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突然変異(結)

 一週間が経過した。


 畑の方は異常事態というか、予想の斜め上というか、ある意味では想定通りの事態になっている。



「大将! なんすかこの蔓は!?」

「山芋だ!」

「下の方は甜菜っすよ!?」

「蔓は山芋のなんだよ!」


「大将! なんかこの木の苗、甘い匂いがするんすけど!?」

「モモとリンゴを混ぜたんだけど、匂いが強化されたようだな! 面白いじゃないか!」


「大将! この蔓、なんか他より太くてかたいんすけど!?」

「山芋にリンゴを混ぜた奴だな! 蔓が木のようになってるだけだ!」



 畑の植物は、たった一週間で多様な姿を見せている。

 これまでと全く違った性質を持つ、どうなるかも分からない謎植物がたくさんできた。回復魔法で成長促進を行い、ちょっぴり他より早く育てたので芽吹いてから実質一月分経った状態まで育っている。


 中には元の植物そのままに見えるものもあるが、基本は異常種というか、原形をとどめていないモノが多い。こちらの意図したとおりに育ったモノもあれば全く違った姿になったモノもある。そこはまぁ、狙ったところにいった方が珍しいと考えるべきだろう。すべては失敗ではなくまだ道半ばの一歩、足跡なのだ。

 ここまで育ってくれたいくつかの植物の他には、枯れてしまったモノもある。環境が合わなくなったのか、生物として成立しなくなったのか。それも含めて一つの結果として受け止めなければいけない。



  とりあえず、まとめ。


・ 山芋(蔓)+甜菜(根)

 蔦部分は山芋そのまま。蔓全体が甘みを帯び、噛むと美味しいと評判に。その代わり、根っこの部分から甘味が消えた。蔓だけに、一部を地面に埋めるとそこから根を張るようになっている。その根っこも甜菜っぽい根っこだ。

 あと、生命力が強くなったので一部を野生に戻してみた。蔓の一部を切ればそこから増やせるのだ。とても便利。


・ モモ(種)+リンゴ(種)

 甘い匂いのする苗になった。といっても、まだ苗でしかない。高さ10㎝の苗木だから何が分かるというものでもない。

 この組み合わせを試したのは一本だけなので、露地だけど大切に栽培するよ。


・ 山芋(全体)+リンゴ(葉)

 リンゴの葉っぱを一枚ちぎり、山芋に混ぜてみた。するとリンゴのDNAが全体に影響を及ぼしたのか、蔓が太く硬くなった。さながらリンゴの木や枝のように。

 まだ花も蕾も無いので、これがどんな花を咲かせるかは今後の観察結果を待つ。でも、実の方も相当甘くなるんじゃないかと期待してしまうよ。


・ 甜菜(紫外線照射)

 がん細胞化したのか。枯れた物もある中で一部が異常な速度で成長しだした。今までは根っこ部分が30~60㎝だったのが、実験後に1m越えの巨大甜菜になった。葉っぱの方も同様に大きくなっている。これ……食べて大丈夫なんだろうか?

 とりあえず、どこまで大きくなるか試してみたいと思う。実の方はまだパンパンに詰まっているし、少しぐらいスカスカになった後でもそれなりの糖分が採れると思う。



 他にも変な奴はいっぱいあるけど、成功らしきものはこれぐらい。

 そうそう。麦の突然変異は全然ダメだったよ。今のところ変化が見られない。まだ目に見えて変化していないだけかもしれないけどね。病原体に強く・弱くなっただけかもしれないけどね。今のところ変化が無い。

 ま、この手の研究が簡単に成果を出せるはずもないし。今回の成功例だって次の世代を残せるか分からないし。

 気長に、気長にやるしかないな。

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