世界で最初のケーキ②
その日。
葵はある試作を始めていた。
「また新しい菓子か?」
「はい」
レオンが覗き込む。
「今度はケーキです」
「ケーキ?」
「僕の世界では特別な日に食べることが多いお菓子ですね」
まずは卵を割る。
黄身と白身を分ける。
白身を泡立てる。
何度も何度も空気を含ませる。
やがて雪のように白くなった。
「それは何だ?」
「メレンゲです」
「……雲みたいだな」
思わず笑ってしまう。
確かにそう見えた。
そこへ黄身を混ぜ。
ラル粉を加える。
切るように優しく混ぜる。
「潰さないんだな」
「空気を残したいので」
ふわふわに焼き上げるためだ。
生地を型へ流し込む。
オーブンへ入れる。
しばらくすると。
甘い香りが広がった。
理央まで走ってくる。
「あおくん!」
「いい匂い?」
「うん!」
目をきらきらさせている。
◇◇◇
焼き上がった生地はふっくら膨らんでいた。
冷ましている間に別の準備をする。
ミルカ乳を泡立てたクリーム。
そしてルーナの実。
さらに甘味の強い黄金色の果実。
『ミエルの実』
最近見つけたお気に入りだった。
果肉を小さく切る。
クリームへ混ぜる。
香りだけで幸せになれそうだった。
「綺麗だな」
レオンが呟く。
「まだ完成じゃないですよ」
スポンジを切る。
クリームを塗る。
果実を並べる。
さらに重ねる。
表面にもクリーム。
最後に果実を飾る。
まるで花を飾るように。
一つ一つ丁寧に。
やがて。
真っ白なクリームと色鮮やかな果実で彩られた菓子が完成した。




