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幾ら声をかけても、一向に目覚める気配のないクラウディアを横目に、俺は考えを巡らせていた。
このクラウディアという女性は、一体何がしたかったのだろうか。
果実酒をすごいペースで飲むものだから、大層な酒飲みなのかと思ったが、いくつか言葉を交わすうちに眠ってしまっている。
寝息は静かだから、戻したりを心配することはない。
お暇させてもらおうか。
誰に気を遣うでもなく寛いでいたのだから、ここはおそらくクラウディアの自宅なのだろうし、自分の家の庭で寝こけていても、危険はないだろう。
まあ、椅子や杯ぐらいは片づけて行くべきか。
そう思って、水を入れてもらった杯をちらと見る。
そして、見なかったことにして、わざわざ出して貰った椅子を見る。
血の気が引く。
まず椅子は、木製らしいことが分かる。非常に緻密な動物や人の彫刻が背もたれやひじ掛けに施されている、見事なものだった。
言うなれば、やたら高級そうな椅子であった。
まあ、椅子はまだ良い。
杯などは、目をふさぎたくなる。
なぜならば、俺が無造作に引っ掴んでいた杯は、実物を見たことがないので断言はできないのが救いだが、どうも、金でできた杯のように見えた。
それも、緻密、というのも馬鹿馬鹿しいような模様が刻まれていて、間違いなく、金としてだけの価値では済まない逸品の杯であるように見えたからだった。
金メッキ、という可能性もあるにはある。でも何となく、そうではないような気がする。
この、クラウディアとかいう女性は何者なのか。
百歩譲って、金の杯を持つ資産家が居たとしよう。
それを自分が使って、良い気分で酒を飲む。というのならば、まあ、わからないが、わからなくもない。
しかし、それを、まるで何でもない物のように、見ず知らずの男にも使わせる。というのは、もう完全に訳が分からない。
傷つけられたり、盗まれたりの心配をしないのか。
いや、それこそ資産を掃いて捨てるほど持っているような人々にとっては、当たり前なのか。
もしかするとこの家には、金の杯以外に杯がないのかもしれない。きっとそういう世界に住んでいる人々も居るのだろう。
慎重に、幸い口もつけていない杯を小さなテーブルの上に置く。よく見れば、この丸テーブルにも、見事な彫刻が彫られている。
俺のような小市民にとって、ここは心臓に悪い場所だ。
もし誤って傷をつけてしまっても、俺には弁償するだけの金がない。
申し訳ないが、これらは片づけずに、帰らせてもらおう。
明日も朝から薪割りだ。
よし、薪割り頑張るぞ。
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
この話で、第二章は終了。ということになりました。
次の更新から、第三章に入ります。




