第101話 バカぁ.....
これで第6章は終わります。
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「こんな所あったんだな」
「そうね、私も知った時は驚いたわ。で、ここは神聖な場所らしくて、普段は立ち寄れないのよ。でも、私があんたの仲間だったから入れたの」
大輝はセレネの言葉を聞きながら辺りを見回した。そこは砂漠......ではなく、いや、砂漠ではあるのだが、砂漠とは見間違うほどに緑がたくさんあるのだ。オアシスと呼ぶには些か不自然な川すら流れている。こころなしかここの気候は過ごしやすいといった感じすらする。
するとセレネが大輝の思っている疑問について言った。
「なんでもここの地からまるで分断されたように気候が違うらしいのよ。それは誰かがそんなことをしたという訳じゃなく、昔っかららしいのよ。全く不思議なものよね、こうしてあんた達についていかなければこんな事なんて知る由もなかっただろうに」
「セレネでそれだけ驚くってことは、俺達なんて言葉も出ないだろうな。まあ、なんというか不可思議すぎて今も反応に困ってるけど」
大輝はそんなことを言いつつも気満ち良さそうに伸びをする。やっぱ、災悪を倒した後は随分と気持ちが穏やかになるもんだ。それに人々の笑顔を見るのも随分と喜ばしく感じてきた。......ん?こんな気持ちを抱くなんて俺も勇者らしく振舞えるようになってきたのか?
「あんたが勇者なんて似合わないわよ。精々、スケベバカってところね」
「人の気持ちを勝手に読み取るな。それに悪口のダブルパンチはやめろ。スケベは男の基本能力だ。......というか、なんでわかるんだよ。俺のことをそんな考えてるのか?」
「ば、ばっかじゃないの!?そんなことあるわけないじゃない!気持ち悪い想像してるんじゃないわよ、スケベ、バーカ」
「セレネ、お前ってそんなこどもっぽかったっけ?」
大輝はそんな口ぶりをするセレネに思わず小さかったセレネを重ね合わせた。あの時のセレネは無口ではあったが、感情は豊かであった。そして、この砂漠前までのセレネはよくしゃべったけど、感情は基本疲れたような表情をしていた。笑う場面も少なかったような気がする。そんな小さかった頃とおっきくなってからの頃が合わせ混ざったのが、今の感じだ。
そう考えると今のセレネは随分と親しみやすくなったかもしれない。それはこっちとしてもありがたいことだ。これまでは気持ちが察しずらかったからどんな風に接したらいいかもわからない時があったから。
すると、セレネが大輝の優しい笑みを見て思わず口を尖らせる。
「何よ」
「いんや、なんにも。で、ここに来たのはここを紹介するためだけか?」
「違うわよ。ほら、あの木に実っている果実あるでしょ?あれを食べたいと思って」
「食べるなら俺は別に必要ないだろ?」
「あんたと一緒に食べれば、仮に食べちゃいけないものだったとしても怒られないでしょ?そのためよ」
「一緒に罪を被れってか」
セレネの言葉を聞いて大輝は思わずため息が漏れた。まさかそんなことのために自分が連れ出されたとはさすがに思うまい。はあ.......全く、良い笑顔してやがる。まさに屈託のないって感じだ。案外、あれが素だったりするかもな。これまでは変に維持とか張っていたけど、感謝するわけじゃないがあのおかげでセレネの角が取れた気がする。
すると、セレネは桃のような果実を手にするとその果実を口いっぱいに頬張り始めた。その果実はとても甘い匂いがして美味そうだが、どこか怪しそうにも感じる。なんというか甘い香りで誘って標的を捕らえる食虫植物のような。
「ん~~~~♡美味しい~~~!!」
「おい、セレネ。食うのは一つにしておけ。二つ目に手を出そうとするな」
「なーに、言ってんのよ~......ヒック、これは食べなきゃ損よ。あんたもつべこべ言わず食べてみなさいって」
大輝は思わずジッとした目で見つめた。それはセレネの反応によるもの。先ほどのしゃっくりといい、あの赤みを帯びた表情といい。あれはもしかして酔っているのではなかろうか。
「ほーら、食べなさいってー。ヒック、これとっっっても甘いのよ〜」
「落ち着け、甘いのはわかった。食うから、後で食うから」
「後でっていつよー?それに『食べる』って、もしかしてそっちの『食べる』?キャー、野獣がいるわー♡」
「......」
大輝は思わず黙った。いや、これは黙るべきであろう。もう様子がおかしいということでは収まっていないのだ。言うなれば、絡めば非常に面倒臭いタイプ。「このまま帰ってもいいんじゃないか?」と思ったが、さすがに見過ごせないか。
「ほら、戻るぞ」
「やだやだ、もっと食べたいー!」
「わがままはいけません!ほら、行くぞ!」
「!......」
子供のように駄々をこねるセレネに大輝が無理やり手を引くとセレネは急に大人しくなった。そして、大輝の方に顔を向けようとしない。顔を俯かせたまま桃をパクリ......
「あー!?何食ってんだ!というか、どこに隠し持ってたんだ!?」
大輝は「食わせまい」とセレネの桃をかっさらう。そして、そのままセレネの手を引きながら、近くの宿へと向かっていった。
宿で一つの部屋を借りると大輝はセレネをベットに座らせた。
「ここで宴まで寝てろ。今のままじゃ、セレネ的にも人に見せたくないだろ?それに、安心しとけって。このことは誰にも言わん。それから、寝てる間に変なこともしない」
「変なことってー?わかんないなー。ねえ、具体的に教えてくれない?こ・う・ど・うで♡」
「こ、こいつ......」
「面倒臭い」という言葉は飲み込んだ。だが、その表情を隠すことはさすがに出来なかった。あの桃に酒みたいな効果があるのは驚きだったが、それ以上に驚きなのはセレネの態度の変化だ。
見ても聞いても分かるように、今のセレネは非常に面倒臭い。子どもの頃の感情を取り戻したが故にだと思うが、これはさすがに想定できない。
それに、態度はまるでませた子どものようだが、見た目は大人。それに加え、こころなしか妖艶にも見える。そのギャップは酷くこちらを惑わせる。
「ねえ、教えなさいよー」
「おい、せ、セレネ!?」
すると何を思ったのかセレネは、突然大輝に近づくとその首に腕を回し始めたのだ。これには大輝も思わす声を漏らした。だが、そんな大輝のことなど露知らず、セレネは後ろへと体重をかけた。
「わああ!?」
大輝はセレネに引っ張られるように体重を前に倒し、セレネをベットに押し倒した。大輝は咄嗟に腕を出してセレネにのしかかることを防いだが、その顔の距離は非常に近い。あと数センチて口と口が当たるほどに。
大輝はすぐに顔を離そうとするが、セレネがそれをさせない。腕をより強く絡める。なので、むしろほんの少しだけ距離が近づいてさえしている気がする。
「どこいくの?」
「!?!?」
大輝はその甘えたような声に思わず顔を赤くさせながら、脳内ではパニックを起こした。このままパニックを起こし続けたならば、理性ではなく本能的に動いてしまいそうだ。それ即ち、このまま行くところまで言っていまいかねないこと。
きっと何も考えていない時の俺であったら、すでに流されている可能性もあるだろう。しかし、今は蔑ろにしていい問題は無い。だから......
「セレネ......」
「どうしたの?っ痛!?」
大輝は左手でセレネの頬にそっと触れるとその額を右手の指で弾いた。そのことにセレネはすぐに両手で額を抑えた。すると、大輝はセレネの目元を右手で覆った。
「歌が始まるまで、寝てろ」
「......」
大輝がそうしたおかげかセレネはやがて寝息を立て始めた。そのことに一先ず安心と男としての残念さを噛みしめながら、部屋を出た。
「はあ......」
大輝がこの場からいなくなったのを確認するとセレネは思わずため息を吐く。それは主に自分に対して。実のところ、大輝にデコピンされた時点で素に戻っていたのだ。
そのことが大輝にバレなかったのは良かったものの、自分は酔っても記憶を思い出すタイプらしく、自分のやった行動に思わずベットをじたばたさせる。
もっと言うと、実は小さくなった時の記憶もある。なので、自分が地味に告白していたことも覚えている。ざんね......ゲフンゲフン、幸いなことに大輝は勘違いをしてくれたようだが。
だとしても、もうここまでして自分の気持ちが分からない訳ではない。
「私、好きになってんじゃん。バカぁ......」
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「なるほど、こういうことだったのか......」
宴が始まり、大輝は勇者専用特等席から踊り子達の魅惑的なダンスをまじまじと見ていた。そして、大貴の感想はその踊り子達に混じったエミュと香蓮であった。
その二人は他の踊り子達に負けず劣らずのキレッキレで、魅力的なダンスを披露していた。その事によって、会場は大盛り上がり。この国の危機を救ってくれただけではなく、こんなにもフレンドリーであることに対して、この国の好感度はグングンと上昇していく。
まあ、もっともこの二人の思惑は全く違うのだが。
「なにエロい目で見てんのよ」
「それは仕方ない。これが男の性というものだし......って、どうした!?その格好!?」
大輝は横から話しかけてきたセレネに目を向けると思わず二度見した。それはセレネもあの二人と同じようにベリーダンスの衣装を着ていたからだ。
するとセレネは顔を上気させて、力強く言った。
「私が着たかったの!文句ある!」
「いいえ、ありません。ただ、珍しいなと思って」
「まあ、確かにそうね。けど、これからはこういうことも増えるかもしれないから、いちいち驚かないでよね!」
セレネはそう言うとステージの方へスタスタと歩いていく。大輝はそんなセレネをただ面をくらったような顔をしながら、見つめていくのであった。
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