砂糖(始)
割とどうでもいい話。
楽しそうに何かをやっている人間がいると、それに釣られる人間が出て来るという事がある。
卓球をやっていると、それを見に来る奴が増えた。
煩悩などではなく、単純な興味本位というやつで見学に来るのだ。
ただ、プレイ人口は増えない。
何かあと一つが足りないようだ。お祭りとか、景品とか、共感や同調圧力とか。そんなものとは違うアプローチ。
何が足りないんだろね?
大事な発見があった。
砂糖が見つかった。
正確には砂糖大根、甜菜が見つかったのだ。
これまで俺達はカブを育てていた。
当たり前のように甘みを感じず、それでごく普通のカブだと思っていた。
しかし、最近収穫したカブは甘みがあった。
渋く、エグみがあり、苦い。そんな中にわずかな甘み。
恐らく野生種だから甘みが弱いだけだと思う。きっとこれは甜菜なのだろう。俺達が気が付かなかっただけで。
これは後日気が付いたことだが、今までのカブを甘く感じなかったのは育てるのに使った水の所為だ。
それまでの水やりは俺の用意したマジカル井戸から汲んだ、超純水に近い真水を使っていた。マジカル井戸の真水はカブの甘みを溶かしてしまい、甘みが無くなっていた。それがため池に確保した水を使うようになったことで変化が生じたのだ。
ため池の水は溶媒として飽和状態に近く、カブの中の甘みが溶け込まなかったのだ。
この甘みに気が付いたことで、俺達は砂糖作りに挑戦できるようになった。
といってもやる事は単純だ。
細かく切った甜菜を水に浸け、甘み成分を水に逃がす。煮込んでしまうと甘み成分以上に雑味が混じるので、時間がかかっても水出しが正解だ。ついでに不要な成分を沈殿させるために、僅かに消石灰を混ぜておく。
甜菜をつけ込んだ汁から、上澄みの甘みが溶け込んだ水を煮詰め、水分を完全に飛ばす。
出来た結晶は砂糖以外の物を多く含む雑味の強い固まりだ。茶色っぽいこの結晶にはまだ不要な成分があるので、遠心分離器の要領で更に砂糖成分を抽出する。
できた砂糖の搾りかす、それは家畜の餌にしかならないので、兎たちの食卓に回した。
他にもできる事があるかもしれないけど、俺が知っている事はそれぐらいだ。
できた砂糖を一舐めする。
甘みはそれなり。記憶の中にある白砂糖ほど甘いとは思わない。
しかもたくさんの甜菜を消費してほんの僅かな砂糖しか作れない。品種改良や砂糖が多くなる育て方など、やるべき課題が多い。
まだこの砂糖作りは趣味の領域でしかない。
いや、遊びよりも酷いかもしれない。
砂糖作りはまだまだ始まったばかりだ。




