無駄遣い?
女性陣には経産婦がいるし、お産の手伝いを経験した者も多い。出産にあわせて産婆や医者を用意する必要はない。
だから俺としては特に何もする気が無い。
が、他の連中はそうでもないようだ。避妊していたくせに、いざ子供が産まれると分かった途端に騒ぎ出した。
奴らが欲しがっているのは子供が産まれる事を祝う品と、子育てにあったら便利な道具類だ。
実に現金な物である。
「産着! 産着を!」
「はいはいー」
「王都で流行の玩具は何かないっすか」
「こんなのどうでしょうー?」
「「買った!!」」
「まいどー」
子供云々というのは前回の行商の時に教えていたが、ヨカワヤはちゃっかり赤ちゃん関連グッズを持ち込んでいた。
ここで売れなくても他の村で売ればいい。いつでもどこでも需要はある商品なのだ。特に秋口は出産ラッシュが続くため、今であれば在庫を抱える不安は無い。
――農民にとって冬は暇な日が多いため、子作りに励む者が多いのだ。結果、田舎では冬の手前に出産が重なる事が多い。ヨカワヤはそれを見越して赤ちゃん関連グッズを仕入れてきたのだった。
僅かばかりの給金。それを溜めこんでいた村民はにヨカワヤの手のひらの上で見事に転がされ、金を払う。
普段であれば何人かが協力して個人用の酒を買っているのだが、今日だけはそちらに見向きもしない。
……こいつらは、子供が何人も生まれると思っているのだろうか?
それに、今は妊娠が発覚したばかりだ。子供が産まれるのは数ヶ月後である。
「冬になったらヨカワヤさんが来れないっす!」
「そうだそうだ!」
「他の子もいつ妊娠するかわかんねーっす!」
「そうだそうだ!」
「事前準備が大事だって言ったのは大将っすよー!!」
「そうだそうだ!!」
もはや何も言うまい。
生ものではないが、雑貨だって時間が経てばそれだけで劣化する。俺としては買うタイミングは吟味するべきだと思うがね。
うん。
こいつらは幸せそうだし、ヨカワヤも嬉しそうだし。
何か言う必要もないか。




