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第104話 海イベ

海に行きたい(入りたいとは言わない)


評価、ブックマークありがとうございます。励みになります。(>_<)

「ねえ、大ちゃん。この水着どう思う?」


「だ、大輝、どうかしら?」


「そ、そうだな......」


 大輝は思わず対処に困り、目を泳がせる。それは二人の水着の感想を言わなければならないからだ。ちなみに今、大輝は正座をさせられていて逃げることは不可能。この場を乗り切るには感想を言うしかない。


 しかし、大輝にはその時どういえばいいかなんてわかるはずもない。単に「似合ってるよ」とでも言えばいいのだろうが、いざ目の前に水着姿の二人が現れてそれに対してキョドっているというのに、それに対して感想を言うなどハードルが高すぎる。


「で、どうなの?」


「も、もしかして、似合ってない?」


「いやいやいや、そんなことはない!正直言って、すげー似合っている。だから......その、あまり直視できないと言うか......」


「「......なるほどねぇ」」


 二人は若干暗い顔を浮かべるが、大輝の言葉を聞いてすぐに気分が一転。ニヤニヤとイタズラっぽい笑みを浮かべる。大輝の目を泳がせている理由がそんなのであれば、こちらとしては嬉しい限り。さて、見たい反応も見れたことだし、泳ぐとするか。


 すると、二人はパラソルの外へと出ようとすると大事なイベントを忘れていることに気付いた。そうそれすなわち......


「「日焼け止めイベント!!」」


「二人とも何言ってるのよ」


 エミュがさっとバックから日焼け止めクリームを取り出すとそれを香蓮に投げた。そして、香蓮はそれを受け取ると大輝にバッとそれを見せつける。その二人の流れるような動作に大輝はしばらく思考が停止していた。すると、そんな空気をあえて壊すかのようにセレネが割って入る。


「あんた達、塗るなら私がやってあげるわよ」


「待って、セレネちゃん。これは大ちゃんにやってもらわなければ、効果が発揮されないんだよ」


「そ、そうね。その通りだわ。だ、大輝に任せるわ」


「香蓮、そんなに緊張して言うぐらいならいっそのこと言わなければいいのに.....」


 セレネは緊張して顔が強張っている香蓮を見ながら思わずため息を吐いた。ある意味、ここまで頑張れるのは感心することだ。そこまでは自分にも出来ない......!


 するとその時、エミュがセレネの背後を取り、さっとセレネを動けなくした。そのことにセレネは思わず驚く。なぜこんなことをしたのかと。しかし、そのことをすぐに理解した。なぜなら正座したまま固まっている大輝の横に座らされたからだ。


「これがその気持ちになってから最初で最後だよ」


「?」


「~~~~~~~~!」


 エミュの言葉に香蓮はわかっていない様子であったが、セレネはわかったようで顔を真っ赤にさせた。つまりは自分にも同じく二人と一緒に日焼け止めイベントに参加させるつもりなのだろう。それは無性に恥ずかしい。だって、普段はまず触れさせることのない肌を触れさせるということで、特に背中なんかは羽の存在がある以上、とても敏感なのだ。そこに触れられるのはとにかく不味い!


「ま、待って――――――――」


「問答無用!」


 エミュはセレネをうつ伏せに押さえつけると水着の紐を緩ませた。すると当然、水着はハラリと取れる。大輝は未だ放心状態でありながらもギギギとそのセレネの方に目を向けた。もちろん、ガン見である。


「香蓮ちゃん、足を押さえて」


「で、でも......」


「早く済めば、大ちゃんに塗ってもらえるかもよ」


「わかったわ」


「わかんないでよ!......ひゃっ!」


 香蓮はすぐさまセレネの両足を押さえると大輝にクリームを渡した。大輝はそのクリームを受け取ると無意識にそのクリームをセレネの背中に塗った。その冷たさと敏感な背中にクリームがかけられたことに思わず声が漏れる。そして、大輝がその背中に手を触れさせようとした時、後方から声が聞こえた。


「大輝さん、こんな所で何をやっているんですか!?」


「......その声はユリス?」


 大輝がそう思って呟くとやはりユリスであった。しかも、クリシュナ、リズベット、ライナリーゼの三人も一緒だ。もしかして、何かの依頼でやってきたのだろうか。


 そんなことを思っているとふと大輝は素に戻った。そして、思わず自分の手を見る。セレネの背中にあとわずかで触れるというところであった。これはなんとも複雑な気持ちだ。触れたかったのもあるが、触れて嫌われるのも嫌だし......!


「ひゃあああああああ!」


「わあああ!?何やってんだ、エミュううううう!?」


 大輝が思わず手を引っ込めようとするとその手をエミュが掴んで、思いっきりセレネの背中に押し当てた。その背中から伝わる圧にセレネは思わず叫んだ。その何とも言えない伝わるくすぐったい感触に、その手からの熱、若干痺れるような感覚。これは言葉にも言い難い。


 そしてまた、大輝も叫んでいた。それはエミュの行動に関してだ。突然のエミュの行動、最近エミュの考えていることがわからないとは思っていたが、想像以上にわからない。なぜにここまでするのか。しかし、この状況で一言告げるとすれば......あざっす!


「だーいーきーさーん?」


「!」


 大輝は後ろから聞こえた声にビクッとした。そして、後ろを振り返るとすぐに近くにユリスの頬を膨れさせた顔があってそれにもビクッとする。それから大輝は、とにかく現状を話そうとするが、なぜか上手い言葉が出てこない。そのせいかプチパニックを起こしている。


「感触がすげー良かったです!」


 あ、口が滑った。するとユリスがさらに頬を膨らませる。


「それは良かったですね。さぞかし嬉しいことでしょう、大輝さん?」


「お、え、それは......その......」


「まあ、これに関してはわかっていたことです。まさか、こんなところで会うとは思ってはいませんでしたが、これは滅多にないチャンスの時でしょう。ですから、時にこの水着をど、どう思いますか?」


「ふ~、いいわよ。ユリスちゃん」


「そのいきだ!」


「頑張れユリスー!」


「うぅ、誰かこの状況をどうにかしてくれ~」


 大輝は思わずそんな言葉が漏れてしまった。もちろん、聞こえない範囲で言葉を呟いたのだが。しかし、思わず顔を少し俯かせてしまったのがいけなかったのか、すぐにユリスから悲しそうな声が聞こえた。


「ダメ......でしたか......」


「いやいや、そんなことないぞ!ユリスはユリスで似合っている。ただ主張するところが少ないだけで......」


「大輝さん、何を言っているんですか?」


「あ、やっべ......」


 大輝は咄嗟に取り繕ったあまりに余計なことまで言ってしまった。その一言をしっかりと聞いたユリスは瞳を冷たく変え、優しく微笑んだ。その姿はまるで雪女。こころなしか凍えてきているような......


 大輝はそう思ってクリシュナ達を見るが、クリシュナ達は大輝に呆れたため息を吐くとそのまま遠ざかっていく。大輝はそんな三人に手を伸ばしながら、この後の悲惨な状況に目を瞑った。


**********************************************

「あああああああ!」


「叫んでるなー」


「楽しそうだね~」


「キャン」


 俊哉と茉莉は遠くからまさにギャルゲーイベントの如くの大輝の状況を見ながら、飲み物を飲んでいた。やはり、この暑さには体を冷やすものの存在は必須みたいだ。体に涼しさが染み渡る。


 それにしても、大輝とはしばらく他人の振りをしていた方がよさそうだ。大輝は今の状況に困っているぽいが、たとえそれを解決できたところで周りの男どもの反感は解決できないだろう。なんせ大輝が何を言ったところでそれは全て火に油。無意味である。


 それに説得しようとしたところで、説得力自体がない。周りにあの女性陣がいる時点で。......はあ、いつから我が友はギャルゲーの主人公となったのか。そして、それを羨ましいと思わないのは、本当にギャルゲーのようなハーレムが存在するのであれば、おそらくはあんな感じなんだろう。それは自分には荷が重すぎる。いわゆる性格上の不一致というところか。


 もともと自分は周りには目を向けているが、あまり周りに積極的に手助けするようなタイプではない。故に仮に大輝と自分の位置を入れ替えたとしても、大輝のように根気強く付き合ってはいけないだろう。面倒くさがるタイプでもあるから。


「で、茉莉も俺と同じく避難してきたのか?」


「そうだね~。さすがにあの空気は近寄りがたいかな~。それだったら、レオちゃんと遊んでいた方がいいしね~」


「キャン!」


「まあ、確かにそれがお似合いかもな。互いにな」


 そう思いながら飲み物に口をつけようとするとその飲み物がツルッと手から滑り落ちた。そして、その飲み物は中身を砂浜にぶちまけた。


「あー、やっちゃったね~。大丈夫?」


「大丈夫だ、。別にへこんでねぇぞ、少しだけしか」


「少しはへこんでるんだね~」


 俊哉の冗談めかした言い方に茉莉は思わず笑った。そのことに安堵した俊哉であったが、ふと自分の手を見つめた。それはまだ自分の手に痺れが残っていること。先ほどの飲み物を落としたのは、手を滑らせたわけではなく、手が突然痺れて力が入らなかったせいだ。


 この現象は前から起きていたが、日に日に強くなっている気がする。これは言うべきだろうか。いや、仲間には迷惑をかけられない。手掛かりが見つかるまで探すしかないか。


 俊哉は飲み物を掴むとそれを捨てに行った。パーカーで隠した自分の右腕に巻かれた包帯を見つめながら。

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