世界で最初のケーキ①
店が決まってからの毎日は慌ただしかった。
空き店舗の掃除。
厨房の整備。
必要な道具集め。
葵は朝から晩まで走り回っていた。
それでも不思議と疲れは感じない。
夢だった自分の店。
しかも理央と一緒に暮らせる場所。
嬉しくないはずがなかった。
◇◇◇
「あおくん!」
掃除をしていた葵のもとへ理央が駆け寄ってくる。
「どうしたの?」
「おともだちできた!」
「え?」
店の外を見ると、同じくらいの年頃の子供達がいた。
近所の子らしい。
理央はもう仲良くなっていた。
「りお、あそぼっていわれた!」
「よかったね」
「いってきていい?」
「うん。でも遠くへ行かないこと」
「はーい!」
元気な返事と共に飛び出していく。
その後ろ姿に葵は笑った。
転移してから理央はずっと不安だったはずだ。
それでも少しずつ笑顔を取り戻している。
そのことが何より嬉しい。
◇◇◇
「順調そうだな」
低い声が響く。
振り返るとレオンが立っていた。
「レオンさん」
騎士服ではなく私服姿だ。
それだけで印象が違う。
相変わらず目を引く男だった。
「視察ですか?」
「そういうことにしておこう」
どこか含みのある言い方だった。
最近、レオンは頻繁に店へ来る。
建物の確認だとか。
安全確認だとか。
色々理由はあるらしい。
だが騎士達は全員知っていた。
理由の大半がアオイであることを。




