たのは『海賊をどうにかしてくれ』という依頼なのよ。だから、海賊の方は本来は私達の仕事。たとえ勇者であろうとも一度に二つのことをするのは大変でしょ?だから、そっちは私達に任せてくれないかしら?」


「そうですよ、大輝さん。私は大輝さんの負担を少しでも減らせたらと思います」


「......そっか、ありがとう」


大輝が優しい笑みを浮かべるとそれに返すようにユリスも少し顔を赤らめながら笑みを返した。大輝が作り出した訳では無いが、突如として蔓延する甘い空間。


もちろん、それを止めないはずもない。エミュと香蓮は咳払いをして、 この空間を意図的に作り出しているであろうユリスに横槍を入れる。


「ユリスちゃん、そこら辺にしとこうか」


「そうね、話はまだちゃんと終わった訳では無いしね」


「私的には、十分に完結したと思われますが?」


「こ、この方達は仲が悪いのかしら?」


「別にビビらなくていいわよ。さっきからあんな感じだから。それに、これでも仕事はちゃんとするわよ」


  セレネはエミュ、香蓮、ユリスの三人を見ながら思わず呆れたため息を吐く。この三人はよく人目も気にせずここまで張り合えるものだ。そして、その原因を作った大輝はあまりこの状況を理解していない様子だ。はあ......まあ、こうして三人が他に注意を向けてくれているのならこちらとしても動きやすいのだが。


「バカ大輝、ここは一先ず離れた方が良いんじゃないかしら?余計なとばっちりをくらうと思うわよ。......そういえば、冷たいものが飲みたくならない?良かったらついてくる?」


「ん?......そうだな。そうさせてもらうよ」


 そう言って大輝が立ち上がるとセレネは後ろ手でガッツポーズをする。そして、その場からしれっと二人は離れた。それにしばらくして気づいた三人は「やられた」と心底思ったという。

良かったら評価、ブックマークお願いします(*^-^*)

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