地底湖、異変
魔法産植物を多数作ってみて思い出したことだが、この世界には魔力とかそういうのがあるから、魔力に反応する植物もあると思う。
実例を知っている範囲ではサヴが昔に食したという、「常若の黄金リンゴ」ぐらいだが。いや、そのリンゴが魔力に関わるというのは俺の勝手な推測なんだけど。実物を見て検証したわけじゃないし、結果を見ての推測なんだけどな。多分間違っていないと思う。自信は無い推論だが。
で、作れないかなーと思って、適当な植物に魔力を垂れ流してみたことがあった。
結果を見れば全くの無駄行為で、一月近く、毎日1時間以上は頑張ったのに何の成果もあげられなかった。苦い思い出である。
種の段階でとか、色々と試してみたんだけど。
結論としては、魔力に曝したぐらいじゃ意味が無いという事。魔力に曝しても放射能的な反応は見られない。少し傷つけては回復魔法を使ってみるなど、本当にいろいろと試したんだよ。全部、無駄だったけど。
ただ、一個だけ試していない事がある。
魔力を含んだ物質を取り込んだ場合の反応である。
思うに、植物には魔力を保持するとか、魔力に反応する機能が無いのではないかと思うのだ。一般的な人間にも無いと思うけど。
だから魔力に反応して性質を変える組織が付与できれば、魔法植物とか言える何かになると思う。そしてその組織とは俺の体細胞でも駄目だったよ。植物に人体を組み込んでも駄目と言うのは、100回以上の試験から導き出されたただの事実である。1000回、10000回繰り返したらイレギュラーの一つでも見つかるかもしれないけど、現状、俺にそんな熱意は無い。
ただの植物を魔力に反応させて魔法植物になるという流れはなく、生まれついて魔力に反応する植物だからこそ魔法植物と言う、非常に残念な現実なのであった。
まぁ、こんなことを言いだしても「魔力とは何なのか」って答えが出ていない以上、無駄な考えなのかもしれないけど。
俺自身、「魔力とは魔法を使うための燃料」って回答しかできないし。
植物の話は横に置き、話は地底湖の方に変わる。
水を求めて彷徨う生き物の糞尿により悪臭を放つようになった地底湖だが、出入口はそのままにしてある。塞いではいない。
ただ何もしないわけではなく、その悪臭対策にミントっぽい草を地底湖入り口に植えてみた。地底湖周辺は光が射さないので植えても無駄だが、入り口近辺なら湿度の高い風が吹く事もあり、繁殖に適していたのだ。
ミントなどはかなり生命力が強く、駆除に凄い手間のかかる雑草として恐れられている。その生命力と歯磨き粉を連想させる匂いに期待してみた。
今では地底湖の方にも根を伸ばし、順調に勢力を拡大している。悪臭もずいぶん和らいだ。
しかし雑草業界というのは一筋縄ではいかず、ミント一強というほどミントの勢力が強いわけではない。俺も名も知らないような芝生っぽい雑草や、ススキみたいな雑草がミントとしのぎを削っている。そこに慈悲など無く、強かな生き物たちの生存競争が繰り広げられているのだ。日の射さない場所には苔が生え、植物の遷移を見守る段階にある。
それ自体は忌避するようなことではなく、自然の調和が地底湖に訪れた、それだけでしかない。
ただ、そこで特殊な環境に適応した生物が住みつきだした。
虫である。
ゲジゲジとか百足とか、真っ白なイモリとか。いもりは虫じゃないけどそういった生物が棲み処として地底湖周辺をうろつくようになった。
正直、キモイ。
これは早急に対策が必要と判ずるに値する、大事件であった。




