イタチ
地底湖の問題は、やっぱり光が射さない事だと思う。
植物が無いから浄化作用も無く、どんどん悪化したんじゃないかというのが俺の見解だ。
であれば採光用の穴でも開ければその近辺に植物が生え、マシになるんじゃないだろうか?
というわけで、真っ直ぐな穴を一つ開けてみた。穴の壁をガラスで保護して、簡単に崩れないよう、より光が射しこみやすいようにしてある。
悪臭をバリアで防ぎながら地底湖を確認してみたが、光は昼前後の2時間ぐらいだけ射し込むようになった。水面で乱反射するのか、地底湖全体が青く淡く光るようになっていた。海の洞窟じゃないけどグラメ村の“青の洞窟”だな。
植物の方は適当に刈った雑草を適当に放り込み、あとは根付くに任せるとしよう。
雑草パワーで悪臭被害が減ってきたころから、イタチっぽい動物が地底湖周辺に住処を構えるようになった。体長30㎝程度の小さく細長い感じの動物なので、あの動物はイタチって事にしようと思う。
このイタチが虫を食べてくれるのか、百足やゲジゲジがいなくなった。雑食で虫だけでなく小動物や果実なども食べるというので、獣害には十分な注意が必要だろう。畑に被害が出たという報告は聞いていないが、警戒しすぎという事は無いのだ。
それにしても、イタチをどうしようかと思う。
イタチは虫を食べてくれる点では益獣なんだけど、作物に被害が出る点では害獣だ。
狩れば少量の肉と高級な毛皮になる。ミンクのコートと言ったら分かりやすいか。イタチはミンクの仲間なのだ。
被害が出る前に狩り尽してしまうべきか。
多少の被害を許容して共存するべきか。
この場合の被害とは、畑の作物だ。それを許容できるか否かといえば――出来る筈が無い。畑を荒らす者には死を。そこに妥協と容赦は無い。
と言うかね、どうせイタチは森の方から流れ着いてきた連中なのだ。地底湖の連中を狩り尽したところで全滅するという事は無いからまた新しいのが棲み付くだろう。気にしなくてもいいはずだ。
イタチは夜行性のハズだから、昼間の巣穴に二酸化炭素注入。そのまま翌日まで放置。
翌朝、灯りを持って中に入ってみると死んだイタチと虫の死骸がたくさん転がっていた。イタチは毛皮だけ回収。肉や内臓は痛んでいるかもしれないから食用にせず埋めてしまう。虫はその場で焼却処分。
「ほえー。珍しい毛皮ですねー? 肌触りがいいし、モコモコですー」
毛皮はそれなりの数が集まったので、1人分のコートを作るために必要な分だけヨカワヤに売る事にした。
ミンクの毛皮でなくイタチの毛皮だが、その手触りは猪の毛皮よりもよっぽどいい。一枚当たり10~20㎝四方とあまり大きくない毛皮を手に、自分の物でもないのにヨカワヤはうっとりとした表情を見せた。こういう所は女なんだなぁと思う。
「えーっと、これで婚約用の贈り物でも仕立てればいいんですかー?」
「いや、普通に売るつもりで持ってきたから」
婚約者への贈り物って言ったら、人数分用意しないと角が立つだろうが。毛皮はコート1人分だけしか持ち込んでないので、さすがにそれは無い。
イタチの毛皮は小さく加工が面倒であるにもかかわらず、普段の猪の毛皮より高く売れた。
……これ、ちょっとした産業になるかもね。
二酸化炭素で殺せば傷の少ない毛皮が手に入るし、イタチの繁殖は森に任せればいいし。
かなり美味しいかも。




