酒造と果物への期待
せっかく作った砂糖だが、これはお菓子の類に使えない。
なぜなら、卵と牛乳が無いからだ。
俺の知っているお菓子のレシピはケーキやクッキーといった、卵と牛乳が重要な物がほとんどだ。つまり、作れないレシピばかりなのである。
中には小麦粉をこねて焼くだけでできるクッキーのレシピもあるが、牛乳(より正確にはバター)が無いと味の面で残念な物しか作れない。
クッキーで使うからとオーブン用の窯も作ってみたが、ピザもどきを作る以上の仕事は無さそうである。
他に砂糖の使い道と言うと、照り焼きぐらいしか思いつかない。
照り焼きは肉などの表面に砂糖や蜂蜜などを塗ってから焼く技法で、肉の表面をパリッとさせたい時に使う。
一部ではテリヤキソースなる物を使った料理と思われがちだが、あれはアメリカ向けの全く違ったものだ。間違えてはいけない。
問題はハイエナどもから隠れて食べる事が困難なことぐらいか。照り焼きもいい匂いがするのだ。普通に焼いてはまず見つかってしまう。……魔法を使って匂いをどうにかしても嗅ぎつけられるのはなんでだろうね? 食欲センサー?
結論として、今回は砂糖をそのまま使うのではなく、お酒にしてしまおうと考えている。
蜂蜜酒ならぬ砂糖酒だ。
砂糖酒は砂糖水にふっくらパンの天然酵母を混ぜて4日かそこら放置して作るお酒で、柔らか白パンが焼けるところなら簡単に作ることができる。グラメ村もパン焼きぐらいは自前なので、勿論準備可能だ。
なお、発酵中は炭酸ガスが出るので炭酸ガスが抜けるように、空気が入り込まないようにちょっとした逆流防止パイプを付けておいた。
できたお酒はパンの生地を混ぜたからか全体的に白く濁って濁酒っぽい。布で漉して透明なお酒にする。
あとは不純物を取り除くために数回蒸留を行う……ではない。さくっと魔法でアルコールを抽出する。そうしてできるのが純度100%のエタノール。水を抜くのではなく、エタノールを抽出する方法でやってみた。
醸造した安酒って不純物が多いから悪酔いするんだよね。だからお酒はエタノールのみの状態でガラス瓶に入れて保管するのがいいと思うんだ。
エタノールを水や炭酸水で割れば飲みやすくなるし、ある程度水増ししてもホワイトリカーみたいに使える。今度、どこかでブドウを買ってこようか。ちょっと楽しくなってきた。
……あれ?
これを使えば、もっと早くから酒造に挑戦出来た?
過ぎた事だ、考えないでおこう。
それに蔵に付く菌でお酒を造る方が「らしい」んだから、旧式のやり方で頑張った方が楽しそうじゃないか。
ま、負け惜しみじゃないんだぞ?
自作したお酒は秘蔵のお酒と言う事で、こっそり隠し持つことにした。
お酒を割るとしたら炭酸水や果物ジュースで割って飲みたいんだけど、果物は近くで採れないんだ。どこかから苗を購入する必要がある。ヨカワヤにお願いかな?
リンゴやブドウ、桃が存在するのは知っているから、その辺を買えればと思う。ただ、桃はここ数十年の間にごく一部の地域で栽培されている超高級品だから難しいかもしれない。
メロンやスイカといった現代では果物扱いのものもあるけど、これらは全然甘みが無いので試す気にもならない。完全に野菜なのだ。
日本で食べてたそれらは品種改良により甘みを増したもので、原種は甘みの欠片も無いウリ科の野菜でしかない。
一度だけ食べたメロンの原種は、苦いキュウリといった味だった。あれが甘くなるなんて信じがたい話だったよ。
とにかく、栽培されている果物の木を買おう。種でもいいけど。
夏の頭に頼めば、夏の終わりまでには手に入るかな。手に入るといいな。
どうでもいい妄想だけど、分子干渉系の魔法が使えれば水と炭素でアルコールを作れるんだよね。
化学式がCH3CH2OHで、特殊な原子が混じっていない。
分子の選り分けぐらいならできるけど、分子間結合を弄る魔法は手持ちに無いんだ。できて分子間結合を崩壊させて超大規模破壊魔法にするぐらい。壊すのは簡単だけど、作るのは難しいんだよ。




