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製鉄①

 魔法植物とマジックアイテムの件が上手くいけば、爆発的に村は成長するだろう。

 とはいえ、今の俺にそれを受け入れるキャパシティなど無い。人が増えれば往来が発生し、秘密が守れなくなる。それは良くない。

 村長として、守るべきものはちゃんと守っておきたいのだ。


「いや、アンタほど秘密まみれな奴はそうそう居ないよ。普通の村は密造酒ぐらいしか隠していないものさ」

「温室にー、ドームにー、鉄製農具でしたよねー。鉄って何ですか鉄ってー」


 うるさいよ、君たち。

 そしてヨカワヤ。道の整備で30日に一度が25日に一度と来る頻度が上がったのはいいとして、滞在期間を延ばしすぎるのはどうかと思うが?


「こっちで情報の買い付けをするついでだからいいんですよー」


 さいですか。





 わりとどうでもいい話。

 この世界の通貨は銅銀金と価値が上がるが、金より上の価値を持つ金属が一個ある。


 鉄である。


 日本人ならあまり実感がわかない人も多いだろうが、この世界の鉄は貴重品だ。金属精製技術が未熟で鉄の加工は盛んではなく、一般人が使う金属と言えば鉄ではなく青銅が主流なのだ。俺の≪鉄壁≫はお宝を生む魔法だったのである。

 冗談でも何でもなく、鉄の塊を売るだけで一財産になる。それを今までしなかったのは、鉄が国の統制物資だからだ。変な事をすれば目立つのである。そして鉄を作れることはとてつもない財産を生むので、確実に国の横やりが入る。

 言わなければ青銅と鉄の区別もつかない国だけどな。鉄の総量が少なく、「鉄って何?」と素で言ってしまう国民がほとんどだから。秘密を守る意味ではとても助かる話である。



 鉄を普及させようと≪鉄壁≫の魔法を誰かに教えて、というのも上手くいかない。

 サヴに≪鉄壁≫の魔法を仕込んでみようとしたことがあるのだが、何故か発動しない。俺が使う他の魔法、≪土壁≫や≪石壁≫などは上手くいくが、≪鉄壁≫だけは上手くいかない。

 他にも≪純水≫で超純水を作らせようとしてもかなりのミネラルが残留したままで、塩ぐらいは分離できるが他はあんまり。気体を扱う系統の魔法は、俺の最高機密(トップシークレット)なので教えていないがきっと似たような結果になるだろう。

 サヴは俺の知っている中では上位に属する魔法使いなので、サヴができないなら他の誰かでも無理だと思う。

 つまり、もしも鉄を量産するなら俺が借り出される。それは御免だ。


 だったら普通に鉄を作れるようになればいいと、窯や炉の製造工程に口を挟めばいいと思うやつもいるだろうけど。

 金属精製は専門外なんだよ。そこまで詳しくは知らない。ネットで簡単な構造ぐらいは調べた事があるけど、製鉄所の見学をした事はあるけど、俺の知識はそこ止まり。細かい構造や運用情報などは一切ない。農業と同じく、手探りで進めていくことになる。

 最低限度の情報のまとめも無いまま知っている事を渡した場合、すこーし面倒な事になると思われる。特に製鉄なんて、他に有名な国があるわけでもないし。出所がねー。



 俺自身、製鉄には挑戦してもいいと思っている。

 しかし製鉄事業は他の事より優先順位が低く、後回しにしていただけなのだ。鉄製品なんて俺が作れば済む話だったし。


 夏も半ばになってしまったが、俺が付きっ切りになる仕事が無くなったから、魔法なしの製鉄業をやってみようと思う。

 今年の頭に立てた予定だと、もっと早くから手を付けていた内容だし。遅延してても予定は予定。やらない理由も無い。


 じゃあ、レンガを作るところからだ! ……魔法で。

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