第102話 厄介な
第7章です。この章はこれまでに比べればシリアス展開はないですね。後半のための休憩章のようなものです......手抜きはしてませんよ?
評価、ブックマークありがとうございます。励みになります。(*'ω'*)
大輝達は砂漠の国にて、それはそれは楽しい宴をした。そして今、大輝達は海の上を走ろうとしていた。
「でか......というか、あれは船なのか?」
「まあ、その疑問は最もだけど、ここが船を乗る場所だからそう思うしかないわよ......」
そう言いつつも、香蓮は、いや、転移組は総じて顔をポカーンとさせていた。それは船の形......といえば、それもそうなのだが、一番は船の存在そのもの。
「ホォ――――――――――!!!」
その船は高らかに鳴いた。そして、同時に大量の水を吹き出した。
その船の招待はと言うと豪華客船並のドデカいクジラであった。というのも、これが今回の海上国家に向かう船らしいのだ。このクジラはこの大きさで気性も穏やか、人懐っこい性格らしくここいらでは当たり前な乗り物だという。
「この世界のことはなんにも分かってないなー」というのが転移組の正直な感想。まあ、大輝達は仕事柄、色々な場所へと向かっているが、ここらでやっと世界の半分の国を回ったところなのだから。
まあ、何はともあれ、結局乗ることには変わらない。そして、こういう未知のものに触れる時、男というのはテンションが上がるものなのだ。
「早く行こうぜ!」
「まあまあ、慌てなさんな、大輝。俺が先に行く!」
「くそ、そうはさせねぇ!」
「はあ、男ってほんとバカね」
「でも、楽しそうでいいじゃん」
「そうね。あんな大輝も久々に見た感じだわ。昔を思い出して少し懐かしいわ」
「ふふっ、まだ終わったばかりだからこういう気分にもなるよ」
女性陣は我先にと向かっていく二人を見ながら各々の感想を口にする。そして、総じて笑顔を見せている。
もちろん、この中で二人は気づかないはずがない。このメンバーの中で変わった人物を。
「セレネちゃん、随分と笑うようになったね」
「そうね、仏頂面が多かったもの」
「別にそういうわけじゃないわよ。認めるべきことをただ認めただけ。するとどうだか、随分と肩が楽になるじゃない。それに気づいてからは、そっちの方が居心地がいいのよ」
「「ふーん」」
「な、なによ。その反応は。文句ある?」
セレネは二人の意味深の反応に思わずたじろぐ。特にその何かを悟ったような顔。まあ、これに限ってはエミュだけだが。しかし、これは実にめんどくさいことになった。
正直なところ、バレるとは思っていた。なので、今更エミュになんと言われようとも怖気付くことはない。しかし、問題なのはそれを香連の近くで言うことだ。
別にその気持ちを言われてどうこうはならないとおもうが、仮になってしまった時のことを考えると恐ろしい。大輝の時とは訳が違う。修復などできようはずもないだろう。
「......」
「?セレネちゃん、どうしたの?」
「別に」
セレネは思わすエミュを睨んだ。だがもちろん、思っていたような反応はなく、まさに暖簾に腕押しと言った感じだ。まさか、エミュにこんな状態になってまで苦しめられるとは。
セレネは疲れたようなため息を吐くと他の三人に乗るよう促した。もうこれ以上、エミュに掻き回されるのを防ぐために。
そして、大輝達が乗り込むとクジラは何キロ先にも届くような声を上げて、潮を吹いた。その潮は大輝達に降り注ぐことなく、結界であろう囲いに阻まれ、濡れることはなかった。
「......」
そして、クジラ船の先端にて大輝はたそがれていた。クジラ船が進む先をぼんやりと見つめながら。すると、そこに大輝を探していたエミュがやってくる。
「だーいちゃん、どうしたの?なんか気分が落ち込んでるように見えるけど」
「ああ、エミュか。実はな、その通りなんだ。この船に乗ってからこんな感じで」
「......もしかして、酔ってる?」
エミュはジトっとした目で大輝を見る。すると、大輝は気分が悪そうな顔をしながらも、目を背ける。それでもエミュは追求するが、大輝も変わらず逸らす。
「......やっぱり、酔ってるよね?」
「バカな、そんなことあるか。これは......その......だな。あれだ、自分の悩みなんてこの海に比べればちっぽけなもんだなと思っただけだ」
「ふーん、そうなんだ。なら、そういうことにしておくよ。それで、『悩み』ってなんのこと?」
「うぅ......」
大輝はエミュの言葉に思わず声が漏れた。そして、今度はエミュにジト目で返す。「どうせわかっているんだろ?」という意味を込めて。しかし、エミュはどこ吹く風といった感じで大輝に笑みをだけ浮かべて返す。
そして、もう満足な反応が見れたのかようにこの場を去ろうとすると不意に何かを思って立ち止まる。すると、エミュは大輝の方へと向き、そっと耳元で囁いた。
「何をどうしようと大ちゃんに任せるよ。ただ、忘れないでね。この世界で最初に会ったのは私だから」
「......!」
大輝は思わずゾワッとする感覚に襲われた。それは恥ずかしさもあったが、驚きもあった。それは、普段のエミュからは想像もできない妖艶な雰囲気を醸し出していたからだ。本来、知っている反応を上げるとすれば、ここでは照れくさそうにしているはず。なのに、急にこのような態度は反則級。こちらはドギマギして仕方がない。
そんな反応をエミュは少し楽しむようにして去っていった。大輝はそんなエミュの姿を見ながら、疲れたようなため息を吐く。あんな態度は実に心臓に悪い。まあ、感想を述べるとすれば、とても素晴らしいのだが。
「うぇ~~~~~」
緊張の糸がほぐれると大輝は再び気分が悪そうな顔をした。エミュのことがあったせいか、その間には船酔いを感じなかったものの、それが終わって落ち着いてしまえば、この絶妙に煽ってくる揺れが気分を害させる。
大輝はなにげなく再び遠くに広がる水平線を見た。気分が悪いなら部屋で休めばいいと思うかもしれないが、それだとどうにも治りが悪い気がする。もちろん、これは勝手な考えだ。そんなことはわかっている。しかし、どうせ目をつぶってじっとしているなら、動く景色を見ながらじっとしていた方がいいだろうと思ってのことだ。それ以外、深い意味はない。
「あんた、そんなところにいたら暑くないかしら?」
「なんだ。今度はセレネか」
「なんだってなによ。それに今度はって......ああ、そういうことね。まさか、あんたがそういう態度をうなんてね」
「まあ、なんというか......時折、分かんなくなるんだよな。何を考えてるかが。悪い方向へは向かわせてないだろうけど、だとすると『何をさせたいんだ?』って思うんだよな」
セレネはおそらく大輝はエミュに関してそういうことを言っているのだろうということは、なんとなくわかった。そして、エミュが大輝に不信......とまでは言わないが、それでも何かを疑ったような目で見られていることには思わず呆れたため息を吐いた。
まあ、こちらの思いとしては「そっちの方が都合よくいくのでは?」と思うが、それでもエミュという人物を知っているせいかどうにもこのままにはしておけない感じはする。はあ......全く、さんざん惑わされた挙句にこんな気持ちを抱くとはなんともエミュに甘い。それだけ、このパーティに染まって来たということなのか。
「だとすると、いろんな意味であんたのせいね」
「......」
セレネは大輝の横に並ぶと同じく目線をクジラ船が進む先へと向けた。そして、大輝に対してまさにいろんな意味の籠った感情を言葉にして言ったのだが、大輝からの反応はない。そのことになんとなく不安に思ったセレネは大輝の方へと目線を向けると......
「ぐへぇ~~~~~」
「あんた、絶対バカでしょ」
大輝は手すりに体をぐったりと預けたまま、気分が悪そうな顔をしていた。それを見た瞬間、セレネの言った言葉は当然ともいえるだろう。そして、セレネは「面倒なのはこっちも同じか......」とため息を吐くと大輝の腕を肩に回した。
「~~~~~~~!」
その瞬間、セレネは顔を赤くした。油断していた。腕を肩に回したら必然的に顔の距離も近くなることを。前までだったら、絶対にこんな気分にはなっていなかっただろう。だが、そんな仮の話を考えたところで意味はない。そんなことでこの気持ちを落ち着けられるわけはないのだから。
一旦、大輝から距離を取るか。いや、それは気分を悪そうにしている大輝に失礼だろう。それに、こんなチャンスを......って、いやいやいや、それは違う。それじゃあ、一回深呼吸をしてみるか。これで落ち着けられたら儲けものだが、まず落ち着けないだろう。鼓動が少しづつ早くなっているのがわかるから。
なら、無心になってみるというのはどうだろうか。とりあえず、やってみようか。
「......」
......すぐ近くから呼吸音が聞こえる。自分が掴んだ手首から体温を感じる。首に乗っている腕から重さを感じる。ふーん、大輝って意外とがっしりしているのね。まあ、鍛えていることは知っていたけど、ここまでとは思わなかった。これが男性の......大輝の体ッてことか......!
「い~~~~~~!」
セレネはいつの間にか大輝のことを考えていることに気付くと大輝の腰に回していた方の手で、自身の頬を強めに叩いた。その痛みに思わず声が出るが、そのおかげでなんとか払拭は出来た。だが、自分自身へのため息はさすがに払しょくすることが出来なかった。まさか、前までエミュに関してついていたため息を自分に向けてつくことになろうとは......
「なあ、セレネ。あれ、見てみろよ」
「ん?どうしたのよ?」
不意に大輝が海へと指差した。そして、セレネがその方向を見ると一匹の鳥が魚を咥えて海上を飛んでいる光景だった。「なんだそれだけか」と思って目を逸らそうとした時、何かが海から上がってきた。
それは、鳥よりも大きな魚で、その魚が鳥を捕らえたのだ。「動物のヒエラルキーはなんともわからないものね」と思ったのも束の間、またすぐに状況は変わった。
先ほどよりも大きな鳥がその魚を捕らえたのだ。そして、その鳥はそれよりも大きなサメに捕らえられ、そのサメはさらに大きいサメに食われ、そのサメはさらにさらに大きなタコに捕らえられ......
「ねえ、なんか嫌な予感がするんだけど......」
「同感だな。俺もだ......」
「ホォ―――――――――――――――!」
「「わあああああ!?」」
大輝とセレネの意見が一致した瞬間、クジラ船のクジラはそのタコに目掛けて一直線。興奮したのか潮まで吹いて。そして、大きな口をあけてそのタコをパクリ。
「「なにやってんだあああああ!!!」」
二人は床を蹴りつけながら思わず叫んだ。それもそのはず、今までの流れで言えば、そのタコをクジラが食ったとするとそのクジラを食う巨大な何かが現れるはずで........
「ギ――――――――――――!」
「「あああああああ!?」」
すると大輝とセレネの目の前の海から巨大な影が浮上し、耳をつんざくような叫びを上げながら巨大すぎるイカが現れたのだ。そのことに二人は叫び声を上げるしかなかった。
良かったら評価、ブックマークお願いします。ヾ(@⌒ー⌒@)ノ




