魔法使いの条件
調べて分かった事。
まず、魔法植物はどこにでも生える可能性が有る。今までも魔法植物が生えていただろうけど、気が付かなかっただけなのだ。湖影草は特性も含めて見つけやすい環境にあっただけ。
人間の中にいる魔法使いの数は1000人に1人居るか居ないかといった所だが、魔法植物の場合は草木10万本に1本有るか無いかといった確率じゃないかと思う。
ただし地底湖付近のような普通じゃない環境で育てると確率は一気に上がり、草木100本に1本ぐらいまで増える。異常環境下に適応しようとする適応力が魔法植物になる鍵じゃないだろうか。
持っている特性についてはランダム。魔法をそのまま再現する湖影草のような植物は稀で、どんな魔法に反応しても特定の魔法を使うだけといったパターンが多い。
あと、遺伝的な理由で増殖はしない事が確認された。
湖影草ではない他の魔法植物から採れた種の一つを芽吹かせてみたが、魔法に反応することは無かった。人間の魔法使いも親から子に魔力が遺伝するという話を聞かないし、魔法的な素養はDNAとは違う所にあるのだろう。ただし「それでも」と一縷の望みに賭けて魔法使いの婿や嫁になろうとする人間は多数存在するのだが。
「生きようとする意思が魔法使いを育てるといった話も聞いたことがあるね」
「古い伝承には死線を越えた先の光景がヒトの覚醒を促すって書いてあったな。けど、これはどちらかと言えば環境適応に魔力を用いたってだけだと思うが」
死を経験することで人としての存在階位が上昇するんだっけ?
たしか死解仙だったかな。肉体の枷を取り払い、魂魄だけで生きていけるようになった存在? 肉体の従として魂魄があるんじゃなくて、魂魄の従として肉体がある、だったか。普段は肉体の内側にあることで魂魄は保護され形を保つんだけど、肉体の外に出ても形を失わないほどに魂魄が強くなれば人は世界と一体であると同時に個を保ち、世界すら己が意のままに揮えるようになるんだったか。
小説でよくある転生者が変な力を持っているっていうのも、死んだ記憶を持ったまま生まれ変わったからかもな。
サヴは俺の話の出所を自身の記憶に問いかけているが、これは前世の記憶だ。サヴが知っているはずが無い。
魔法を使わなくても生きていけるなら、その力を錆びつかせ、魔力も魔法も忘却の彼方に消えていくだけ。
厳しい環境が魔力の使用を命じていたからこそ、魔法植物は魔法植物足り得たのだろう。地底湖周辺なんてほとんど光が射さない場所だったから、足りない光をどうにかする為魔力に頼らざるを得なかったんじゃないかと思う。
人間も同じかな?
そんな考えが頭に浮かんだが、すぐにそれを振り払う。それを試すのはさすがに不味い。人として超えてはいけない一線を越えてしまう。
この考えは広めない方がいいだろう。
俺はサヴに口止めをすると、研究資料の一部を封印することに決めた。
下手な権力者の視界に入ったら人体実験コース待ったなしだからな。さすがにその引き金を引く切っ掛けなど、世の中に与えたくはないのだ。
ま、100年か200年あれば他の誰かが思いつくだろうけどね。さすがにそこまでは知らんよ。




